[第11節]inカシマ:鹿島アントラーズ戦

文・写真/大熊洋一

この日のJ1の試合は、浦和-東京Vと鹿島-札幌の2つだけ。降格の可能性があるチームで試合があるのはコンサだけだから、他の試合の結果いかんで降格が決まってしまうことはない。コンサドーレは、負けなければ、とりあえず降格決定だけは免れる。もっとも、ここで決まらなかったとしても、3日後の水曜日に1つだけ行なわれる試合で柏が勝てば決まってしまうのだが…

☆メンバー
鹿島アントラーズ:GK21曽ヶ端、DF24青木、3秋田、20池内、22石川、MF18熊谷、6本田(c)、5中田、25野沢、FW16アウグスト、13柳沢(SUB:29高嵜、4ファビアーノ、32西沢、11長谷川、27中村)
コンサドーレ札幌:GK1佐藤洋(c)、DF32佐藤尽、14古川、6大森、MF31西田、8ビジュ、22吉川、20和波、13平間、FW25新居、17小倉(SUB:藤ヶ谷、曽田、ジャディウソン、田渕、堀井)

コンサドーレは、ここまで今季リーグ戦全試合に出場してきた森下が出場停止。代わりに佐藤洋平がキャプテンマークを腕に巻いた。2トップは3試合続けて新居と小倉。

迎え撃つ鹿島は怪我人続出で、本来は左サイドバックのはずのアウグストがFW登録、ボランチのはずのU-21代表の青木が名良橋の代わりに右サイドバックに入るなど、かなり苦しい布陣となっている。左サイドバックの石川は、日本選手唯一の大学生として出場していたワールドユースでの直接FKが印象深い選手だが、逆にいえば、それ以外の場面が頭に思い浮かばない。青木-秋田-池内-石川と並ぶ最終ラインには、相手のことながら「これで大丈夫なの?」と心配になってしまう。

キックオフ直前、コンサドーレは、いつになく長い円陣を組んだ。

秋の日が傾きかけた中でのキックオフ

15時30分、コンサドーレのボールでキックオフ(それにしてもどうして15時30分などという中途半端な時刻なのだろう、しかも日曜!)。コンサドーレはキックオフから左に展開し、和波が戻したボールを大森がいきなりゴール前へ放り込む。鹿島DFがクリアしたところを右の西田が拾って左へ大きく振り、これを受けた小倉が内をフォローした平間へ戻したところで、平間と接触した熊谷が倒れた。しばしの中断の後、熊谷は立つことすらできないまま担架で運ばれ、3分には早くも熊谷の交代で西沢が入った(青木が中盤に上がり、池内が右サイドバック、西沢がセンターバックに入る)。

最初に大事故が発生したからか、レフェリーがやや神経質にファウルを取る。相手と接触したら、がんばらずに倒れたほうが得なのではないかと思えるほどに、プレーが途切れる。ホーム側ゴール裏に近い位置で熊谷の負傷を目撃した鹿島サポからは、コンサドーレの選手がボールを持つだけで大ブーイングが沸き起こる。ちょっと異様な立ち上がりである。

9分、コンサドーレの最初のチャンスは、自陣右サイドでの西田のパスカットから。小倉-平間-和波とつないで左に出し、和波からゴール前中央の小倉へ。ゴールを背にしてパスを受けた小倉が振り向いたその瞬間、秋田が小倉の足を蹴り、小倉が倒れた。これで得た距離25メートルのFKを小倉が直接ねらったが、シュートは枠を大きくはずれた。

11分は鹿島のビッグチャンス(というよりもコンサドーレのミスによるピンチ)。左のアウグストがゴール前へ入れたアーリークロスに対し、コースに入るかと思った古川がとつぜん頭を引っ込めてスルーしてしまい、流れたボールを佐藤洋平がかろうじて指先に引っ掛けてCKに逃れた。

コンサドーレは、ボール支配率こそ高くないものの、マイボールになったときにはワンタッチ、ツータッチでボールを動かし続けた。それも、後ろへ逃げるのではなく、横あるいは前の方向へと、鹿島のプレスをかいくぐってパスをつないだ。そうするうちにプレスが甘くなったところで一気にゴールにいちばん近い選手へとロングボールを入れる。2節前のガンバ戦からやろうとしていることが、ようやく形になり始めていた。

15分には、自陣の深い位置から大森が出したロングボールを、小倉がバイシクルキックで裏へ出し、新居が抜けかかったところでFKを得た。ゴールほぼ正面25メートルと、キッカーさえいれば絶好の位置だったのだが、平間が直接ねらって大きくはずす。

18分、鹿島の波状攻撃。左サイドからアウグストが西田をかわしてセンタリング、柳沢と大森がもつれてこぼれたボールを野沢が正面からねらったが、シュートは古川の足に当たって救われた。21分にもアウグストが西田のタックルをかわして左サイドを突破。23分には、鹿島のクロスが右から左からとコンサドーレのゴール前に入ってくる。コンサドーレは、ビジュと古川が中心となり、それを必死クリアし続ける。24分、柳沢が青木とのワンツーで裏へ抜けるが(佐藤尽と古川が完全に裏をとられた)、佐藤洋平が飛び出してピンチを脱した。

さらに鹿島の攻勢は続く。33分、鹿島がボールを大きく左右に動かし続ける中で、古川がたまらずに野沢へ足の裏を見せたタックルを仕掛けてしまいイエローカード。鹿島は、これで得た右サイドのFKを野沢がゴール前へ入れ、頭一つ抜けた中田がボールの方向を変えてGK洋平の逆を突くきれいなヘディングシュートを放ったが、ポストに嫌われた。

それでも、コンサドーレは失点はしなかった。これは、コンサドーレの守備というよりも、鹿島の攻撃の問題であったように思う。FW登録のアウグストは、サイドバックとしての本性が出てしまうのか、どうしても左のタッチライン寄りにポジションをとることが多く、やはり左寄りでプレーしようとする中田や、オーバーラップしようとする石川とプレーゾーンが重なってしまう。一方で、ゴール前中央に残っているのは柳沢だけで、おとりになる選手がいないから、鹿島がいくらクロスを上げても最初に触るのはコンサドーレの選手ばかりで、なかなか決定的な場面にはならない。

38分、久々にコンサドーレのチャンス。左サイドで大森-平間-小倉と縦につなぎ、小倉のセンタリングにファーサイドの吉川が左足で合わせた。シュートは力なくGK曽ヶ端の正面に行ってしまったが、吉川がゴール前へ出てくるようになれば、コンサもチャンスが作れるようになる。この辺から、コンサドーレが早め早めにゴール前へロングボールを入れる場面が多くなってきた。

40分、鹿島は早くも2人目の選手交代で、アウグスト→長谷川。やはりFWは本職がやらないと無理か(と思ったのだが、アウグストは怪我だったことを試合後に知った)。

42分、自陣の中央でボールを持ったビジュから左に展開、平間-大森-和波とつなぎ、ドリブルで上がった和波がゴールラインの手前20メートルぐらいの位置から低いクロスを入れた。ゴール前中央で新居が西沢をつぶしたことも手伝って、ボールは鹿島のDFラインとGK曽ヶ端のちょうど中間に、きれいな弧を描くように通った。ファーサイドに詰めた小倉が軽く合わせたシュートは、曽ヶ端の体に当たってゴールへ。スタジアムが沈黙に包まれる。ボールは曽ヶ端の体とサイドネットの間に入っていたため、すぐそばにいた鹿島サポはともかく、逆サイドのゴール裏にいたコンササポには、小倉のシュートががゴールに入らずにサイドネットに当たったように見えたのだろう。小倉が笑顔で他の選手と抱き合ってようやく、コンササポから大歓声が起きた。

押されていたのに先制、それも前半終了間際という最高の時間帯の得点で、さあ、あとは後半の45分間をどう使うかだ…そう思っていたら、後半開始から1分30秒にしていきなり失点してしまった。ゴール前、柳沢がシュートを打ち損ねてこぼれたボールを、古川が洋平にバックパス、洋平はこれを処理しきれずに足に当てるのが精一杯で、そのクリアボール(というかほとんど跳ね返り)にふたたび柳沢が詰めてゴールに流し込んだ。ミスを見逃さずにきっちり決めた柳沢はほめていいが、その前に、古川はどうして洋平(=ゴールマウス)に返してしまったのか、逃げるなら枠の外に蹴ってCKにしてもよかったのではないか?

いずれにしても、これで、1点を守りきるというゲームプランは崩れてしまった。

52分、左の和波のクロスに中央で吉川がヘディングで合わせたが、シュートはクロスバーをわずかに超える。鹿島は、56分に中田、57分に野沢と立て続けにミドルシュート。吉川が上がっていく分だけマークが甘くなり、鹿島の中盤が自由に動けるようになっている。

しかし、先に2点目を奪ったのは、コンサだった。60分、GK佐藤洋平のロングキックを鹿島DFがクリア、拾った平間が右前方の小倉に出し、小倉がフェイントを入れながらドリブルでDFをかわし、右足で(!)シュート。曽ヶ端がはじいたボールは、詰めていた新居の脇を転がり、チャンスはついえたかに見えた。が、新居はこれを拾うと、エリア内でキープ。池内が新居の足元のボールを取ろうと足をかけ、新居が倒れたとき、レフェリーは池内のファウルを取った。PKをゲットした新居にコンサドーレの選手たちが飛びかかる。こんなふうに喜びが爆発した場面は、なんだかずいぶん久しぶりに見たような気がする。

61分、小倉がPKを決めた。これでふたたびコンサ1点のリードだ。

63分、鹿島の左サイドから中田がクロス、中央の長谷川がスルーして右から入ってきた青木がシュート。66分、エリアすぐ外、中央の長谷川に縦パスが入り、長谷川が振り向こうとするところを大森が体でブロックしてファウルを取られる。中田のFKは洋平がはじいたが、こぼれ球を青木がヘディングで押し出し、柳沢が足で押し込んだが、柳沢はオフサイド。68分、鹿島は3人目の選手交代、青木→ファビアーノ。そういえば池内はコンサで中盤をやっていたよなと思ったら、なんとファビアーノが右の攻撃的MFのポジションに入ってきた。

71分、鹿島が追いつく。ゴール前に入ってきたクロスをコンサドーレがクリアするも、今度は鹿島がサイドに振らずに縦に入れてきて、コンサドーレのマークがバラバラになってしまう。ルーズボールにいち早く反応した柳沢に対し、佐藤尽が追いかけたが、柳沢は佐藤尽が滑るのを待ってからねらいすましてシュートを放った。最初の失点はミスだったが、これは、柳沢が巧かったというよりほかない。

75分、コンサドーレは新居と和波を下げ、堀井とジャディウソンを入れた。

なおも鹿島の攻撃が続く。77分、石川のクロスを佐藤尽がクリア、これを中田がねらうがわずかに枠の外。80分、右サイドバックの池内が対角線上に出したロングボールを、オーバーラップした左サイドバックの石川がヘディングで折り返し、長谷川と柳沢が詰めるがコンサドーレがCKに逃れる。83分、本田がゴール正面25メートルからシュート。

85分、コンサドーレは、西田に代えて田渕を入れる。野沢が西田の裏へ走りこむことが多くなっていたから、それをケアするのか。これで3人目の交代だが、やはり交代で入ったジャディウソンにはいまだボールが渡っていない。

86分、88分と、鹿島のFKがゴール近くで続いたが、得点には至らず。91分(ロスタイム表示は2分)、ようやくジャディウソンがボールを持ち、自陣からドリブルでDFをかわし、堀井とのワンツーで中央へ入って小倉に預ける。小倉がDFと競ってこぼれたボールにジャディウソンが詰めたが一歩及ばず、クリアされてしまう。

運命は、延長戦に委ねられた。鹿島がゴールを決めれば、その瞬間にコンサドーレのJ2降格が決まってしまう。

延長に入って2分過ぎ、ジャディウソンにパスが渡ったところをファビアーノが引っ張り、ファビアーノにイエローカード。優勝を争っている鹿島からすれば最下位のコンサなどどうってことない相手ではないかと思うのだが、ジャディウソンに持たせることがいかに危険であるかを、鹿島はちゃんと知っている。逆説的だが、だからこそ、優勝を争うことができるのだろう。

94分、ジャディウソンが左サイドを突破し、コンサドーレがCKを得たがゴールはならず。やはりジャジが持てばチャンスになる。

98分、相手陣内でコンサボールのスローインだったが、小倉が足元にボールを収めきれず、長谷川-柳沢とつながれるが柳沢のシュートはサイドネット。

その直後、ビジュがレッドカードで一発退場。何があったのかは分からなかったが、さほど文句も言わずにすごすごと下がるビジュの姿を見て、何か確信犯的な行為があったことは理解できた(その後、報復によるものと知った)。

101分、ジャディウソンが池内の持っていたボールを奪いドリブルで攻め上がったが、ハーフウェイを超えてコースを左タッチライン際から中央へと変えたところで池内に追いつかれ、池内に後ろから引っ張られた。池内はイエローカードだが、これもピンチを未然に防ぐ鹿島の知恵なのだろう。残念ながら、こういう芸当は、コンサにはできない。このFKから、ゴール前でジャディウソンから小倉、ゴールを背にした小倉がDFに囲まれながらも振り向いて裏へ出し、ジャディウソンがシュートを放ったが、ボールはクロスバーのはるか上を通過していった。

ジャディウソンのシュートから1分もたっていなかった。鹿島がコンサ陣内に攻め込み、鹿島から見て左サイドで中田が縦に出したパスに対し、田渕が中途半端に足を出した(バックスタンドからは、田渕がGKに返そうとしたように見えた)。田渕の足に当たってこぼれたボールに、オーバーラップしていた石川が詰めた。石川が足に当てたボールは、コンササポの目の前で、飛び出した洋平の脇をころころと転がり、無人のゴールへと吸い込まれていった。

あのスローモーションのような光景は、今もまだ、脳裏に焼きついている。少なくとも次に昇格するまで、あのボールの転がりを忘れることはできないだろう。

かなり以前から覚悟していたから、4年前の室蘭で受けたようなショックはなかったが、それでも、いざ降格が現実になると、にわかには受け入れられなかった。受け入れられても消化できないといったほうがいいかもしれない。時間がたってみれば、最後は(まだシーズンは終わっていないが)美しく散ることができたと思うのだが、試合終了直後の時点では、そこまでの整理はできなかった。

選手が去った後、スタジアムには、コンササポの「鹿島アントラーズ!」「待ってろ茨城!」「かならず戻る!」のコールが響き渡った。そして、ホーム側ゴール裏からは「こーんさどーれ!」のコールが返ってきた。両者が真正面で対峙するサッカー専用スタジアムはいいなと思った。でも、来年は、ここには来られない。

コンササポは最後まで声を出し続けた

ホーム側を赤く染めた鹿島サポ 負けずに声援を送るコンササポ
まさにアウェー!迫力ある鹿島サポ J2降格決定にも温かく拍手で迎えるコンササポ