[第5節]in厚別:清水エスパルス戦

『二上英樹の観戦記』

今日から上位陣との対戦がいよいよ始まる札幌。その初戦は、これまで三連敗している清水エスパルス。天皇杯、Jリーグ、ナビスコとことごとくやられてきた。でもこれらの試合は全て日本平、厚別で行われる今日こそ雪辱を期して、これまでの分を熨斗付けて返してやるぞ、という気持ちでスタジアムに向かった。
この日の札幌は、雨。前日からの雨がふりつづき、試合開始の時間になってもやむことはなかった。ここまで、平均一万人と、いまいちのびない観客動員数。この雨で、今日は6~8千人くらいか、との予想に反して、結構入った。結局大雨だったにも関わらず、1万人強の観客数を記録した。また、アウェイ側ゴール裏には、はるばる清水からやってきた、黄色いポンチョに身をかためた数百人のエスパルスサポーターが。アウェイチームの応援団としては、これまでで一番多い、応援団だった。
試合前のアトラクションでは、コンサドールズのユニフォームがリニューアルした。せっかくのユニフォームの初お目見えの日だったのに、雨とはついていない。また、この日、今冬オーディションで選ばれていたメンバー二人が加わり、コンサドールズは、13人になった。コンサゴール裏は、ドールズのダンスに合わせて手拍子をしていた。

札幌の先発は以下の通り。前節とまったく一緒。DFは、村田、梶野、大野、田渕の四人。中盤は、太田、後藤、マラドーナ、バウテルの四人。オフェンス陣は、深川、バルデスのツートップ。控えは、加藤、木山、時岡、村主、吉原の五人。

  • FW:バルデス、深川
  • MF:太田、後藤、マラドーナ、バウテル
  • DF:村田、梶野、大野、田渕
  • GK:ディド

一方、清水の方には、沢登、市川、伊東、斉藤など代表&元代表組みがずらり。開幕戦で痛い目に会ったアレックスは、控えにも入っていなかった(ラッキー!!)。
試合の方は、いちだんと強くなった雨の中、予定時間の2時を5分ほど過ぎてはじまった。ここんとこの、コンサドーレの戦い方は、しっかり守って、カウンター。相手が強豪の清水とあっては、なおさら、その様な試合展開になるものと予想されたが、結構中盤が頑張って、良い試合を展開している。記録の上では、前半コンサドーレのシュート数2に対し、清水は10本くらい。清水の圧倒的な攻勢のようにも思えるが、見た目には、それ程でもなかった。でも、ディドの頑張りが目に付く試合展開ではあったが。
今日の清水、FWはオリバとファビーニョのツートップ。二列目に澤登や伊東、サントスが入ってゲームを組み立てる。一応、清水は3-5-2のフォーメーションだが、ポジションチェンジが激しい。コンサにとっては、嫌なタイプだ。対するコンサドーレの攻撃陣は、深川、バルテス、マラドーナの三人でカウンターをしかける。その後ろに後藤、バウテル、太田の三人。DFは、残り4人でラインディフェンス。若きマンマーカー大野は、この日、オリバとファビーニョどちらにつくということはなかったようだ。
6:4で清水がボールを支配する展開で、ゲームは淡々と進んだ。試合が動いたのは、雨足が弱まった、前半30分。マイボールにしても、シュートまでは持っていけなかったコンサドーレが、ボールを清水ゴール前に放り込む。バルデスが、後ろ向きに落としたボールに、元清水の太田が反応。ペナルティエリアの端、ゴール正面から放たれたミドルシュートは、真っ直ぐ清水ゴールにつきささった。前半わずか二本しかなかったシュートのうち、一本で1点先制。太田は、古巣へのうれしい恩返しの一発。1点先制のあと、しばらく元気になったコンサドーレであったが、次第に清水ペースへ。それでも何とかしのいで、前半終了。

元々守備には定評のある清水。後半はメンバーチェンジで攻撃的に来るに違いない、と思いつつ、ハーフタイムをすごした。後半が始まる頃には、あれほど激しかった雨は止んでいた。予想に反して、清水のメンバーチェンジは無し。試合は清水ペースで淡々と進む。先に動いたのは、コンサベンチ。ここまで良い働きをしていたボランチの太田が怪我で交代。太田交代のときは、足を引きずっていてかなり痛そう。そのままベンチによらず、ロッカールームへ直行した。代わりにボランチの位置に時岡が入った。古巣への意地もあり、またこの日先制点を決めてのっていた太田の退場はコンサにとっては痛かった。
これを見て、時着たりと思ったかどうかは知らないが、清水ベンチも動く。左に入っていた市川に代わって、足のある和田を。中盤の澤登に代わって、FWの長谷川を同時に投入。長谷川はそのまま、トップへ。FWのオリバが少し下がり目に入ったが、ある意味で、スリートップになったとも言える。さらにDFラインが変化。スリーバックが、ツーバックに。最終ラインは、斉藤と戸田の二人。その前に森岡がボランチ代わりに入り、両ウイングバックは、上がりめの二列目へ。要するに、完全な攻撃型チームへシフト。開幕戦は、このフォーメーションチェンジにやられたコンサだけに、さあ、来た来た、こっから試合終了までの30分が今日の勝負の正念場、と心のなかでつぶやいた。
とりわけ、長谷川とアレックスはコンサドーレの天敵と言えるぐらい嫌な選手。長谷川は、一昨年の天皇杯、途中交代ででてきてヘッドでやられた。アレックスは、Jリーグ開幕戦で、途中交代ででてきてかき回され、逆転負けを喫する原因になった選手。この日、アレックスは、札幌へ来ていなかったが、長谷川はサブに。その長谷川がでてきた。昨年のナビスコで柳沢が途中交代ででてきた時のような嫌な感じがした。

完全な前がかり状態となった清水。コンサゴールに猛攻をしかける。前線にいるバルデスと深川には、二人のDFがついているだけだから、カウンターを仕掛ければ、チャンスになるのだが、ボールが二人へ繋がらない。あげくの果ては、バルデスも戻って守備をする始末。こうなっては、清水の猛攻になすがまま。それでも1点リードしているから、コンサドーレの守備陣も何とか集中力を切らさず、頑張る。それにしても、攻撃されているシーンを見て、チーム力の違いがわかるのも怖いものである。というのは、これまで、厚別で行われた広島や京都の猛攻も見てきた。はらはらはしたが、放り込むボールやシュートが結構雑で、枠に飛ぶボールが少なかったから、ラッキーパンチがない限り大丈夫、という感じで見ていられた。ところが清水の場合、ボールがかなり正確に飛んでくる。センタリングは正確に味方に合わせてくるし、シュートはきっちり枠に飛んでくる。これが上位と下位の差か、と痛感した試合だった。
中盤をしっかり作れないと判断したのか、後半30分、足のある吉原を深川に代わって、前線に投入。これで、マイボール→一気にDFの裏へ放り込む→吉原の足を生かす。という作戦に変更。これを見て、清水も動く。さっき投入した和田に代わって、大榎投入。ボランチが本職の大榎がボランチの位置に入り、それまで務めていた森岡が本来の左サイドへ。ツーバックは、斉藤と戸田のまま。これが、結局、この日の試合を決めた監督采配となった。
試合はこの後、清水の猛攻にコンサドーレが必死に耐える展開。相変わらず、正確なボール回しをする清水の攻撃は怖い。後半39分には、マラドーナに変わって、村主投入。この時間帯になぜ?という疑問がわいたが、後で聞くところによると、マラドーナから、交代のサインがでたそうな。怪我か?
そして時間もロスタイム。予備審から、3分の表示が。長すぎると、ブーイングうずまくスタジアム。あと、もう少しと思った残り1分くらいのとき、左サイドの森岡から放り込まれたボールに、長谷川が頭で会わせる。ディドの手も及ばず、ボールはコンサゴールの中へ。うわ~~、ここまできて、しかも長谷川か~~~。最後の最後で追いつかれてしまう。コンサドーレの選手、ドーハの悲劇状態。試合はこのまま、延長戦へ。そして延長1分。右サイドから放り込まれたボールをディドがパンチング。ペナルティエリアのすぐ外当りに落ちたボールをオリバがミドルシュート。ディド、ゴール前に密集していたコンサドーレの選手が壁になって、反応できず。Vゴール負けを喫してしまった。

この日の試合、結局、清水の力の前に押し切られてしまった。目の前にまできていた勝利は、するりと逃げていってしまった。しっかり守ってカウンターを仕掛けるという戦い方は、良いと思うが、守り方には今一度工夫が必要なような。コンサドーレの場合、守備の意識が強くなると、ラインを下げてしまう傾向があるようで、ずるずるとゴール前まで下がってしまう。これだけなら、まだいいのだが、さらに、強力な攻撃陣にゴール前に押し込まれると、とにかく下がって守備をしないといけない、あるいは味方のバックアップを、あるいはボールとゴールの間に入って守備を、などの考えが働くのか、選手全員が下がってしまう。そのため、最後列のDFラインと、その前のボランチやMFのラインが一緒になってしまって、一列になるシーンが結構多く見られる。DFラインと、その前の選手は常に二列のラインを引いておくのが理想なのだが、守備一辺倒になった時、この形がコンサドーレは崩れるのである。そのため、ボールを放り込む選手へのプレスが甘くなって、正確なボールを放り込まれる。あるいは、ミドルシュートを放たれる(さらにGKは、味方が壁になって、このシュートが見にくい)。
このような守備ラインの崩れは、昨年も、結構見られたので、コンサドーレの守備の欠点かもしれない。この日の2失点も、この形でやられた。試合も終盤、運動量も落ち、猛攻を受けたときに、ラインをあげて、さらに二列を形成しようとすると、選手にはかなりきついかもしれないが、これをクリアしないと、強いチーム相手に守って勝つ、という戦い方は通用しない。わずか四本しか打てなかったシュート。それでも、あるディレス監督は「コンサドーレのカウンターは強力だった」とコメントしたように、コンサドーレのカウンター攻撃は、上位チームにもそれなりに通用する。あとは、全員守備の様な状況になってしまったとしても、「とにかくゴール前に戻って守れ」ではなくて、チーム全体の守り方に一工夫欲しい。うまく守れるようになれば、ジャイアントキラーと呼ばれるようなチームになることは夢ではない。

さて、次節はカシマスタジアムで鹿島戦。鹿島にもまだ一度も勝っていないし、チーム最多失点試合(7点)を喫しているチームである。連敗は避けて欲しいし、何よりも鹿島に勝つようなことがあれば、チームとしての自信にも繋がる。アウェイだけれど、何が何でも勝って欲しいものである。この勝利が2ndステージの流れを決めてしまうかもしれない。

ちなみに今日は、雨だったので写真はありません。

(以上記事:二上英樹)