[第23節]in都田:本田技研浜松戦

『二上英樹の観戦記』

 後半戦上位四強対決に二連勝し、最後の相手本田技研にも勝ち、三立てとしたいところ。独走態勢に入りつつある札幌だが、ここは眼下の敵を倒して、シーズンの行方を決めてしまいたい。一方の、本田技研は先日残念ながら準会員を返上してプロ化を断念したものの、チームの勢いの方は絶好調で、前節は川崎Fを下している。この日は、アウェイ都田での試合ながら、道内にもテレビ中継があるというありがたい試合(アウェイの試合がテレビ中継されるのは15節福島戦に続いて今季2度目です)。というわけで、札幌の自宅でテレビ観戦となりました。

 札幌の先発は以下の通り。前節の東京ガス戦、三枚目のイエローを食らったペレイラは今節出場停止。かわりに、リベロのポジションに古川が、そして冨樫がセンターバックに先発復帰。そして、外国人枠が空いたことから、吉成が先発。この吉成にゲームメイクをさせ、マラドーナをFWにあげ、バルデスとツートップを組ませる新フォーメーション。形の方は3-5-2で、従来どおりだが、場合によっては、バルデス1トップの3-6-1になるのかも。

FW:マラドーナ、バルデス
MF:村田、吉成、太田、後藤、田渕
DF:冨樫、古川、渡辺
GK:森
 控えには、新村、鳥居塚、石塚、朝倉、赤池の五人。今節も控えにDFの姿は無し。
 本田技研には、昨年札幌に在籍した吉田裕幸が攻撃的MFの位置にいる。また、FWには、中休みに補強した注目のマルクスがいる。前節は、彼の活躍で川崎Fの息の根を止めただけに要注意。あと、本田のフォーメーションて、3-5-2なんですね。昨年は4-4-2で、今年も同じだと思っていたんですが。
 さて、試合の方が始まりました。本田のホーム都田なのに、画面から聞こえてくるのはコンサドーレコール。みんな頑張ってるな、とうれしくなる。序盤は五分五分の展開で進む。FWで登録されているマラドーナ。以外と下がり目です。結局、バルデス1トップの3-6-1の様なフォーメーション。結果的に、マラドーナ、吉成の2人のゲームメーカーがいるようなフォーメーション。どこからでも攻撃を組み立てられるすごいフォーメーションのような気がする。が、しかし、そう、マラドーナが下がって所為で、FWがバルデス1人しかいない。そのため、ゲームメーカーが2人いて、パスの起点はいつでも作れるけれど、前線にだす相手がいない。バルデスには、当然マークがついているわけで、しかもあまり動くタイプじゃないから、パスを出せない。吉成もマラドーナも、パッサータイプのゲームメイカーだから、パスを出す相手がいないと機能しない。両サイドのウイングッバックの2人が走り込むか、中盤の選手が走り込むかしないといけないのだが、うまくいってないようだ。
 テレビの小さな画面の中だけで、スタジアムで生で見ていないので、全体の動きがよくわからないのだが、フェルナンデス監督の考えは、前線にバルデス、マラドーナの2人の選手を配置して、2人だけでボールをゴール前に運ばそうという考えなのではないだろうか。でも、マラドーナが引き気味にいるため、うまくない。結果的に、バルデスまで、ボールをもらいに下がってくる。突破するタイプの選手、山橋や新村、鳥居塚のいずれかの選手が欲しいところだ。そうこうしているうちに、問題のシーンがやってくる。
 前半21分。ペナルティエリアから10mくらいの所から本田のFK。蹴るのは、バウテル。蹴ったボールは札幌選手の壁にあたって、高く跳ねるも森しっかりキャッチ。問題はこの後。森がフィードしようとして、ボールを右手に持って、これから蹴ろうとした瞬間(喫茶店のウエイターがお盆を右手に片手で持っているような状態)、森のすぐ後ろにいたマルクスが頭でチョンとつつき、ボールを落とした後、そのままゴールへ蹴りこんでしまう。森らは猛烈に抗議するも認められず、1点先制される。フェルナンデス監督は、キーパーチャージだと、激高している。でも、当然のごとく、判定は覆らない。
 この後、数分間はゲームが荒れ気味になる。だんだん、落ち着いてくるが、札幌の選手の憤りはおさまらないのか、何かプレーの一つ一つが荒い。1点とられて、点を取りに行かなくてはならなくなって、やっとこさマラドーナが前線に張るようになった。でも、何か変。局面局面ではなんとかなっているものの、チーム全体としての動きが悪い。パスがあまり繋がらず、縦へ縦へだけの動きになっており、最後は、バルデスに放り込むものの、崩してからのセンタリングでないので、バルデスの周りは本田の選手ばかり。さすがに、三人のDFに囲まれてたら、バルデスも何もできやしない。それならポスト役になろうも、周りに味方選手がいない。
 一方、本田の方は、結構いいリズムでボールが繋がっている。それでも、なんとかかわし、前半終了。

 さて、問題の失点シーンについて、少し考えてみよう。確かにキーパーの持っているボールを取るのはダメなんだけど、キーパーの体に触れずに奪うのはルール上認められているんですよね。通常は、キャッチした直後のボールはしっかり抱え込んでいたりするから、それにちょっかい出すようなことすると、それがゴールエリアの中であったり、足あげてたりしたら、即イエローカードです。また、キーパーはゴールエリア内では、かなり保護されますから、ちょっとでも触れた様に見えたら、即キーパーチャージを取ってくれます。でも、あの場合、いずれにも該当しません。つまりあの場合、ボールは持っていたけど体(体躯)から離れていたし、片手で、しかもマルクスの前に差し出してあったような状態でした。場所も、ペナルティエリアの中だけど、ゴールエリアの中ではなかったです。ルール上は、キーパーの体に触れずに奪った場合、プレーとしては正当ですから、森にも後ろにいるマルクスに気を配っていなかったという不注意な点があった事は否めません。テレビで見た時、あっ、とは思ったけれど、やられたと思いました。
 主審があれを認めるかどうかは半々くらいでしょう。キーパーの体に触れずに奪うのはルール上認められてはいますが、実際は概ねキーパー寄りに運用されていて、大抵はキーパーチャージを取ってくれます。が、場合によって厳密な審判は、取ってくれません。すべてはプレーの流れの中で判断されてしまいます。ほんとは、こんな事はあってはいけないんですが、運が良ければキーパーチャージを取ってくれるし、運が悪いと取らないという微妙なものだと思いますし、その程度のことです。従って、失点した瞬間、”う~ん、キーパーチャージを取ってくれないか、う~ん、仕方がないか”、という気分です。本田のホームの都田なのでといったことが、少しはあったんじゃ無いかと思いますが(厚別で1万人以上が一斉にブーイングの声をあの瞬間にあげたら、主審は勢いでファウルの笛を吹いてくれたかも知れません)、サッカーの場合、判定がでてしまったら、それが覆ることは無いので、しかたないでしょう。
 中継のHTBのアナウンサーの方は、ひたすら卑怯なプレーだといってましたが、それはちょっと違うんじゃないかと思います(応援実況ということでコンサ寄りに実況しなければいけなかったんでしょうが)。むしろ、今のコンサドーレの選手が、見習うべきプレーなんじゃないかと思います。本田の選手は、そこまで、勝ちに執着しているということです。はなから、きれいに決めようなんて考えず、コンサをなんとか引きずり下ろしてやろう、という気持ちがあって、それが選手の気持ちとして、コンサドーレの選手の気持ちを上回っていたように思います。
 コンサドーレは、独走状態になりつつあることで、チームもサポーターも、なんか断トツに強いんだと思い込んでいるようなところがあると思います。プレーが受けの形になって、きれいにきれいに決めようとしているんじゃないでしょうか。その所為で、プレーにひたむきさや、泥臭さが無くなっているような気がします。確かに強敵にあたるときは、一生懸命なのですが(当時は頂上決戦だった川崎F戦や、六連敗中の東京ガス戦など)、格下相手だったりすると、ちょっと気を抜くところがあったりするのが目につきます。本田を格下だともは、決して思ってないでしょうが、日本-ブラジルの親善試合の後、ドゥンガがいった「日本はきれいに決めようしすぎている。サッカーにずるさが足りない。これでは、世界レベルになれない。」という、台詞を思い出します。あのプレーを決めたのが、ブラジルから来たばかりのマルクスというのが、これを象徴している様に思えたのは、気のせいでしょうか。ナビスコカップのときの、ひたむきさを、JFLシーズン30試合全部に求めるのは酷でしょうか。

 さて、そうこうしているうちに後半が開始です。とりあえず選手の交代はナシ。でも、開始しばらくは、本田ペースで試合が続きます。後半10分過ぎに、いよいよ選手交代。いまいち機能していなかった吉成に代えて石塚を、DFの冨樫に代えてFWの新村を投入して、マラドーナを中盤に戻し、4-4-2のフォーメーション。これで、ペースを取り戻したか、後半21分、右サイドの田渕から最前線のバルデスの頭へボールが放り込まれる。バルデスこのボールを、すぐ右を走り込んでくるマラドーナに、高い打点から矢のようなパス。マラドーナ、これをゴール左ポストをかすめるように決めて、同点。絵に書いたような、バルデスのポストプレーでした。
 この後すぐ、マラドーナ足を痛めたのか、交代。代わりにはいったのは、鳥居塚でなく、朝倉。前節東京ガス戦でも見せた、太田とのダブルボランチシステムを引きます。この後しばらくは、同点においついた札幌ペースで試合がすすむも、決められず。そうこうしている内に、後半30分。左45度の位置から、村主にキーパーの頭上をこえるきれいなシュートを決められてしまいます。45度の位置から決めるときに、ここしかないという、キーパーとゴールバーの間のスペースに、きれいに落ちるようなシュートが決まりました。くやしいけど、ファインゴールでしたね。あの位置に蹴り込まれては、森は如何ともしようがありません。
 残り15分ですが、コンサには、既に反撃の力は残っていませんでした。交代の三人は使いきっていましたし、いつもはこの様なとき、攻撃参加するペレイラがいません。今日のDF、守備面ではよくやったと思います。ペレイラのいないなか、本田の攻撃をしっかり防いだと思います。2点の失点はペレイラがいてもしたでしょう。違ったのは、攻撃面。ペレイラは、リベロのポジションに入っており、そのボールキープ力でもって、攻撃参加するのですが、今日リベロのポジションに入った古川はそこまではできませんでした。今日の古川、ペレイラの代わりにリベロの位置に入りましたが、リベロというよりは、スイーパーの様な働きでした。従って、4-4-2になった後も、センターバックの位置のDFが攻撃参加することはなく、いつもの迫力ある攻撃的フォーメーションへチェンジとはいかなかったようです。
 中盤を作ったのは石塚ですが、パスはマラドーナばりにバルデスに繋がらず(コンビーネーション不足?)。また、前半の失点後、結構個人プレーに走ったつけが来たか、みんな足が重い。結局、中盤から前線のバルデスに放り込むだけ。マークにはぴったりサンドロがついているので、仕事をさせてもらえず(余談ですが、サンドロも坊主なので、そっくりの2人が並んでいるシーンは何とも言えないものがあります)。そのまま、時間だけが過ぎていき、タイムアップ。1-2で負けてしまいました。コンサドーレのシュート数も、今シーズン初めて相手チームより少なかったそうで、今日は完敗です。

 今日の負けは、アウェイの試合だけに仕方がないところもあるでしょう。これで上位チームとの対戦は全て終えました。結局、後半戦の上位四強対決、2勝1敗で勝ち越せました。アウェイの川崎Fで勝ちを納めたのは大きかったです。まずまずといったところでしょうが、ホッとはできません。というのは、上位四強にぴったりついてきている二番手グループ、甲府と山形を含めると、現在の所、甲府に負けていますから2勝2敗のタイになってしまうからです。このあと、アウェイで行われる山形戦に負けることになれば、上位6強対決は、2勝3敗で負け越しです。これでは、後半戦上位対決を勝ち越せたとはいえないでしょう。
 山形には、昨年アウェイで苦杯をなめています。対戦チームには相性というのがあり、結構引きずるもんなんですよね。今後の山場は、25節の山形戦にあると踏んでいます。ホームの試合はサポーターの後押しも含めて必ず取ると計算して、計算外の事が起こるアウェイの試合では、どんでん返しが起きるとすればこの山形戦でしょう。負ければ、2位以下のチームに勢いがでるでしょうしその後に引きずるかも知れません。でも、ここで勝ちを治めれば、ほぼ決まりでしょう。もちろん、その前に次節鳥栖戦で負けてしまっては何にもなりません。連敗は何としても避けなくてはなりません。

(以上記事:二上英樹)

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