[第13節]in三ツ沢:横浜フリューゲルス戦

『横浜のニセ道産子さんの観戦記』

 フランスW杯開催のために中断していたJリーグがいよいよ再開します。4勝12敗という厳しい成績でブレイクに入っていたコンサドーレ札幌は、三ッ沢で横浜フリューゲルスとの対戦です。
 今期アウェイでは1勝5敗と大きく負け越してはいるものの、相手のフリエとは開幕前の練習試合(東戸塚)、ナビスコカップ(室蘭)、中断期間中の練習試合(室蘭・30分×3本)と3度対戦し、なんと3連勝を収めている相性のいい相手。日本代表の山口、楢崎やブラジル代表のサンパイオなどが出場していなかった試合もありますし、何より調整のための試合だったこともあります。それでも勝ちは勝ち。いいイメージで臨んでほしいものです。
 久々の試合で燃えているのはサポーターも同じで、遠く北海道からも早めの夏休みを取得したのか、数十人単位の熱心なサポーターが詰め掛けました。開門前にはフリエ側には及ばないものの、かなりの列ができ、関東地方におけるコンサドーレの人気が定着してきたことを物語っています。
 ところが丁度開門を合図としたように曇り空から雨が落ちはじめました。ゴール裏で旗や横断幕の準備を進めるうちに雨粒は大きく、雨量は加速度的に増えていきます。そして結局、試合終了までにこの激しい雨が止むことはありませんでした。
 そんなコンディションで行われた試合は、結果から先に書きます。またしてもPK負けです。
 「またしても」と書いたのは、今期これで札幌がPK戦までもつれた挙げ句の敗戦が3つを数えるからです。柏レイソル戦(3/28・柏)、ベルマーレ平塚戦(4/25・室蘭)、そして今回。全18チーム中ここまでPK戦3度というのは福岡と札幌だけ。しかし福岡は1つ勝っていますので全敗は札幌のみ。JFL時代の昨年も東京ガス(江戸川)で苦杯をなめ、2年前も東京ガス、山形に敗れています。つまり「コンサドーレ札幌」誕生以来、PK戦を制したことは1度もないのです。

 さてこの試合。コンサドーレはまた4バックに戻しました。しかもナビスコのガンバ戦で一度破綻しているはずのペレイラのボランチ起用。左サイドバックには体調不良の村田に代わって黄川田を起用。なので予想としては4バックながら、両サイドが果敢に攻め上がることで相手3トップの両翼(佐藤一、レディアコフ)の動きに足かせをかけ、ペレイラが機に応じて最終ラインまで下がって3バックへ変容するのかと考えていました。実際は両サイドは自重。このため試合を通じてサイド攻撃には物足りなさを憶えました。中盤は更に時岡と後藤。いわゆる「トリプルボランチ」システムだそうですが、「舵取り」や「ハンドル」を意味するのが「ボランチ」。1つのチームに2つも3つもハンドルがあるのはおかしいんじゃないかなと思います(苦笑)。事実上「サイドハーフ」ってことでいいじゃないですか(その割にはあまりサイドを有効に使っていなかったが…)。で、前の方はおなじみのウーゴとデリーとコータです。(あ、GKはディドです。失礼しました)
 バシバシ降りしきる雨の中、それでも立ち上がりは両チームとも攻める気が旺盛。相性の良さを証明するかのように先制点は札幌にもたらされました。押し込まれてCKを与えたピンチをしのいだ後、ウーゴが山口からボールをひったくって(笑・いや、ホントそんな感じ)、デリーにスルーパス。デリーはGK楢崎をかわして角度のないところから無人のゴールへ。これが前半11分のこと。日本代表2人をおちょくってコンサ1-0。
 しかしここからの戦い方が感心しません。順位が下のチームとはどうしてもゴールを割られたくないものですので、コンパクトだったラインが間延びしはじめ、以後前半終了まで支配率は圧倒的にフリエ。たまにボールをキープしてもサポートがないものだから(いつものこと)たちまち1本のパスミスで逆襲食らってさあ大変。これの繰り返し。相手はビハインドなんだから攻めてくるのは当たり前(しかもホームだし)。札幌に必殺のカウンターでもあるのなら話は別なれど、詰まるところウーゴからバルデスへドーン! の攻めしかできないチームがこんなことやっていては。
 とはいえコータはよく動きました。公式記録では前後半・そして延長を通じてバルデスよりも多い5本のシュートを企図(バルデスは3本)。が、延長前半だったかな? 楢崎と一対一になった局面は決めなきゃいかん。3月の練習試合ではちゃんとゲットしてるのですから。豪雨で足元が悪かったせいもあるかもしれないけれど、モノにしてほしかったですね。
 とにかく前半は憶えているだけでレディアコフ、山口、前田…と、3本もの決定的なシュートがあり、ディドやDFが必死に食い止めていたわけですが「はぁ…こりゃ後半が思いやられるワイ」という状態で終了。

 後半。勢いはますますフリエ。さっそく永井がミドル(これはバーの上)を見舞うと、6分には「地上戦」で挑まれ、なんとゴール前で古川がクリアミス。詰めてきた山口がこれを見逃してくれるはずもなく難なく同点ゴール。さらに18分。フットレが永井とゴール正面で堂々とワン・ツー決めて1-2。開幕の日本平での清水戦を思い出させるような「決壊」に、コンササポ席も失望のため息。それを再び力強い声援に変えてくれたのが太田の登場でした。後半20分。昨年10月2日(木)のJFL山形戦で負傷して以来の実戦です。待ってたぜ昨年の「陰のMVP」。正直に言ってまだスピードでは周囲について行けてません。しかし逆襲を食う場面で相手の攻撃を遅らせる絶妙なカバーリング、ワンサイドカットなどはさすが。ほんの数秒をロスさせるだけで攻撃の選択肢は見る見る減っていくものなのです。普段他チームの守備網にかかってやられていることを逆にやってくれているわけ。いいぞタカミツ!
…と、喜んでいる場合ではありません。気が付くと残り5分を切っています。もう時間がないぞ。
 この状況でゴール正面やや左20mほどの地点でコンサドーレはFKを得ます。蹴るのはもちろんウーゴ。ゴール裏で見ていた筆者は直感で「壁の上は通さない。壁の外側を通して逆サイドを狙う」と予想したのです。凡庸なキッカーならこう考えるでしょう。「ボールは雨で重くなっている。この重さを利用して壁を越えて急速に落ちるボールを蹴ろう」と。ところがウーゴはそこまで育ちの良いおぼっちゃまではありませんでした。それに協力したのがコータと黄川田だったと記憶していますけれど、どうにかフリエ選手が築く「壁」に割り込もうとしていたんですよね。GKの注意を壁側に引き付けると同時に、GKの視界を遮り、ボールの出所を見づらくしていたのではないかと思えます。(事実試合後GK楢崎は「相手選手が壁に入ったのでボールの位置が見づらかった」と話していたそうです。)
 とにかくボールは低く滑るように壁の外を通って右サイドネットを揺らしました。土壇場で2-2の同点です!

 その直後のド決定的な山口のシュートを古川がゴールライン寸前でクリア、更なる遠藤の至近距離からの一撃もディドがセーブ! 時折り雨足が激しくなって反対側エンドが見えなくなるくらいの惨状だった延長戦は、もうほとんど「肝試し」。いつVゴールを食らってもおかしくないほどの危機をしのいで120分終了の笛。

PK戦は札幌3人目田渕が楢崎に止められ、フリエは5人全員がゲットして試合終了。と、同時に雨がすっかり上がりました。
 冷静に試合を振り返ると90分でケリがついていてもおかしくない試合でした。そうならなかったのは、札幌にとってみれば1点を先取したあと、前がかりになってきた相手からボールを奪っても中途半端に選手が引いていたため攻めの手数が足りず(あるいは個人の技量が劣るため)追加点を挙げられなかったから。フリエにとってみればひっくり返した後もゴール前での冷静さを欠いて確実なフィニッシュができなかったから。バクチに等しいPKでの決着ということで、後味の悪い三ッ沢からの帰り道。スニーカーの中はぐしゃぐしゃ。関東地方同様、札幌の「梅雨明け」はまだ先になりそうです。

(以上記事:横浜のニセ道産子さん)