[第2節]in高知春野:ベガルタ仙台戦

文・写真/大熊洋一

[観戦記] ファーストステージ第2節 vsベガルタ仙台
(2002/03/09(sat)13:00 高知県立春野運動公園陸上競技場)

試合終了からしばらくの間、同行者と口をきくのも億劫なほど、悔しくて、そして悲しかった。どうしてあんな気持ちになったのだろう?まるで、あのJ1参入決定戦でJ2降格が決定した直後のような気分だった。しばらく一人にしておいてくれ、今日の試合のことも、そうでもないことも、今はもう何も考えたくない-どっと疲れが押し寄せ、一種の虚脱状態に陥ってしまった。試合前、自分の中では、開幕戦から6日を経て、「このチームが熟成するにはまだ時間がかかる、5連敗までは覚悟しておこう、そこまでは我慢しよう」と気持ちの整理をつけたつもりだったのだが、心の底では「どうせ仙台なんて昇格チームだろ、勝てるよ、勝てる」と思っていたのかもしれない。

大雨に見舞われた昨年とは打って変わって、快晴の高知・春野。コートがいらないどころか、Tシャツでもいいんじゃないかと思うほどの暑さ。コンサドーレサポーターは昨年同様ゴール裏の2階席に多数、一方のベガルタサポーターはバックスタンド2階のアウェー側にそれなりの数。ただし、残念ながら、晴天にもかかわらず観客数は昨年より少し多いだけで、料金の高いメインスタンドはガラガラである。

[今季初登場のビッグフラッグ]

■メンバー

(コンサドーレ札幌)GK1佐藤、DF15森下、5マクサンドロ、22吉川、6大森、MF4今野、8ビジュ、10山瀬、13平間、FW9ロブソン、17小倉(R:GK21藤ヶ谷、DF26吉瀬、24奈良、MF7酒井、FW16堀井)

(ベガルタ仙台)GK1高橋、DF18森、6リカルド、4小村、30村田、MF27森保、8シルビーニョ、20福永、14岩本、FW13山下、9マルコス(R:GK16小針、DF5片野坂、MF7千葉、32山田、FW11藤吉)

開幕戦との違いは、小島の代わりに小倉が入ったことと、それに伴って生まれたリザーブの空席に初のベンチ入りとなる奈良が入ったこと。一方の仙台は勝利を収めた開幕戦と同じメンバー。村田の名前が呼ばれたときには札幌側のゴール裏からも拍手が起きていたが、まぁ、村田だからいいでしょう(でも、藤吉を「よしふじ」と紹介してしまったのはいただけませんねぇ…名前を間違えてはいけません)。

13時、コンサドーレのキックオフで試合開始。開始1分にして早くもマクサンドロがマルコスを裏のスペースへ走らせてしまい、ペナルティエリアの中で後ろから手を出してマルコスを倒し(マルコスが倒れ?)、どきりとさせられる。開幕戦で久保や藤本にいいように走られていたマクサンドロ、やはり裏へ抜ける選手のケアには大いに不安がある…。

5分、札幌が決定的チャンスを得る。ゴール前のクリアボールを受けた小倉が、ハーフウェイ付近から裏へふわっと浮かせたボールを送ると、仙台ディフェンダー3人を追い越してロブソンが抜け出した。左からペナルティエリアにドリブルで入ったロブソンは、追いすがるリカルドを振りきってシュート!が、惜しくもサイドネット。でも、これは開幕戦はなかった形。小倉が中盤で簡単にボールをさばいたことから生まれたプレーだが、この後も、小倉は守備でも無駄走りを厭わずに相手を追いかけまわし、また、攻撃時には自ら下がってポストとなったりスペースを見つけてシュートを打ったりと、昨年までの播戸のような獅子奮迅の活躍をみせてくれた。

仙台は、ゴールキックやディフェンダーからの長いボールをとにかくマルコスに当てる、という、きわめて分かりやすい攻撃。札幌は、マルコスに高いボールが入ってくると、マクサンドロと今野がはさみうちにして、マルコスに生きたボールを供給させない。マイボールになれば、山瀬と小倉を中心にワンタッチ、ツータッチでシンプルにボールをつなぎ、最後は裏へ出してロブソンを走らせる。前節と比べると各選手がずいぶんと生き生きとやっているといった印象で、前節でぼろぼろだった吉川も相手に積極的に当たりにいくなど(勢いあまって23分にはイエローカードをもらってしまったが)、チーム全体に勢いが感じられるようになってきた。

16分、右から森下がゴール前へアーリークロス、ロブソンがつぶれてその外側でフリーとなった小倉がシュート、惜しくもサイドネット。27分、中盤でビジュのカットから今野が裏のスペースへスルーパスを出し、小倉が追いつくもシュートは打ち切れず。しかし、いずれもじつに惜しいプレーの連続で、そのうち点が入るだろう、今日は大丈夫だろうと、かなり楽観して見ていられた。これは、一つには中盤でゲームを作れる小倉の存在、そしてもう一つには、ビジュがかなり高い位置をキープし続けたことによるところが大きかったと思う。ビジュが高いポジションをとっているので少し後ろの今野のポジションも高くなり、最終ラインもそれに引っ張られるような形で高い位置を保ち続けた。32分には味方のクリアボールを拾ったビジュが仙台の選手3人に囲まれながらもドリブルでぐいぐいと前進、思わずマルコスが後ろから手を出してイエローカード。

しかし、35分過ぎからは、仙台がボールを持つ時間が長くなり、札幌は自陣に釘づけにされてしまう。仙台はボールを持っているだけで攻撃に厚みや工夫がなく、けっして怖さはないのだが、それでも、これだけ長い間ボールを持たれていれば、どうしても最終ラインがずるずると下がってしまう。小倉は前線でよく相手を追いかけているのだが、山瀬や平間は、攻撃の意識が強すぎるためか、どちらかといえば相手を背後から追いかけるような形が多くなってしまい、結果、守備の負担はすべてビジュと今野のところより後ろにかかってしまう。

後半に入っても、仙台の攻撃が続く。5分、左サイド(札幌の右サイド)を山下が突破、マクサンドロが対応するも簡単にかわされてクロスを上げられてしまい、ファーサイドに後方から猛烈な勢いで走りこんできた福永がシュート、わずかにゴール左にはずれる。札幌がゴールに迫ったのは、11分にロブソンが抜け出して右からシュートを放つもGKに阻まれた場面と、13分、山瀬の右からのマイナスのセンタリングをフリーで受けた小倉が相手をかわしてシュートを放つもリカルドにブロックされた場面ぐらい(まぁ、いずれも惜しかったのではあるが)。

後半20分を過ぎると、いよいよもって札幌の最終ラインが上がらなくなってきた。前線で小倉やロブソンにボールが入っている間にどんどん最終ラインを上げていかなければコンパクトな布陣にはならないはずなのに、攻め込まれる時間が長くなっているためか、最終ラインの高さがまったく変わらない。それでも失点せずにいられたのは、今野とビジュが激しい当たりで相手ボールをつぶし続けたからで、とりわけ今野の運動量には目を見張るものがあった。だからこそ、最終ラインがもう少しがんばってほしかったのだが…。

27分、その上がらない最終ラインがついに破られる。仙台が左前方へ出した長いボールに対し、今野-ビジュのラインと最終ラインとの間があきすぎた札幌は誰もカットに入ることができず、左サイドでフリーの岩本に簡単にボールが渡ってしまう。岩本が中央へ折り返したボールになんとマクサンドロと吉川が同じように頭を出してしまい、こぼれたボールを山下が蹴りこんだ。仙台先制。山下の抑えたシュートはお見事だったが、2人いるはずのセンターバックが重なってしまって1人しかいないのと同じ状態になってしまったのはあまりにもお粗末だった。もっとも、ここは、それ以上に、岩本にフリーでロングボールが入ってしまったことのほうが問題だと思う。前半の途中までのような高いラインが保てていれば、岩本がオフサイドになるか、誰もボールに追いつかずにスローインになっていたか、の、どちらかだっただろう。

30分、最終ラインの吉川が縦に長いボールを入れると、これを受けた平間がうまくスペースを見つけながらドリブルで左から中へと入り、ゴール前やや右で待つロブソンにボールを預けた。ロブソンはゴールを背にしたまま柔らかいパスを出し、これを小倉の右足がジャストミート!スタンドに「バシッ!」という音が響き渡ったほどの強烈なミドルシュートだったが、仙台GK高橋が横っとびではじき出した。

33分、運動量の落ちてきた今野に代えて奈良(奈良は公式戦初出場)。35分、小倉が裏へ出しロブソンがリカルドと競りながらシュートもGK正面。38分、森下に代えて堀井を入れると、最終ラインを3枚にして、前線を左にロブソン、中央に小倉、右に堀井の3トップにした…が、これは完全に逆効果。3トップは前線で横一線に張ったままで、中盤との距離が開きすぎて孤立状態。焦りからか、中盤から後ろの選手も、せっかくのマイボールを無造作に前方へ蹴りだすばかりで、パスがまったくつながらない。ロスタイムが3分と表示されても、なんだかまったく得点の入る気がしない。自分の時計で48分過ぎ、仙台が自陣深くの右サイドでクリアしたボールが山瀬の足元に入り、山瀬と平間がシュートコースを探して動きまわるもゴール前をすばやく固めた仙台の壁は崩せず、平間が相手ディフェンダーの間から放ったシュートは力なくGK正面。そしてGKからボールが蹴りだされるとタイムアップ。連敗。小倉は下を向き、ビジュは座り込んだまま動かない…。

ゴール裏へ挨拶に行った選手たちに浴びせられたのは、いつもの温かいコンサドーレコールではなく、ブーイングだった。拍手も、コンサドーレコールも、まったくなし。こんなことは、あの99年、岡田監督1年目のJ2以来ではないだろうか?

ぼくは、今日の試合は、ブーイングをするほどのものではなかったと思う。小倉が入ったことで多少攻撃のアイデアが生まれるようになり、前節ではなぜか離れたところで相手選手を見ているばかりだったDF陣も今日はどんどん相手の足元へ飛び込んでいった。前節の広島があまりにもひどすぎたからかもしれないが、今日は、確実に、進歩が感じられたと思う。まだ新しいチームは始動したばかり、播戸もウィルも抜けてしまったチームなのだから、結果が出るまでに多少の時間がかかるのはやむをえない。

北海道へ戻るまでの5試合は、我慢してみようと思う。吉川とマクサンドロがもう少し試合経験を積み、小倉とロブソンのコンビネーションがもう少し高まっていけば、昨年よりも強いチームが作れると思う。いや、もしかすると、だまされているのかもしれないけれど、もうちょっとの間、だまされていてもいいかなと思っている。次のジュビロ戦も、そういう観点で-かならずしも勝敗にこだわることなく-見てみようと思う。

とにかく、柱谷監督、メンバーやフォーメーションをいじるのだけはやめてください。選手の皆さんも、結果が出なくてつらいでしょうけれど、もう少しの間、監督を信じてやってみてください。

(3月9日23時20分、高知にて記)


地元の子供たちによるイベント.コンサドールズはいなくとも、ドーレくんは踊ってました(^^) 仙台サポーターはバックスタンドのA自由席に
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