[第14節]in厚別:セレッソ大阪戦(写真付)

『二上英樹の観戦記』

やっとこさ、コンサドーレが札幌に帰ってきた。Jリーグが開幕して五ヶ月。14試合目にして、ようやくコンサドーレが本拠地厚別競技場に戻ってきた。前売りも一週間前の段階で、1万枚以上はけてたそうだから、みんながこの試合を待っていた。
平日のナイターは、仕事が終わってから駆けつけるから、いつも到着はぎりぎりになる。この日もスタジアムに着いたのは、試合開始30分前の6時半頃。着いてまず目に付いたのが、改装なったゴール裏スタンド席。スタジアムの外から見ると、見上げるような立派なスタンド席が。スタジアムの中にはいると、既にゴール裏は一杯。この日は、白い恋人スペシャルデーと銘打って、石屋製菓が、赤色のポンチョを入場者全員に配ったから、スタンドは真っ赤。ピッチでは、選手が練習していたが、既にスターティングメンバーの発表は始まっていた。
今日は、札幌開幕戦とあって、イベントが目白押し。試合前に桂札幌市長の挨拶や、コンサドーレ公式チームソングを歌うヴォイスのミニコンサートが開かれた。唄うのはもちろん『AMBITIOUS-炎になれ』。コンサドールズも健在、いつもより曲数が多かったのは開幕戦だからか。そして、選手入場の際には、コンササポーターが制作したビッグフラッグ(75m×12m)がフルスペックサイズでバックスタンドに翻った。ゴール裏では、サポーターが自主制作したタオルマフラーがお目見えし、とにもかくにも、今日が開幕戦だということを感じさせてくれる。試合開始が近づくに連れ、異様な盛り上がりを見せる厚別競技場でした。

札幌の先発は以下の通り。4-4-2のフォーメーションは前節横浜F戦と一緒。DFは、田渕、古川、渡辺、黄川田の四人。中盤は、ペレイラ、太田、後藤、マラドーナの四人。ペレイラをボランチに、マラドーナをゲームメーカーに配する布陣。四人を菱形に配するフォーメーションだが、時に、太田とペレイラがダブルボランチ気味になるのかも。オフェンス陣は、バルデス、吉原のツートップ。控えは、加藤、梶野、村主、時岡、有馬の五人。今日が誕生日の村主、出番はあるか。

  • FW:吉原、バルデス
  • MF:ペレイラ、太田、後藤、マラドーナ
  • DF:黄川田、古川、渡辺、田渕
  • GK:ディド

対するセレッソは、攻撃陣がいい。西沢とマニッチがFW、森島と河がMF登録されているが、実際は、西沢をポストプレーヤーとしてワントップ気味に配し、二列目にマニッチ、森島、河が並ぶ様なフォーメーション。
攻撃力はあるが、守備がザルと言われているセレッソ大阪。同じく、攻撃陣に比べ、守備陣が劣るコンサ。従って今日の試合は、点の取り合いになるというのが、大方の見方。
さて、試合開始。立ち上がりはセレッソ。いきなりコンサ陣内でFKを二本得る。これをしのいだコンサドーレ。右サイドを駆け上がる田渕が倒され、ほとんどコンサーキックと変わらない位置でのFKを得る。蹴るのはマラドーナ。ゴール前に上がったボールに、ドンピシャのタイミングで合わせたのがバルデス。マークについた西沢より頭一つ飛び出した、バルデスのヘッドが炸裂。セレッソゴールに見事につきささった。前半5分、コンサ先制、1-0。厚別改修工事で新しくできた電光掲示板に初めて刻まれた記念すべきゴールはバルデスヘッド。
開始早々のゴールにスタジアムは、一気にボルテージが盛り上がる。ホームはこうでなくっちゃ。やはりホームのコンサドーレは強い!!、とみんなが思ったはず。ところが、ゲームはこの後、サッカー評論家やスポーツ記者が予想したとおり、点の取り合いになる。前半10分、右サイドからコンサDFを振り切って、マニッチが切り込んでくる。マニッチのシュートをディドがファンブル。そのまま、ゴールラインを割ってしまった。コンサDFがゴールライン上で必死にクリアするも、審判はゴールの判定。えっ、今の入ったの。てな感じのゴールで、同点にされてしまう。
最初は押し込まれていたコンサだが、中盤を四人にしたのが功を奏したのか、中盤ではボールを支配でき、セレッソゴール前までは、結構ボールが運べる。一方、駿足を誇る攻撃陣を持つセレッソは、完全にカウンターねらい。二列目から両サイドに、森島、マニッチ、河が飛び出して、トップにいるポスト役の西沢に合わせる戦法。コンサに攻撃させておいて、コンサ陣内に大きくできたフリースペースへ先の四人が飛び出す。セレッソも、コンサと同じ、4-4-2だが、実際は、6-4といった感じで、6人で守って、攻撃は先の4人に任せるといった感じ。
で、問題だったのが、セレッソ攻撃陣の足にコンサDF陣がついていけてなかったこと。完全に走り負けていた。黄川田のいた左サイドは、結構森島にやられていた。また、二列目の選手が頻繁にポジションチェンジを繰り返すために、マークについたセンターバックの二人が、見事に外に釣り出されて、DFラインはガタガタ。そのため、セレッソゴール前で、コンサドーレが攻撃していたと思ったら、次の瞬間には、コンサゴール前にセレッソの選手がボールを持って攻め込んでいるといった展開。あ~、危ない、といった言葉が、何度口からでたことか。
それでも、追加点はコンサドーレが先に奪う。前半30分、センターサークル付近から、セレッソDFの裏側へ、太田がふわっとしたボールをあげる。そこに走り込んだのが、バルデスとセレッソGK下川。先にバルデスが触り、ループシュート。下川かろうじて手に当てるも、ボールはゴールの中に吸い込まれた。ラッキーな点で、コンサ2-1。試合の方は、このあと、先にのべたような試合展開。コンサドーレが攻めて、カウンターを食らう。前半が終了するかと思われたロスタイム。左サイドを再び、マニッチに突破される。マニッチのシュートは、ディドの脇の下を抜け、ゴールネットへ。2-2の同点。そお言えば、今日のディド少々変だった。キャッチングに難があるのか、結構ぽろぽろしていた。一失点目も、ファンブルだったし。二失点目は、反応できてれば、ファインセーブだったのだろうが。ハイボールへの飛び出しのタイミングも、悪い感じがした。GKの不調が、DFに不安を与え、よけ前にDFラインが不安定になったのだろうか。前半はこのまま終了。

後半始まって、先手を取ったのは、セレッソ。後半10分、左サイドを破られ、センタリングが上がる。中央で、西沢がこれに頭であわせ、3-2。コンサ、15分には選手交代。後藤に変えて、村主投入。攻撃的にするために、中盤も、太田をシングルボランチに、ペレイラをそのキープ力を生かして攻撃的な位置にあげて、点を取りに行く。これが功を奏したか、後半20分、セレッソゴール前の混戦の中から、渡辺が押し込み、3-3。ところが、後半20分。今度は右サイドを破られ、センタリング。これを鈴木に決められ、3-4。このあと、コンサ、ペレイラを下げてFW有馬を投入。スリートップにして、猛攻をしかけるが、追いつけず試合終了。ロスタイムの有馬のゴール前でのふかしは、スタジアム中に大きなため息を誘った。ついに本拠地厚別で、負けてしまった。

今日の敗因は、セレッソ攻撃陣のマニッチ、森島、河の三人の足にコンサドーレの選手がついていけなかったことにつきる。二列目からの飛び出しに、まったくついていけてなかった。技術うんぬんではなく、かけっこで負けるとなると、見ている方は少々悲しい。コンサドーレの場合、セレッソと異なり、ウイングのように両サイドを駆け上がるのが、ウイング(サイド)バックである。中盤の選手よりも、両サイドバックの方が足が速いのだから仕方がない。そのため、よけ前に守備ラインが手薄になる。といって、上がらないと、効果的な両サイドからの攻撃がしかけられない。セレッソのように中盤に、サイドにボールを持って抜け出ることのできる選手が、コンサにいると少しは、サイドバックの負担が減るのだが。他にも一杯問題はあるのだが、そこら辺は1stステージ終了後にでも、小話の部屋に掲載予定の『コンサ戦術解析』で詳しく述べることにしよう。

コンサドーレはここまで、厚別でリーグ公式戦21連勝。この連勝がついに止まったわけだが、まあ、それも仕方あるまい。正直いって、少々まゆつばものの連勝記録だったのだから。二年前の夏、厚別で行われたPSMで名古屋に負けた。これで、連勝記録は、公式戦に限った連勝記録になった。昨年秋、ナビスコカップで鹿島に負けた後は、リーグ戦公式戦連勝記録となった。そして、今日、初のJリーグ戦が行われた試合で負けてしまった。結局、厚別では、まだ一度もJリーグ勢に勝っていない。コンサドーレの連勝記録も厚別神話も、Jリーグ勢には通用しないということか。それでも、ここは見方を変えて、厚別では、まだたった一敗しかしてないと考えることにしよう。つまり、今日は負けたが、それでも厚別ではコンサドーレは強いのである。

(以上記事:二上英樹)


ゴール裏スタンド:改修工事の終わった厚別競技場。新しくゴール裏芝席が、ベンチシート型の椅子席スタンドに生まれ変わりました。これまでのスタンドより、高さも高くなり、一番高い所は、バックスタンドよりも高い。この日のゴール裏は、一杯の観客で埋まりました。入場する際に配られた赤いポンチョをみんな着ているので、赤く見えます。バックスタンドとの間には、新しく設置された電光掲示板が見えます。
試合前の練習:久しぶりに厚別のピッチに見るコンサドーレの選手達。この日が来るのをどれだけ、待っていたことか。
ミッシェル宮沢さん:この日、テレビ中継の解説に訪れたミッシェル宮沢氏。試合前にピッチに降りて、グランドの感触などを確かめていました。
桂札幌市長:試合に先だって、桂札幌市町の挨拶がありました。
ヴォイス:コンサドーレ札幌公式チームソング『AMBITIOUS-炎になれ』を歌うヴォイスの二人。
コンサドールズ:コンサドールズも健在。
ビッグフラッグ:選手入場の際、バックスタンドにビッグフラッグが広げられました。
ゴール裏:選手入場の際、タオルマフラーを広げるゴール裏のサポーター達。
記念すべき初得点:前半5分。記念すべき初ゴールは、バルデスのヘッドから生まれました。
ゴール前の攻防:セレッソゴール前の攻防。