[第8節]in室蘭:ベルマーレ平塚戦(写真付)

『二上英樹の観戦記』

第八節にして、ようやく道内二試合目。久しぶりに帰ってきたような気がするのは自分だけではあるまい。さて、この日の室蘭、週間天気予報では雨の予想だったが、何とかもちこたえたようで、薄曇りながら一応晴れてくれた。試合開始1時間前にスタジアムに到着したが、その時点で、もう一杯。この前のガンバ大阪戦の比じゃない。G大阪戦は、アウェイゴール裏に空席が若干目だったが、この日は、中田人気もあるのか、びっしり。スタジアムに着いて、最初の一言は、「こりゃ、すごいわ」。おそらく、ゴールデンウイーク初日のためもあるのかなとも思う。室蘭入江競技場の公称定員は12000くらいだが、この日入場した人は、最終発表によると11518人。文字どおり満員となった。入場券は前売りの段階で9100枚でており、当日は、初めて札止めが出たんだとか。この入場者数、室蘭入江の球場記録を更新しました。

札幌の先発は以下の通り。3-5-2のフォーメーションはこれまで通り。そして、ペレイラが、コンサドーレのペレイラとしていよいよJ初登場(ペレイラ自身のJリーグ再登場は880日ぶり)。シーズン前の怪我で、戦線を離脱していたペレイラ、怪我自体は既に治っていたが、代わりに入ったバウテルが好調だったために、復帰が見送られていた。前節三枚目のイエローで今節はバウテルが出場停止。そのため、満を持しての出場となった。そのペレイラがリベロのポジションへ。残りのDFは、木山と渡辺がストッパーのポジションへ。
バウテルの代わりにボランチには前節までリベロに入っていた古川が。怪我で戦線離脱中の田渕の代わりには村主が右ウィングバックへ。左ウイングバックには村田からレギュラーポジションを取った黄川田が。攻撃MFには、マラドーナと後藤が入る中盤。
オフェンス陣は、バルデス、吉原のツートップ。控えは、加藤、梶野、鳥居塚、村田、深川の五人。

  • FW:吉原、バルデス
  • MF:黄川田、マラドーナ、古川、村主、後藤
  • DF:木山、ペレイラ、渡辺
  • GK:ディド

対するベルマーレには、中田、ロペス、小島、洪などの代表クラスがずらり。
この日まで、二勝五敗で苦しい戦いが続くコンサドーレも、その虎の子の二勝がホームで挙げたものとあっては、今日の試合も期待される。とは言え、相手は現在2位の平塚。やはりここは、平塚の攻撃力をコンサドーレがいかに抑えるかといったところが今日の見どころか。今日は、バックスタンドは座れそうにないので、久しぶりにゴール裏で試合を観戦することにした。
試合開始してしばらく、「やっぱ、中田はスゲーや」と思ってしまった。中田がボールを持つと、かならずコンサドーレがピンチになる。よく、まあ、そんなとこにパスが通るわな、という所にパスが出る。しかも前半はじまって早々に先制パンチを食らう。前半9分、平塚がペナルティエリアすぐ外でFK。蹴るのは中田。ゴール前に上がったボールを平塚FWと札幌DFが競る。後ろに流れたボールを、フォローに走り込んでいた渡辺が体に当てて、ゴールに押し込んでしまう。痛恨のオウンゴール。渡辺しばらくゴールネットをつかんだまま動けなかった。チームメイトに肩をたたかれやっとこさピッチへ。スタンドも静かになってしまったが、それでも気を取り直して応援は続く。
しかしながら、先制パンチは利いたようで、試合は平塚ペースで進む。時々、平塚ゴール前に押し込むもののたいていは札幌ゴール前でボールが動いていることが多かった。平塚ペースの試合なのだから、札幌がカウンターを仕掛けなくてはならないのだが、試合の展開はまったく逆。相手ゴール前に運ぶのに5~6つのパスが必要な札幌に対し、平塚は、3つぐらいのパスでもう札幌ゴール前。これも平塚には中田がいるから。味方が遠くにいても、そこにフリースペースがあれば、長く正確なパスがドンピシャのタイミングで飛んでくる。札幌が苦労して平塚のゴール前に運んでは、逆襲をくらいピンチを招くといった展開。
それでも、札幌は中田にマンマークをつけて追加点を許さずにいた。が、ついに前半40分、ゴール正面で、札幌DFをかわした中田がシュート。ディド横っ飛びするが、わずかに届かず。ゴール左隅につきささってしまう。これで0-2。がっくりする札幌イレブン。ゴール裏から見てて思ったのだが、このシュート、味方DFが影になっていて、ディド見えてなかったんじゃないかな。横への反応が一瞬遅かった様な気がした。試合はこのまま、前半終了。完全に押し込まれていた札幌、後半開始から選手を替えて、追撃にでるか?どうするフェルナンデス監督。

ところが、ハーフタイム中は、控えの選手全員がピッチで練習していた。あれっ、ということは、選手交代無し?。普通、後半開始と同時に選手交代する場合、投入される選手は、ミーティングルームでみんなと一緒に監督の指示をうけるので、ピッチで練習はしないんですよね。う~ん、今年の監督は慎重というか腰が重いなあ。

さて、後半開始。ピッチでは両チームのイレブンがそれぞれ円陣を組んで活を入れていた。前半完全に押し込まれていた札幌だが、後半開始早々チャンスが訪れる。なぜかマラドーナの動きがいい。というか、鬼気迫る動きを見せてくれる。そのマラドーナが平塚ゴール前に右サイドから切り込む。一人二人かわし逆サイドの後藤へパス。これを後藤が中央へ折り返す。平塚DFこれをクリアするが、これはミスキック。右サイドへこぼれたところに走り込んだ吉原が、渾身の力を込めてシュート。見事にゴールネットにつきささり、ゴ~~ル。スタジアムは、総立ち(平塚ゴール裏とその周辺いる中田ギャル以外は)。平塚に完全に押し込まれていただけに、スタンドの観客も完全に息を吹き返した。
ここからしばらくは、コンサペースの時間帯が続く。後半15分、右サイドを駆け上がる村主からゴール前にロングボールがほうり込む。そこに走り込むコンサドーレのFW、バルデス、吉原の二人。バルデスの右への動きに平塚DFもつられるが、バウンドしたボールは、頭を越して左側へ。バルデスの左後方を影のように走り込んできた吉原は、目の前に落ちてきたボールを、思いっ切り蹴りこんだ。GKの股間を抜いて、ゴールのなかへ。これで、2-2の同点。すごいぜ、コンサ。今日の吉原は何かすごいぞ。
異様な盛り上がりを見せるスタジアムの雰囲気に、このままいけるかもしれないと思ったが、逆転するまでには至らず。それでも試合は五分五分のペースに戻っていた。スタジアムのムードは完全にコンサドーレになっていたが、試合の方がコンサペースにはならないのは、洪明甫のせい。後半、コンサ応援団がいる側が平塚ゴールのなってわかったことだが、洪明甫が利いている。中田はもちろんすばらしかったが、リベロの洪が、コンサドーレが平塚ゴール前に放り込むボール、切れ込む選手を、ことごとくストップ。目立たないプレーであったが、これでコンサドーレのチャンスが何度つぶされたことか。利きすぎだ洪明甫。
そして平塚ベンチ、後半30分ついに突き放しにかかる。怪我で先発を外れていたFWリカルジーニョを投入。この采配がずばり当たって、投入されてすぐに、リカルジーニョがヘッドでコンサゴールに追加点をつきさす。追い上げムードに水を差される平塚の追加点。再びスタンドが静かになってしまうが、今度は前半とは雰囲気が違う。0-2を追いついたコンサドーレのプレーを見ているからには、まだまだこれからといった雰囲気がスタンドを覆う。コンサドーレの最後の粘りを知っているサポーターは、この試合一番を声援と応援をイレブンにむける。
残り15分で、再び離された札幌。ここでついにフェルナンデス監督が動く。DF木山を下げて、MF鳥居塚を投入。昨年よく見られた3-5-2のシステムから4-4-2への攻撃的なフォーメーションへのチェンジ。ここから、試合終了までの15分はすばらしかった。ボールの動きは激しく、スリリング。攻撃にウエイトをかけているから、ボールを奪われれば、即カウンターを食らう。ディドやペレイラの札幌守備陣の体をはったプレーで、何とか平塚のゴールを防いでいる状態。いつ失点してもおかしくない状態だったが、それでも札幌果敢に平塚ゴールを襲う。マラドーナの鬼気迫るプレーが目を引いた。マラドーナーがボールを持つと、平塚の選手が二人、三人、四人と囲ってくる。奪われることも多かったが、かわすシーンも何回か見られた。そのプレーにスタンドからどよめきと拍手が。
札幌ベンチさらに動く。後半40分、MF後藤を下げて、FW深川を投入。4-3-3の超攻撃的フォーメーションへチェンジ。実際は、深川はそのキープ力を生かしてMFの位置に入り、MFのマラドーナをFWの位置にあげ、バルデス、吉原、マラドーナのスリートップ。中盤は鳥居塚、深川が組み立て、ボランチの古川が、センターバックのペレイラ、渡辺と三角形を形成し、変則の最終ラインを形成。両サイドバックになった黄川田、村主は当然のごとくサイドを駆け上がる。まさにぎりぎりの状態での攻防が目の前で展開された。この時のフォーメーションは以下の通り。

  • FW:マラドーナ、バルデス、吉原
  • MF:深川、古川、鳥居塚
  • DF:黄川田、ペレイラ、渡辺、村主
  • GK:ディド

そして後半ロスタイム。左サイドをボールをキープしつつ、切れ込むマラドーナ。ペナルティエリアに入るかどうかのあたりで、マラドーナシュートを放つ。前にでているGKの位置を見つつ、右足で思いっ切りこすりあげたボールは、見事なループシュートとなり、ここしかないというゴール上方右隅へ。平塚GK小島が手を伸ばしつつ懸命に下がるが、そのままボールは吸い込まれた。ゴール裏で見ていた自分は、このボールが飛んでくる瞬間は時間が止まっていた。こちらへ向けて、ゆっくり空中を飛んでくるボールに、そのままそのままと祈りつつ、ゴールネットが揺れまでの間は、まさにスローもションのようだった。ゴールが決まるシーンをゴール裏から見れるのは、まさにこの席の醍醐味。そういえば、昔、後藤キャプテンと話をする機会があったけど、風とかがなく、どっちの陣地を取ってもいいときは、なるべく後半コンサ応援団のいる側へ向けて、攻撃できるようにしてるんだとか話してくれたような。おかげで、今日はすばらしいシーンが見れました。ありがとう、後藤キャプテン。
劇的な同点シュートに、室蘭入江競技場がはじけた。やってくれるぜ、コンサドーレ。ここまで、劇的なシーンを毎年見せてくれるか(もちろん二年前の鳥栖戦、昨年の川崎戦のことですよ)。スタンドはもう大騒ぎ。興奮さめやらぬ中、試合はこのまま延長戦へ。もうこの流れは、札幌の勝利に間違いなし、とスタジアム中の人が思っていたはずだったが、Vゴールが奪えない。コンサドーレは、4-3-3の攻撃的フォーメーションを維持しつつ戦うものだから、チャンスと同時にピンチもいっぱい。決定的なピンチのシーンも、ディドの好セーブや、平塚の選手のポカで、何とか防いでいた。結局、PK戦へ。

PK戦はいやだなあ。と思ったのは自分だけではあるまい。詳しくコンサを知っている人ならば、コンサドーレはPK戦で勝ったことがない、ということを知っている。プレッシャーに弱いのかなと思う。それでもPK戦がはじまった。札幌の先蹴りで始まったPK戦、先に外したは三人目に蹴った渡辺。平塚GK小島に止められしまう。それでも、4人目の洪をディドが好セーブで止める。これで同点。ところが、札幌五人目の黄川田がポストに当ててしまう。まず~、とみんなが思ったのはいうまでもない。こうなれば、最後の頼みはディド。みんなの願いをうけ、ディドが、平塚五人目の松川のPKを見事にストップ。スタジアムは大騒ぎ。PK戦は5人が終り、サドンデスへ。六人目は双方が決め、七人目へ。コンサ七人目の鳥居塚がゴールバーへ当ててしまう。奇跡よ再び、頑張れディド、の願いも届かず、平塚七人目の公文がゴールを決め、4-5で負けてしまった。
一生懸命応援してきたスタンドのサポーターの手も下がってしまったが、試合が決まった後に、ディドが高く手を上げ、拍手をしたのを見て、スタンド中の人が気を取り直して、コンサイレブンの健闘に惜しみない拍手を送っていた。肩をがっくり落として、ゴール裏の応援団に挨拶にきたコンサドーレの選手達に、惜しみない拍手が送られていた。わっかってるよ、ディド。よくやった。今日は、PK戦で負けたけど、仕方がない。コンサドーレの選手達は力を出し切ったよ。次も今日のような感じで頑張ってくれ、そんな感じだった。

オウンゴールを献上してしまい、PKを外した渡辺、柏戦に続いてPKを外してしまった鳥居塚、はきっと今日は悔しさで眠れないに違いない。でもね、そんなことを、誰もは責めたりしないんだ。PK戦は運だし、オウンゴールも積極的にプレーしていた結果なんだから。それより、むしろ心配なのは、まだコンサドーレの選手に、全体にプレーに積極性が足りないように見えたこと。とりわけ、攻撃陣には、それを感じた。今日は、吉原、マラドーナのゴールもあり、バルデス以外に得点パターンが増えたことは評価できる。でも、まだまだなんだよね。今日はひさしぶりにゴール裏で見ていて気が付いたのだが、ゴール前でボールをキープしている選手がゴールまで道が開いてもシュート打たないで、ボールを回してしまう。バルデスも相変わらず、思い切りのいい直線的なシュートは打たないで、キープしすぎてとられてしまう、もっと、積極的にゴールをねらえばいいのに、遠慮しているのかな。そのくせ、枠に飛ばないシュートは多いんだよね。きれいにいこう、大切にいこうとしすぎているんじゃないかと感じてしまった。Jリーグレベルでは、チーム力に圧倒的な差がないのだから、もっと、泥臭いゴールが多くあってもいいような気がする。
次節は、磐田戦。磐田の中山は、きれいなゴールというよりも泥臭いゴールが多いよね。中山自身あまりトラップとかが上手じゃなく足技が劣るという都合もあるんだけど、ゴールはどんな形でもゴールというスピリットは感じる選手だけに、こういう姿勢はコンサドーレの選手にも見習って欲しいと思う。でも、次節は、ゴンのゴールラッシュを止められるのだろうか(しかも磐田スタジアムで)。頑張れコンサドーレ。

(以上記事:二上英樹)


はためく応援旗:今日もスタンドは一杯。ゴール裏ではためく応援旗達。
キックオフ:さあ、キックオフ。ボールの傍らに立つのは、右からロペス、西山。真ん中にいるのが中田。左端の背番号3が我らがペレイラ。
後半開始:後半開始前に両チーム共に円陣を組んでいました。
コンサ追いつく!!:吉原の2得点で追いつくも、再びリカルジーニョの得点で突き放される展開。試合は既に後半ロスタイム。必死の攻撃を仕掛ける札幌のマラドーナの鮮やかな同点ゴールが決まり、喜ぶコンサドーレの選手達。コーナーで抱き合うのはマラドーナ(10番)、バルデス、吉原の三人。左端には、がっくり、ひざに手をつく平塚の選手が。
延長戦を前に:試合はついに延長戦へ突入。両チームベンチの前で指示を受ける選手達。
PK戦:延長戦でも決着つかず、試合の勝敗はPK戦へ。