選手の移籍問題

今回は選手の移籍にまつわる小話。

元清水エスパルスの岡崎慎司選手の移籍問題が大きくなっている。契約トラブルの模様。

清水のホームページに掲載された説明はこう(清水公式サイトから引用):

岡崎慎司選手に限らず全ての選手の移籍は、契約とFIFAの規則に従って行なわれる必要があります。シュツットガルトの岡崎慎司選手の移籍に関する対応については、2つの重要な点でFIFA 規則の違反があると考えております。
まず第一に、シュツットガルトは、FIFA の「選手の地位および移籍に関する規則」18-3項に従い、岡崎慎司選手との契約交渉を開始するに先立ってエスパルスに事前に通知することを全く行わずに岡崎慎司選手と契約交渉をしている点。
第二に、エスパルスと岡崎慎司選手との契約が2011年1月31日まで効力があるにもかかわらず、シュツットガルトは2011年1月31日を契約開始日として岡崎慎司選手と契約をしている。このような契約を行う場合、FIFA の「選手の地位および移籍に関する規則」18-5項に従い、エスパルスと岡崎慎司選手の契約を期間満了前に終了させるための違約金についてシュツットガルトとエスパルスが合意しなければ、選手の移籍は認められないという点。


英訳でも掲載(清水公式サイトから引用):

All transfers of players, including Shinji Okazaki, must be done in accordance with the players’ contracts and FIFA Regulations. In relation to the transfer of Shinji Okazaki, two material breaches of the FIFA Regulations have occurred as a result of Stuttgart’s actions. First, contrary to Article 18.3 of FIFA’s Regulations regarding the Status and Transfer of Players, Stuttgart neglected to inform S-Pulse before entering into negotiations with Shinji Okazaki.

Secondly, Stuttgart entered into the player contract with Shinji Okazaki effective from January 31, 2011, in spite of the fact that the player contract between S-Pulse and Shinji Okazaki was valid until January 31, 2011. In order to enter into a contract with a player while the player’s contract with his former club is still valid, pursuant to Article 18.5 of FIFA’s Regulations on the State and Transfer of Players, Stuttgart (as the new club) and S-Pulse (as the former club) must enter into an agreement regarding the payment of compensation for the early termination of the contract between Shinji Okazaki and S-Pulse. Stuttgart’s player contract with Shinji Okazaki is therefore against Article 18.5 of the FIFA Regulations and can not be permitted.

文中に「FIFAの規則」とでてきたので、そんな規則があるのかと調べてみた。FIFA公式サイトに英文で載っていた(FIFAはこういったことも定めているですねえ)。



Regulations on the Status and Transfer of Players
(PDFファイル)

FIFA公式の 公式ドキュメントのページ(http://www.fifa.com/aboutfifa/documentlibrary/index.html)に収録

該当の18条3項を引用:

3. A club intending to conclude a contract with a professional must inform the player’s current club in writing before entering into negotiations with him. A professional shall only be free to conclude a contract with another club if his contract with his present club has expired or is due to expire within six months. Any breach of this provision shall be subject to appropriate sanctions.

5項も引用:

5. If a professional enters into more than one contract covering the same period, the provisions set forth in Chapter IV shall apply.

大まかに訳すと

3項.プロ選手と契約を結ぼうとするクラブは、現在その選手が契約しているクラブに、交渉を行うことを、交渉に入る前に文書の形で必ず連絡しなくてはなりません。その選手と現在のクラブとの契約が終了している場合、あるいは、契約終了まで6ヶ月をきっている場合のみ、選手は別のクラブと契約を結ぶことができます。この規程に違反した場合は、相応の処罰を受けます。

5項.もしもプロ選手が複数のクラブと契約期間が重なる契約を結んだ場合、チャプター4(4章)で示した規程が適用されます。

チャプター4は“IV. MAINTENANCE OF CONTRACTUAL STABILITY BETWEEN PROFESSIONALS AND CLUBS”で、「プロ選手とクラブの間におけるちゃんとした契約の維持」とでも訳せばよいだろうか。レギュレーションの13条から18条が該当する。

長いので全部は読んでいない(規程はてにおはをしっかり読み取らなくてはいけないので、めんどくさい)。なので、清水の主張通り違約金が発生するのかは不明だが、3項の交渉時の連絡については、文書での連絡がなければ、清水の言うことに分がある。

かつてあったJリーグローカルの移籍制度はなくなり、現在のJリーグはFIFAの国際標準な移籍制度を採用している。選手の移籍期限が、1/31までなのも、ヨーロッパの冬の移籍市場が1/31まで開いているからというのも理由の一つだったかも。今回の移籍騒動でもこの日付の契約日でもめている。

契約等は代理人が間に入っているわけだから、契約のトラブルは代理人のミスともいえるし、ネット上の話では、ヨーロッパ市場で慣例となっているルールもからまってきているそうだから、どうなることやら。

最終的には、FIFAが裁定を出す模様。

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実はこちらが本題。「独り言」ではなく、「小話」に載せたのもこれが理由。

岡崎選手がらみでFIFAの移籍問題を調べていて、おもしろい資料を見つけた。それの紹介。社会学の卒業論文。

サッカーの移籍制度をまとめた高崎経済大の樋川朋也氏の卒業論文。ここ最近の移籍制度の移り変わりや、問題点などがよく整理されている。以前コンサドーレにいたダヴィ選手が契約でもめているといった話は話題になっていたが、かわいそうなことにカタールでかなりアンハッピーな状態のようだ。他にも、エメルソン選手やフッキ選手の話も出てくる。

契約金の額が多いだけに、プロ選手は華やかにも見えるし、一方で大変な目に遭うこともある。それを狙って、オレオレ詐欺のように悪徳ブローカーやら代理人が入り乱れていることも。

サッカー選手には、サッカーにだけ打ち込める環境に、いて欲しいと願うのみ。

「選手の移籍問題」への1件のフィードバック

  1. 【その後の経過報告】

    上記の公式発表の補足説明が発表されました。

    岡崎慎司選手のシュツットガルト移籍に関する経緯について(補足説明)(2011年2月17日

    http://www.s-pulse.co.jp/news/20110217-3108.html

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    FIFAはとりあえず、岡崎選手の新チームでの試合出場は認めました。ただし、2クラブ間のルール違反の問題判定は先送りされました。
    それについての清水のコメント。

    岡崎慎司選手のドイツサッカー協会への暫定登録が認められた件について(2011年2月18日)
    http://www.s-pulse.co.jp/news/20110218-3112.html

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