[第30節]in厚別:ジャトコ戦

『二上英樹の観戦記』

今年もリーグ最終戦となりました。すでに二節前の試合で、優勝とJ昇格を決めているコンサドーレには、今日の試合は消化試合。でも、今季ホーム最後の試合とあれば、選手にとっても、サポーターにとっても大事な試合。と思ってでかけたのだが、地下鉄の大谷地の駅についても、やけに人が少ない。先週優勝のかかった試合のようにとまでは言わないが、もう少し込んでいてもよさそうなものである。今日は全然人が来ないのか?。と思いつつスタジアムへ歩いて向かう。
スタジアムには、試合開始の30分ほど前に着いた。やっぱり観客が少ない。最終戦なのになあと思っていると、雨が降ってきた。えっ、今日って雨が降るの?。天気予報をあまりチェックしない私は、雨の予報がでていたことを知らなかった。それでも、いつこんなことになってもいいように、マウンテンパーカーを着ていたし、かばんの中にはポンチョが一つ。早速取り出して、はおったが、雨足の方は一向に弱くならず、むしろ豪雨の様相を呈してきた。こりゃー、客足に響くなあと思いつつ、最後の試合をメインスタンドから見ることにした。
結局、観客は8535人。予想どおり、1万人を割ってしまった。平日の雨でこの数字を多いと見るか、最終戦なのに少ないと見るかは、人それぞれだろう。思いかえせば、今季の札幌開幕戦の徳島戦も雨だった。雨で始まり雨で終わったシーズンとなったが、この時の観客は地元開幕戦にも関わらず、8000人ほどだった。また、朝から雨が降っていた西濃戦も8000人ほどだった。思うに、この8000人という数字が、いわば固定客なのではなかろうか。雨が降っても雪が降っても、スタジアムにやってくるコンサフリークの数のような気がする。この数字、昨年のホーム平均入場者数5500人あまりに比べても3000人ほど増えている。やっぱり多いんだろうな、と思う。それにしても、雨足は一向に弱くならない。この時期の雨は寒い。それでも、雪に変わらないだけましか、と思いつつピッチを眺めた。

札幌の先発は以下の通り。徳島戦で怪我をして以来、休んでいたペレイラが復帰。まだ本調子ではないらしい。後藤、マラドーナもケガを抱えて、具合はよくないらしいが、ホーム最終戦だからと、監督に出場を直訴したんだとか。

  • FW:吉原、バルデス
  • MF:村田、マラドーナ、朝倉、後藤、田渕
  • DF:古川、ペレイラ、渡辺
  • GK:ディド

控えには、新村、鳥居塚、浅沼、石塚、森の五人。
試合に先立ち、グラウンドの上では、前節JFL100試合出場を達成したバルデス選手の表彰式が行われた。試合の方は、7時に定刻どおり開始。雨でボールがすべるせいか、選手はやりにくそう。パスミスが目立つ。と、いきなりチャンス。吉原が右サイドを駆け抜けセンタリング。逆サイドの後藤にフリーでつながる。前にはGKしかいない。が、胸でしたトラップが大きい。後藤、GKとぶつかりシュート打てず。ボールはポストの横を転がって出ていった。おしい。この開始直後の決定的なチャンスにスタンドは盛り上がるも、ゴールには結びつかず。
グラウンドコンディションが悪いせいか、プレー一つ一つの、精度が悪い。イージーミスはでるし、ボールを追っかける執念というものが感じられない。確かに、優勝も決まりJ昇格も決まった後の、この試合。テンションが低くなるのも判るが、最終戦がこのような有り様では。せっかく、雨の中来てくれたサポーターを無くすぞ、と思う。それにしても、あの開始直後の決定機以降、チャンスが訪れない。この展開、デンソー戦の時と似ている。開始直後、新村が決定機を外して、なぜか苦戦したあの試合。
このまま、ずるずると時間だけが経つだけなのか、と思い始めた、前半18分。思いもがけないプレーで点が入る。左サイドからのFK。蹴るのはマラドーナ。ゴール前に高く上がったボールに、GKが反応し、ジャンプ一番キャッチするかと思われた瞬間、なんとこれをバンザイ。後ろにそらしてしまう。GKの後ろに詰めていたのは、バルデス。胸で上手にトラップしたバルデスは、誰もいないゴールへ落ち着いて蹴りこんだ。1-0先制。バルデス自身、シーズン得点記録を40点の大台に載せるメモリアルゴール。試合前の公約どおりのゴール。
前半の見どころは、これだけ。このあとは、相変わらず、ずるずると時間が経つだけの試合となってしまった。雨足は、時に弱くなったりするものの、相変わらずじゃんじゃん降ってきていて、ピッチの上には水たまりが。選手が動く度に、水しぶきが上がる。

後半に入って、ピッチの状態は相変わらずだが、試合の方は、コンサに度々チャンスが訪れる。ジャトコゴール前で、分厚い攻撃をしかけるようになるが、ゴール前に人数をおいて守るジャトコの壁を崩せない。それでも、惜しい場面がちらほらでだし、だんだん見どころのある試合になってきた。
後半15分、右からのCKを得る。マラドーナの蹴ったボールに合わせたのは、ペレイラ。ぴったりのタイミングで放ったヘッドは、ジャトコゴールに入るかと思われた瞬間、ゴールの中にいたジャトコDFにはね返されてしまった。
続いて、後半20分。右からの後藤のセンタリングに合わせたのはゴール正面にいた吉原。フリーで、ヘッドを放つが、GKにナイスパンチングされ、ゴールの外にはじかれてしまった。
今度は後半25分。ジャトコゴール正面で、マラドーナと後藤がワンツーのコンビネーションで、DFを翻弄する。最後に、マラドーナのヒールキックパスをもらった後藤がゴール正面からGKの頭を越えるループ気味のシュートを放つが、バーに当たってはねかえされてしまう。後藤、手が上がりかかっていたから、決まったと思ったことだろう。
しかしながら、ここにきて、後藤とマラドーナの動きの悪さが目に付くようになってきた。後藤はパスの精度が落ちてきて、マラドーナは運動量が落ちてきている。二人ともホームでの最終戦だからということで、ケガを押して出場していたのだが、それを知ったのは後日のことで、この時はそんなこと知らない。そんなわけで、二人を石塚と鳥居塚に変えればいいのにと、見ながら思ってしまった。明らかに、ガス欠のような感じで動きが悪い。結局、ビッコをひくような感じになったマラドーナを後半30分、フェルナンデス監督は、石塚に交代させた。
後半32分には、吉原が一人で持ち込んで、ジャトコDF三人をかわし、ゴール正面からシュート。これもバーに当たってしまう。後半に入って押してはいるが、点に結びつかない。
さらに後半35分。センターライン右サイドにいたマラドーナから、逆サイドの村田に、DFの裏に出るロングパスがつながる。村田これをゴールライン際まで持ち込んで、センタリング。逆サイドに走り込んだ吉原が、ヘッドでジャトコゴールにボールをたたき込んだ。ゴ~~ル、と思ったら、オフサイドの判定。どうやら、村田に出たパスがオフサイドだったらしい。確かに、その時、ラインズマンの旗が上がっていたが、主審は認めず、試合を流したのかと思ったのだが、どうやら、旗を見ていなかったようだ。主審が、線審のところに確認に行って、オフサイド。吉原のゴールは幻に終わってしまった。当然、スタンドからはブーイングが出るが、判定は覆らない。
その後、しばらくプレーが荒れて、ジャトコのシュートがコンサゴールを脅かすこと数回。これをなんとか抑えて、反撃に転ずる。試合終了間際には、ゴール正面で石塚が倒され、FKを得る。蹴るのはペレイラ。昨年、札幌開幕戦となった鳥栖フューチャーズ戦。1-2の劣勢で、ロスタイムに同点ゴールをたたき込んだのは、ペレイラのFKだった。厚別でのリーグ戦無敗神話が始まったのが、このゴールからだったことが思い起こされます。ペレイラのFKは、うまく壁を巻いて、ゴールに向かうが、横っ飛びしたGKにうまくパンチングされ、ゴールの外にはじき出されてしまった。  その後、しばらくして試合終了。1-0での辛勝ながら久しぶりの完封でした。これで、今シーズンの厚別での試合は全部終わり。

今日の選手の動き。久しぶりのペレイラは、まずまずでした。久しぶりの実戦ということもあるのか、試合開始しばらくは、丁寧に丁寧に、確実に確実にという感じでプレーしていたのが、後半になると慣れてきたのか、ボールを自ら持って攻撃参加するシーンが多々見られるようになりました。ケガで優勝の決まった大分戦にでられなかったのは、かなり悔しかったらしく、この最終戦でその分を出そうとしていたようだ。結局、完封で抑えたのだから、今日のDF陣のできに文句はあるまい。
一方、攻撃陣はというと、後藤とマラドーナが、いつもの本調子じゃなかったためか、いまいちだった。結局、1点しか取れなかったのが、それを表している。それでも、FWに入った吉原の動きは、結構よかった。吉原がハットトリックを決めた徳島戦も、今日のような雨の日だったから、結構期待して見ていたのだが、ゴールはならなかった。しかし、DFの裏に出る動きは良かったし、相手DFとかなりバトルを積極的にこなしていたから、見ていたおもしろかった。やはり課題は、バルデスのような結果を出す能力だろう。何だかんだ言ってもFWは、点とってなんぼだから。来季に期待したい。

試合後は、コンサドーレの選手全員とフェルナンデス監督がピッチに並び、監督が今季の報告と熱い応援に対する感謝のスピーチを行った。その後、サンクス・ウオークと銘打って、選手や監督がグラウンドを一周して、サポーター達に挨拶をして、シーズンを締めくくった。

これで、JFL最終戦が終り、今季のホームゲームは全て終了した。来季のJ昇格を決め、2年越しの悲願をかなえ、この上ない成績でリーグ戦を終えてくれた。来季は、いよいよJリーグ。Jリーグは、二年後の二部制以降に伴い、来季は一部残留を巡って、激しい戦いが行われることだろう。選手にはレベルの高いJリーグでこれまで以上の頑張りを、HFCには赤字が指摘されているが一層の経営努力を、そして、サポーターには今季以上の応援を、来季はしてもらいたいと思う。
コンサドーレのステッカーに、夢のはじまりと書いてあったが、まさに札幌の夢は始まったばかりなのだから。

(以上記事:二上英樹)

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