J2寸評 第13節:89分の男

 今季ホームゲーム初ナイターとなったコンサドーレ札幌は、甲府を迎えての試合。昨年は、ホームゲームが全てデーゲームで行われたので、実に二年ぶりのナイターゲームとなった。厚別名物の可動式照明車両も久しぶりの登場。
 試合の方は、コンサドーレが主導権を握り、甲府ゴールにせまるも、甲府も体を張ったディフェンスで最後のラインを割らせず、前半はお互い無得点。この日のカードは、平日開催とあって、他の試合も全て、19時キックオフ。ライバルチームの動向も気になるところだが、仙台-大宮が1-1となっている以外は0-0。45分終わった段階で、全チーム横並びのまま。
 先陣を切ったのは、札幌。後半3分、エメルソン選手が5試合連続ゴール。負けじと、浦和が湘南相手に後半9分、PKで1点先制。さらに、置いてけぼりは嫌だとばかりに、大分が水戸から後半12分に先制点をあげる。今節も上位陣が順当勝ちかと思われた後半17分、札幌は甲府の新加入菅野選手になんと同点ヘッドを決められる。試合がもつれはじめた厚別を尻目に、大分では、ホーム大分が、後半22、38分と着実に加点。浦和も後半39分に追加点を上げ、各チーム逃げ切りにはいる。試合が膠着状態に入ったのが、厚別と、仙台の仙台-大宮戦。点がはいったのは早かったが、その後同点になり、動かなくなった。
 延長が見え始めた、ロスタイム。札幌の頼れるロスタイム男、エメルソン選手が、深川選手からのセンタリングに反応して、頭で押し込み、試合を決めた。勝ち点をへずられること無く、3点を何とかゲット。二位を守った。
 浦和と大分は、そのまま逃げ切り。湘南は4連敗。仙台-大宮戦と新潟-鳥栖戦は延長戦へ。大宮はVゴール勝ちを納めたが、新潟-鳥栖は引き分けになった。上位陣が順当勝ちし、今節は順位の変動はない。
 エメルソン選手の活躍は特筆ものだが、この日の試合のゴールの記録も89分。前節での寸評でも89分の話をしたので、今日はちょっと詳しく、この89分の話を。Jリーグというか日本のサッカーでは、サッカーの試合は0分0秒に始まり、90分0秒びったりに終わることになっている。そのため、キックオフ後13秒にゴールが決まれば、0分にゴールがあったと記録される。また、90分0秒に試合が終わるのだから、90分30秒とかにゴールが決まることはあり得ない。だから90分というゴールという記録はない。じゃあ、ロスタイムは?ということになるのだが、ロスタイムは89分台に押し込められる。つまり、89分という記録にはロスタイムが含まれているのである。もちろん、従来の89分も含まれるのだが、その後、延々と続く、ロスタイム数分間の時間もこの89分に押し込まれているのである。まさに魔法の1分間。
 ちなみに、前半は45分きっかりに終わるから、前半のロスタイムの得点は、44分。また、45分のゴールという記録は、後半開始1分以内のゴールのこと。90分というゴールの記録があったら、それは、延長前半開始してすぐのゴールということである。ちなみに、ヨーロッパでは、記録は全て切り上げで、日本とは違う。キックオフすぐのゴールは1分。試合終了間際、ロスタイムのゴールなどは、90分。当然、45分という記録は前半に決まったゴールのことである。丁寧なところでは、45分+、90分+とかのようにロスタイムの意味を+などで表すこともある。
 とにもかくにも、不思議な時間89分。記録上は、ただの1分だが、現実の世界では、それを越える時間が過ぎており、しかも試合は佳境、それはそれは激しい攻防が繰り広げられている時間帯。両チームのサポーターの応援と悲鳴が入り乱れ、クライマックスの瞬間を迎えている。そんな魔法の時間帯が89分である。