[第28節]in厚別:大分トリニティ戦(写真付)

『二上英樹の観戦記』

前節徳島戦が終了してJ昇格&JFL優勝のマジックが共に1。ナビスコカップの関係で、28節の他の試合は、先に行われていたが、マジック対象チームが負けなかったため、決定は今日に持ち越した。今日の試合は、ホーム厚別の試合、むしろここで決まる方がうれしい。さて、この日は、歴史的一瞬を見ようと大勢のサポーターが駆けつけた。平日のナイターながらメインスタンドのSS指定席とバックスタンドのS自由席は数日前に売り切れ、A自由席と芝自由席のチケット2000枚ほどが当日券として発売されるのみであった。
前日の雨は、寒気団の通過で雪に変わるかもといわれていたが、雪は降らず。この日もなんとか天気はもちこたえ、空からは何も降ってこなかったが、寒い。この時期、ナイターだと、寒いのだけはどうしようもない。寒冷対策完全防備の格好で、スタジアムに着いたのは、試合開始の30分ほど前。入場してみて驚いた。ホーム側芝席は、足の踏み場もないほどぎっしり。バックスタンドのS自由席もすでにいっぱい。A自由席もホーム側はすでに埋まっており、アウェイ側へおまわりくださいと場内係が誘導していた。試合開始時には、アウェイ側のA自由席も一杯。こんな厚別は始めてみた。結局、17492人の観客が入り、動員数記録を更新しました。
スタンドの混雑具合が、半端じゃなければ、ピッチの上もいつもと違う。マスコミ関係者の数の多いこと。カメラマンの数が普段の倍以上いるのは言うに及ばず、テレビカメラの数も多い。中継用カメラはNHKが担当だから、いつもの数だったけれど、各社が持ち込む、ニュース用のカメラの数が半端じゃない。聞くところによれば、週明け当たりから、キー局のテレビクルーも札幌入して準備を始めていたんだとか。

さて、試合の方へ話を戻そう。札幌の先発は以下の通り。FWは、ナビ杯鹿島戦での動きが評価されたか、ひさしぶりに吉原が先発。怪我の田渕は復帰したが、ペレイラはこの試合も休み。フォーメーションの方は今期初めて、最初から4-4-2のフォーメーション。そのため、DFは、4人が横に並ぶラインディフェンス。一方、MFは、一人増え、吉成が入りました。朝倉が底にボランチで入り、トップにマラドーナ、左に後藤、右に吉成と、四人が菱形に並ぶダイヤモンドフォーメーション。こういうフォーメーションは久しぶりだなあ。

FW:吉原、バルデス
MF:マラドーナ、朝倉、吉成、後藤
DF:村田、古川、渡辺、田渕
GK:ディド
控えには、新村、鳥居塚、浅沼、中吉、森の五人。ひさしぶりに中吉の名前が見える
一方、大分には、先発組の中に昨年まで札幌に在籍していた後藤(静)や加藤の名前が見える。控えにも、木島や川合がいる。川合は怪我ででられないと聞いていたが、古巣の札幌戦とあっては、休んではいられなかったのだろう。
試合の方は、7時に定刻どおり開始。スタジアムは、満員なだけに異様な盛り上がりを見せる。が、しかし、サポーターの期待とは、裏腹にゴールが決まらない。一週間前に厚別での鹿島戦を生で見たサポーターのほとんどが、この日、ここに来ていることだろうが、その時目に焼きついているコンサドーレのプレーが見られない。選手のモチベーションが低いわけではない。ホーム厚別で、優勝&J昇格を決めるという、気持ちは伝わってくるが、これがプレッシャーというものなのであろうか。そして、対する大分の方は、モチベーションが高い。先発に昨年まで在籍した加藤や後藤(静)がいるだけではなく、現在空席の大分の監督を代行をしているのは、昨年札幌でコーチをしていた羽賀コーチである。古巣に胴上げをさせてなるものか、という気持ちが伝わってくる。
4-4-2のフォーメーションで、中盤が厚いため、ボールの支配率は高い。DFの最終ラインが上がり、FWの前線との間をつめて、中盤を支配しようという試みもいい。ゲームメイカーとして、マラドーナ、吉成の二人を配するという意図も感じられる。しかし、点が入らない。何故だ?。どうやら、4-4-2で中盤を厚くした所為で、村田と田渕の両サイドバックがいつものように上がれなくなってしまっているのが一つの原因の様な気もする。中盤に四人いるため、両サイドバックの前にスペースがないのである。味方選手がいて、混んでいるため、空いているスペースがなく、そこを目がけてオーバーラップできないようなのである。常にというわけではないが、いつもより、上がる回数は少なかった(でも、もしかしたら、監督が病み上がりの田渕の負担を軽くするために、あえてこういう戦術を取ったのかも)。
そのため、サイド攻撃をしかけるウイングがいなくなり、結果、中央突破をはからざるをえない。それでも、中盤が厚いだけあって、細かいパスはそれなりに続く。けれど、ラストパスが繋がらない。大分のDFが頑張っている所為もあるが、コンサドーレの選手が多すぎて、スペースを自分で殺してしまっているという風にも見えた。ゴール正面で、こちょこちょっとパスをつないでは、クリアされるということの繰り返しであった。
両サイドバックが上がれないのなら、FWの吉原にウイングのような動きが期待される。期待どうり、DFの裏の両サイドのスペース目がけて、走り込むのだが、いまいち、中盤の選手との息が合わない。それでも、何回かチャンスを作り、スタジアムを盛り上げた。でも一番驚いたのは、久しぶりに見た吉原が、結構当たり強くなっていたこと。体が小さいから、コンサドーレのDFやバルデスみたいにとはいかないが、大分のDFをはじき飛ばし、タックルにも踏ん張り、前へ前へと進む姿に吉原の成長を感じた。ラストパスがゴールに結び付かなかったり、ゴールできなかったのは、運がなかったような気もするが、チャンスには結果を必ず出せる勝負強さを身につけると、才能が開花するような気がする(結局、後半新村と交代させられてしまった)。
前半も終りに近づいて、点が入らないため、マラドーナがだんだん前線に張るようになり、4-3-3の様なフォーメーションへとなってしまった。ゲームメイクするのは、吉成。でも、マラドーナとの実力の差はいかんともしようがなく、うまくラストパスがゴールに結びつかない。結局、このまま前半終了。

ハーフタイム、今日もプレゼントが当たらないなあと、プレゼント抽選券の当たり番号の場内放送を聞きながら、今日の試合、まずい展開だなあと思う。一方的に攻めているわけでもなく、決定的なチャンスもそれほどあったわけではない。何となく、45分の前半が終了してしまった。そんな感じであった。一方の、大分はというと、DFは頑張っている。FWには、加藤と皇甫がいて、結構良い動きをしている。つぼにはまると、カウンター一発ゴールなんてことになりかねない動きを、前半再三見せていた。
万が一、負けたら、しゃれにならんなあと思った。スタジアムに訪れた観客はみんな勝利を確信している。札幌のマスコミ各社も、今日決まるという前提で活動している。テレビ局は、深夜の特番の準備に大わらわだし、新聞も号外や明日の朝刊の紙面構成に大わらわである。これだけのものが、無駄になるわけではないが、次節まで延期になるわけで、肩透かしもいいところである。
前半の戦い方には監督も大怒りだろうから、きっとハーフタイムには雷が落ちて、後半はまた違った札幌を見せてくれるだろうと、期待して待つことにした。

後半開始。10分すぎまでは、前半と同じ様なペースで試合が続くが、10分すぎから、札幌の猛攻が始まる。大分ゴールに一次、二次、三次と、波状攻撃をしかけ、ゴールをねらいます。そして、後半14分。左サイドにいたマラドーナから、前線のバルデスに放り込んだボールがきれいに繋がります。このボールをトラップしたバルデス、DFをかわして、大分ゴールに左脚で蹴り込みます。1-0。待ちに待った先制点をゲット。再三の波状攻撃を見せていた10分すぎから、盛り上がり始めていたスタンドは、大喜び。バルデスも、コーナーフラッグのところまで、走りよって、コーチや控えの選手と抱き合っています(この頃には、コーチ、通訳、その他スタッフだとかその他の札幌の選手?だとかが、メインスタンド下の陸上のピッチの所まででてきていた)。盛り上がる、札幌サポーター。
このあと、後半22分、吉原に代わって新村を投入。この新村が、後半28分、ペナルティエリア左側をドリブルで突破しようとする新村を大分DFがひっかけて倒してしまいます。主審の笛が高らかになって、PK。大分のGKが抗議するも認められず。蹴るのはバルデス。珍しく思いっ切り蹴ったボールは、ゴール左隅につきささります。2-0。バルデスもこれで、今季の得点を36とし、昨年本田のロペス(現平塚)が記録したJFLシーズン最多得点記録に並ぶメモリアルゴール。
二点差つけて、一気に盛り上がる厚別スタジアム。これで、今日の勝利(=J昇格&優勝)は間違いなし、と誰もが思った。選手もそう思って、油断したのか、大分が盛り返し始める。後半15分に木島が投入されていたが、30分には、川合がピッチにたった。これで、大分に行った元札幌の四選手が、全員ピッチに立った。川合は、札幌にいるときも、スーパーサブの活躍をしたが、この日も相変わらずで、動きがいい。コンサゴール前に詰め寄る。ここから試合終了までのコンサドーレは、終盤弱い日本代表のようで、大分に押し込まれ、危ない場面がちらほら。そしてとうとう後半40分、ゴール前にあげられたボールを頭で流され、皇甫に決められてしまった。これで、2-1。
この失点で目が覚めて、ピリっとするかと思われたが、大分ペースは変わらず押し込まれ、見ている方はひやひや。それでも、なんとか試合終了まで耐えきり、ついに試合終了の笛がなった。おっしゃ~、優勝だ!!。スタンドは総立ち、ピッチの選手は両手をあげてガッツポーズ、ベンチからは、フェルナンデス監督が、いの一番に駆け出し、選手達を一人一人抱き締め、歓びを爆発させていた。
ピッチの中央では、選手、監督、コーチ、関係者入り乱れて歓び、スタンドでは、サポーターが皆総立ちで、コンサドーレコールや万歳を唱え、なりやまぬ拍手で厚別競技場は最高の瞬間を迎えた。いつもは試合が終わると、すぐに帰り始める観客が多いのに、この日は、ほとんどの観客が残って、歓びを分かち合った。選手達は、手に手にコンサドーレの旗を持って、グラウンドをビクトリーラン。最後まで、拍手はなりやまなかった。

とうとう待ちに待った瞬間がやってきた。2年越しの悲願が、目の前で実を結んだ。今、この場に入れたことを幸せに思う。まさに、『夢の始まり』。来季はJリーグであるが、99年度からのJ二部制実施に伴い、一部残留をかけての厳しい戦いが予想される。でも、何かをしようと思えば、苦しみや辛さが伴うのがあたりまえである。とにかく今宵はこの勝利を喜ぼう。札幌の夜に、シマフクロウの鳴き声がこだました。

(以上記事:二上英樹)


選手入場:この日、ホーム厚別での優勝とJ昇格を決めるため、11人の選手達の入場です。
試合前の挨拶:試合前の挨拶。歓喜の瞬間まであと90分。
吉原選手と後藤(静)選手:大分DF加藤(豪)選手をかわして、右サイドを突破する吉原選手。中央は昨年まで札幌にいた後藤(静)選手。手前は皇甫選手(背番号10)。
後藤(義)選手と加藤(剛)選手:突破するコンサドーレの後藤(義)選手。マークにつくのは、大分の川崎選手(背番号20)と佐藤選手(背番号5)。右上にいるのは、昨年まで札幌にいた加藤(剛)選手。手前は、この日1点を決めた皇甫選手(背番号10)。
喜ぶバルデス選手達:後半14分。待望の先取点を決めて、コーナーフラッグに駆け寄るバルデス選手。ピッチの選手や控えの選手などが一緒になって歓びを分かち合う。
PK:後半28分。新村の突破から生まれたPKを蹴るバルデス選手。これを決めて、本田のロペス選手(現平塚)が持っているJFLシーズン最多得点記録36に並びました。
スーパーサブ:後半になって、大分は、昨年まで札幌にいた木島選手(写真右:背番号11)と、川合選手(写真左:背番号15)を投入。川合選手の投入は、大分に攻撃のリズムをもたらし、皇甫選手のゴールに結びつきました。
見守る関係者たち:後半、ピッチのそばまででてきて戦況を見守る札幌の関係者達。
盛り上がるゴール裏:1点先制して盛り上がるゴール裏。
歓喜の輪:J昇格&JFL優勝決定。試合終了と共に、駆け出してきた監督やコーチ、控えの選手達の歓喜の輪が、ピッチの中央にできました。
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