J2寸評 第6節(代替):第二幕はドロー

 有珠山噴火の影響で延期になっていたJ2第6節の札幌-浦和戦が、会場も同じ室蘭で開催された。前売りチケットが完売し、スタジアムは超満員。残念ながら1998年に中田選手人気で達成された平塚戦の観客数にわずかに及ばなかったが、室蘭入江二番目の動員数を記録した。行く先々のスタジアムの動員記録を塗り替え、まさに全国を飛び回る経済起爆剤の浦和レッズ。J1に比べ地方都市をホームタウンにするクラブが多いJ2では、政府の経済振興策より効率がいい。もっとも警備員の雇用需要も各地で喚起してくれてもいるのだが。
 冗談はさておいて、この日は本来J2は休みの週なので、他の試合はない。そのため、首位対決となった試合はJ2の耳目を集めることになった。今季二度目の対戦となったこの日の試合、前回の対戦では首位浦和を追っかける立場でチャレンジャーとして挑んだ札幌。二度目の対戦は順位が入れ替わり、立場が入れ替わった。J2はすでに折り返し点を過ぎ、首位に立った札幌は、勝ち点で7離れている二位の浦和をホームでしっかりたたいて、引導を渡してやりたいところ。一方、ここしばらく勝ったり負けたりの繰り返しで調子が落ち気味の浦和にしてみれば、首位の札幌をたたいて駒場での借りを返すと共に再び好調時の調子を取り戻すきっかけにしたいところだ。
 両チーム試合前の思惑が交錯するピッチの上のみならず、この日の試合の意味を知るサポーターで埋まったスタンドも熱気満々。いつもに比べて数の多い相手チームのサポーター。スタジアムはキックオフの笛を前に最高の緊張感に包まれた。
 試合が始まって主導権を先に握ったのは札幌。前回の駒場では圧倒的に押し込まれ、ひたすら守ってカウンター戦術だったが、この日は小野選手の復帰した浦和相手に中盤での争いでも負けず、相手陣内に押し込んだ。そんな中、前半11分、エメルソン選手の才能と個人技にひらめきがプラスされたすばらしいゴールで先制点が札幌にはいる。その後も押し気味に試合をすすめ、惜しい場面を演出するが、追加点を奪うに至らず。そのまま前半が終了する。エメルソン選手のすばらしいゴールを見れただけで、この日のチケット代の元がとれたはずだったが、内容ではなく時間で料金が決まるJリーグ。前半だけで十分と思った多くのコンササポの気持ちとは裏腹に、当然払ったチケット代の見返りとして残りの45分の試合も行われた。
 そして後半に入って試合の様相が一変する。後半から投入されたクビッツァ選手をターゲットマンにしてボールを放り込む浦和に試合の主導権が移り、コンサ陣内での試合が続くようになった。そして、後半9分に見事なボレーシュートを決められ、試合を振り出しに戻された。コンサも黄川田選手を投入して状況の打破をはかるが、試合は双方譲らず延長戦へ突入した。札幌は延長に入ってから更に山瀬、高木の両選手を投入するが浦和優勢はかわらず、苦しい戦いとなった。今年のコンサドーレは劣勢になってからがしぶとい。120分耐え抜き、結局引き分けに持ち込んだ。
 試合前、札幌-浦和-大分の勝ち点差が7と7。これが7と8となったわけだが、札幌、浦和の消化試合数が増えただけで事態は試合前とそんなに変わらず、この日の試合がJ2の上位争いの情勢を決するというところまでは行かなかった。それでもこの3チームの中で一番痛かったのは浦和だろう。札幌としては首位に立っているわけで、このままシーズンが終わってくれればいい。2位チームとの差はほとんど変わらず消化試合数が増えただけという結果は悪いものではない。大分から見れば勝ち点差がわずかに増えたものの逆転に必要な試合数は変わらず、自分の試合がないときに上位チームの消化試合数だけが増えてくれただけ。一方、必勝を期した浦和にしてみれば、何も変わらず消化試合数が増えただけ。勝ち点3を得るチャンスがあったが引き分けに終わってしまったというところ。
 個人的な浦和のイメージであるが、選手層や選手個々のレベルを見れば、浦和がJ2で一番強いという考えは今も変わらない。ただ、よく言われることだが、良い選手が一杯いてもそれが必ずしも勝ちに繋がるとは限らないのも事実。良い選手が25人いてもピッチで戦えるのは11人。ということは、11人しか良い選手を持っていなくても充分ということになる。もちろん、長いシーズン怪我もあれば、出場停止やのっぴきならない理由で試合にでられないこともあるから、選手層が厚いということは大事だ。でも、その厚さを生かすためには、チームの目標に向かって全選手一致団結してなくてはならない。全選手が自分の役割と仕事を理解し、目標に向かって一致団結していることが大事だ。良い選手を多く抱えるチームではよく見られることだが、多いが故に先発メンバーが決まらず、ファーメーションが決まらず、そして一貫した戦術を確立できない。そんなチームに限って当然周りの期待も大きいから、結果がでないとすぐに猫の目で選手が替わるし、替えざるを得ない。コンサドーレが札幌に誕生した初年度の96年JFL、多くのJリーガーを引っ張ってきたため、社員選手と会わせて40人くらいもいたことがあった。この年コンサドーレはいまいち調子に乗れず、結局シーズン4位で終わるのだが、この時他チームの監督から、出場選手が猫の目で変わる札幌の様子を見て『札幌は良い選手が多すぎるんだよ。だから起用する選手を決められないんだ。うちなんか選手層が薄いから、逆に使える選手が限られているからいつも一緒だよ。』といっていたのが思い出される。ちなみにこのコメントを試合後の記者会見で、コメントしたのは現東京FCの大熊監督だ(当時は東京ガスの監督)。今の浦和がかならずしもそうだとは思わないが、“迷走”していることだけは確かなようだ。当然、コンサを応援しているから‘浦和何するものぞ’と思うし、このまま調子が悪いままでいてくれた方がいいが、端から見ているといろんなことに独り相撲で悩んでいるようにしか見えないし、‘浦和なにやってんだ?’という疑問も浮かぶ。お金がかかっているチームでもあるし、もったいない話だ。
 その浦和は、最近の試合で大分・札幌戦と勝ちに来たが、引き分けている。はたして調子は戻りつつあるのか。この引き分けをどう評価するかは難しいところだ。次節の浦和は最下位甲府が相手だけに戦いぶりが注目される。そして、その次は、再び、コンサと厚別で相まみえる。
 さて、コンサドーレは次節、アウェイで仙台と対戦する。この日試合の無かった仙台は、ありがたいことに準備万端で札幌を迎えてくれる。しかもご丁寧なことに仙台はただ今絶好調。第2クールの成績だけなら大分や大宮より上だ。第3クールの札幌は休みの節が最後に来るため、連戦が続く、しかも6節分の代替試合をこの日消化したため、休みなしで11連戦(第3クールだけで)。7月8月と疲労がたまるシーズンなだけに、第3クールの課題は如何に疲れをためずに乗りきるか。涼しくなるまで厳しい試合が続く。