「横浜のニセ道産子」のホーム日記

「横浜のニセ道産子」のホーム日記 By 横浜の渡辺さん

今年から関東のアウェイゲームの観戦記を書かせていただいております「横浜のニセ道産子」こと渡辺でございます。生まれも育ちも横浜なのに頻繁に北海道を訪れ、本物の道産子の友人いわく「僕より札幌の地理に詳しい」そうなので、「ニセ道産子」というわけです。今回は5月25日(日)の川崎フロンターレとの序盤戦の天王山をホーム・厚別で観戦すべくやってまいりました。ホームの観戦は初体験。試合の模様は二上さんの観戦記をご覧いただくとして、アウェイ担当のホーム「遠征」日記をしたためたいと存じます。

5月24日(土)

JAS103便は定刻より15分ほど遅れて9時30分、新千歳空港に到着。ここからの足は友人のクルマ。空港の近くに在住のもう10年来のつきあいがある夫婦です。2人とも本物の道産子でもちろんコンサドーレのファン。当然のようにクルマは栗山へと向かいます。千歳から約40分ほど。思ったほど遠くはないですね。
練習場の「ふじスポーツ広場」が近づくと、コンサ・カラーの赤と黒に染められた交通安全の旗が道路両脇にズラリ。練習場への標識も親切で、スンナリと到着…したら、な、なんだ、このクルマの数と人の数は! ファンと報道陣合わせて100人以上はいたのではないでしょうか。やや風が強く肌寒い中、クラブハウス前の丘から遠くの選手たちを見守っています。割合はやはり女性が多め。僕のようないいトシした男衆も数人いましたがね。
試合前日ということもあり全体に軽めの調整のようでした。大一番を控えたという緊張感はなく、ボールと芝の感触を確かめていたという印象。声もよく出ていたようです。むしろイレこんでいたのは我々サポーター、そして報道陣の方だったようです。練習から上がってくる選手1人1人をつかまえてマイクやカメラを向けコメントを取っていました。
練習の様子の詳細は安田優子さんのHPの「練習場日記」をご参照ください。彼女とはここで初めて会ったのですが、僕と言葉を交わしながらも双眼鏡を目から離さず、選手の動きを追い続けていました(視線の先はやっぱり村田か?)。 安田さんの他にもコンサ応援のHP「Supporter‘s Room」の主宰者の“しちろう”さんや、そこで名前だけ知り合っていた方々数人ともお目にかかれました。みなさん一様に「こんなに見学者が多いのは初めて」とおっしゃっておりました。それだけ明日に向けて期待が大きいのでしょう。
ここでの最大の収穫はキャプテン後藤の長男の拓馬クン(5歳:gene vol.1参照)。自分の頭より大きなボールをドリブル、パス、そしてトラップ。カエルの子はカエル。才能の原石を見た思いでした(ペレイラ・ジュニアもかなり上手いそうですね)。
栗山からの道中で昼食を摂り、「ライラックまつり」でにぎわう大通の「コンサドーレショップ」へ。ここを訪れるのは昨年11月に次いで2回目。オフシーズンだった前回は他にお客さんもいなかったのですが、きょうは賑わっています。おりしもモニターTVはJの名古屋-川崎。レジ背後では先週ナマ観戦した仙台戦の模様が(そう、宮城ではTV中継あったのですよね。HTB、ネットしてほしかったよね)。
ドーレくんの赤トレーナー、タオル、Mフラッグ、帽子、ステッカー…手上がり次第にレジに運び、晴れてファンクラブ会員証が初めての出番で割引購入。だって…横浜には丸井今井はないから…(丸井ならある)。
外へ出てみると、あれ、ドーレくんが大通公園を歩いている。道ゆく人々に愛敬を振りまいてるぞ。つまりコレ、「明日、試合があるからみんな競技場へ見に来てね」という言ってみれば「営業活動」。市内小学校の運動会と多く重なったにもかかわらず、一応ホーム・レコードの1万 531人。成果はあったのではないでしょうか。 その後は札幌西インター近くまで足を伸ばして石屋製菓の工場「チョコレート・ファクトリー」へ。コンサショップや新千歳空港の売店でも手に入るというのに、わざわざ本陣まで出向いて話題の「コンサクッキー」を購入。もちろん工場内も見学。階段の踊り場など至るところにコンサドーレのポスターが貼ってありまして、事情を知らない観光客らが「これは何?」と立ち止まっていました。そうそう。ここの「あんとるぽー館」2階の見学コース受付カウンターではコンサドーレの厚別での試合のチケットを取り扱っています。この時点でまだ翌日のSS指定席が残っていたようです! 他では売り切れと聞いていたのに! う~ん、穴場かもしれない。
夜は真駒内や平岸の友人も交えてススキノ…ではなく、真駒内で宴会。このあたりも観光客らしくなくていいっしょ?
さあ、明日はいよいよ待ちに待ったホーム初体験。いいゲームで快勝を期待してまっせ!

5月25日(日)

ここ数日の睡眠不足気味に昨夜の酒が効いたのか、ぐっすりと眠れました。もうさんざん札幌を訪れているため今さら午前のわずかな時間を惜しんで「観光」する気もなく、チェック・アウトぎりぎりまで部屋でTVを見て、午前11時。仲間と待ち合わせの大通へ。早めの昼食をとって、いざ厚別へ。
事前に聞かされていたのは厚別への交通の便の悪さ。う~ん。確かに大谷地から歩くにしても距離もアップダウンもありますし、多少キツいでしょうね。今回は4人でしたからタクシーで行ってしまいました。
ついにやってきた厚別競技場。ああ…「ホーム」の匂いだ。視界の中には「これでもか」とばかりに赤と黒、コンサドーレのロゴ、そしてドーレくん。通路をゆく人もほとんどすべてがコンサ色。一丁大きな声で「コンサドーレ!」と叫びたい衝動にかられちまいましたが、大事な試合の前におまわりさんの世話にはなりたくないので自粛(笑)。テント張りの売店をひやかしてスタンドへ。
厚別競技場の印象についてですが、率直に言って北日本最大の都市が有する競技場としてはいささか貧弱という印象は否めません。しかし厚別に限らず北海道のスポーツ施設は概ね本州の地方都市のそれに比べて整備が遅れているようです。僕は円山球場へも数回行っていますが、あそこもいまイチですね。スコアボードが新しくなったりしましたが、外野の芝生席はデコボコだらけだし。動物園がそばということで照明灯も付けられないと聞いています。それでも旭川のスタルヒン、函館のオーシャンと、野球場に関しては多少は新しい施設ができつつあるようです。他競技ではやはり何度も改修(現在も)されている大倉山のように、毎年国際大会が開かれるような施設でもない限り予算が付きにくいのでしょうか。真駒内のオープンスタジアムも観客席はかなり老朽化が進んでいるようでし…。(例外:苫小牧の白鳥アリーナ。あそこは見事だ!)欧米では、スタジアムとはそこを本拠地にするチームとともに街の誇り、自慢でもあるのです。ジュゼッペ・メアッツァ(ミラノ)、カンプ・ノウ(バルセロナ)、アレナ(アムステルダム)…。たとえ試合日ではなくとも足を運んでみたくなるような競技場が、街の象徴として建っていたりするのです。単に競技場という用途を越えて、スタジアムが果たす役割は重要なものがあります。1日も早い札幌ドームの完成が待たれます(まだ基本設計中でしょ?)。
試合前はゴール裏へ挨拶に。ネット仲間とご対面。ハンドルネームや文章の調子などからイメージしていた人物像とほぼ近かった人、かなり違った人。それぞれでしたね。ページマスター二上さんともここでお目にかかれました。「だいたい思っていた通りの方でしたよ、二上さん!」(私信で恐縮です)
スタメン発表! 応援コール開始! …はて。ほとんど芝生が見えないくらいの人数がいるのにゴール裏のはじけ方はちょっと物足りない。僕自身、ふだん少人数のアウェイで「3人分の声を出してやるんだ!」と気張っているせいでしょうか。いえいえ。いつぞや「コンマガ」で読んだ通り、札幌の人たちってちょっと恥ずかしがりやで、気持ちがノッてくるまでに多少時間がかかるのかもしれませんね。まだ選手の姿も見えないのに声を出すのはちょっと…という感じ。試合が始まればこんなモンじゃないでしょう。
本来の席はA列の125番。つまりやや川崎寄りの最前列。でも久々に「ヨコ位置」からフォーメーションやパスコースなどをじっくり見てみたいと思い、連れを残して一人最上段に上りました。早めに上がってしまって失敗。コンサドールズをもっと間近で見たかった。
選手入場。初めてナマで見るホーム用の赤と黒の縦縞ユニフォーム。大人しかったスタンドも徐々に温度が上がってきます。

厚い雲の下、キックオフ。一瞬の隙を衝かれた失点で0-2で折り返します。ウーゴのフリーキックが後半早々に決まり望みをつないだものの、以後ゴールは遠く、逆に1点を奪われ1-3。残り2分。僕も「万事休す」とつぶやいてしまったことを白状しなければなりません。しかしピッチの選手があきらめてなかったことはすぐにわかりました。誰かの「あっ、入った」の声でボールを追うと、川崎ゴールへ向かって転々。そう、バルデスが蹴った瞬間は見ていなかったのです。これでコンサドーレの生命機能は蘇生。ディドがスローインするわゴール前へ上がるわ。そしてバルデスの同点ヘッド。アンビリーバブルとしか言いようがありません。
延長突入までのブレイク。スタンドが一体になっての「コーンサドーレ!」の大コール。これこれ。これを味わいたくて僕は飛んできたんです。
延長はもう押せ押せ。この頃になると本来の最前列で見ていた僕は、後半7分、Pエリア右サイドで粘りに粘った後藤の姿にVゴールを予感。果たして後藤が倒れながらもバルデスに送ったボールは、イレブンと1万を越えるサポーター(そして競技場に来られなかった数多のファン)の思いを込め、川崎ゴールへと吸い込まれていきました。
そのとき、札幌中の歓喜と幸福は厚別一個所にかき集められていたようでした。

試合後は「コンサ寄り」の方々にくっついて大谷地駅近くの「牛や」へ。あんな試合の後ですから盛り上がらないわけがない。始めのうちは皆おとなしく席について飲んでいたものの、やがて店の前を通る試合帰りの同士が誰彼かまわず合流。店内に入りきらなくなった連中は外に出てアスファルトに腰を下ろしジョッキを交わします。日が傾きTV各局がニュースでコンサドーレの厚別不敗神話を伝えはじめると、小さなブラウン管を食い入るように見つめ、何度も繰り返し放送される感激のゴールの瞬間には天井を突き抜けんばかりの嬌声を上げます。ビールも回ってきましたし、中には「コンサドールズ」の真似をして踊り出す大のお兄さんたちまで登場。歩道の上で手拍子に大合唱。道路を隔てた反対側の美容室のお姉さんたちも「何事か?」といぶかしげにこっちを見ています(…けど、構うもんか!)。すっかりネジがぶっ飛んでしまった陽気な愛すべきお馬鹿さんたちは、とうとうストリップまがいまでエスカレート。比較的「傍観者」っぽく飲んでいた二上さんも僕も、ただただ笑うしかない。
ああ、しかし悲しいかな。ニセ道産子の僕には最終便の時刻が迫っています。なごり惜しいところですがこのへんで…と、お別れのご挨拶をすると、予期せぬ「ワタナベ・コール」。身にあまる光栄でございます。今後も皆さんが足を運べないアウェイで頑張って声援を送らせていただきます。逆転劇とビールにすっかり酔いしれて大谷地への緩やかな坂を下り、地下鉄を待つホームで何度も熱いものが込み上げてきまして…抑えるのに苦労いたしました。
自宅到着は午後11時半を回った頃。お世話になったみなさんにメールを出し床につくと、やっぱり我慢できず、大泣きモードに入ってしまいました。

本当に行ってよかった厚別。たまたまアウェイの数試合がちょっと物足りないものに終わっていただけに、コンサ本来の姿がここで見られたということ。この素晴らしいチームを支える素晴らしい皆様にお目にかかれたこと。そして、恐らく選手やその場にいたサポーターの皆さんの今後の人生観に影響を与えるのではと思われるほどの試合…。
なにせヒコーキにしても北斗星にしても数万円を投資しなければ辿り着けない隔たり。おいそれと行ける場所ではありません(そのわりにはまた7月に単なる観光客として行きますが…)。それだけのお金と時間を使った価値は充分すぎるくらいあったと思います。
末筆ですが、地元の皆さんのご健勝とコンサドーレの健闘を心から祈り、このとりとめのない「日記」をしめくくらせていただきます。

(以上記事:横浜の渡辺さん)