J2寸評 第34節:最後の戦いがついに始まる

 ついに最後の戦いが始まった。今季最後の四巡目。これで各チームとの対戦は終わる。来年は各チーム選手の入れ替えなどで模様替えするだろうから、泣いても笑ってもこれが最後の対戦となる。第四クール最初の相手はベガルタ仙台。ホーム厚別に迎えての試合。今後、浦和、大分との直接対決が続くだけになんとして勝ちをおさめておきたいところ。
 試合の方は、甲府戦に続いて雨の試合となった。悪コンディションながら前半39分にMF山瀬功治選手のゴールが決まり先制。試合の方は一方的展開というわけではなかったが、要所をしっかり押さえ、仙台のシュートはわずか二本。 結局このまま、1-0で逃げ切った。またこの日は後半途中から、新加入の清水選手も出場した。
 これで、仙台との今季対戦成績は四連勝。勝ち点12を稼がしてもらった。今季の対戦日程では、仙台戦のあとに必ず、浦和、大分と続く。リーグ戦の場合、連敗すると勝ち点6を一気に失うため、あっというまに順位が引き離されたり詰められたりする。岡田監督はシーズン始め、浦和、大分に半分は負けると読んでいただけに、連敗(最悪3連敗)を避けるためには、この仙台戦は絶対落とせないという位置づけで戦っていたはず。選手にしても、浦和、大分戦に向けて、モチベーションが上がっていく時期にあたり、仙台は常にチームの集中力が高い時期のコンサと戦うことになる。この浦和、大分戦のあとの山形戦で気が抜けがちになることが多かったのに比べると、対戦カード運の悪いのは仙台で、四回の対戦が終わった今、ちょっと気の毒のような気もする。でも、逆に言うと、大一番となる浦和、大分戦の直前の試合を落とすことなく連戦を迎えたことが好成績に繋がった面もあるので、仙台様々でもある。
 相手がよくわからないうちにびっくり箱や勢いで乗り切ることが出来た一巡目。二巡目では、対戦相手が研究をし対策を練ってくるため、総合的なチーム力が必要と言われた。さらに対策を練りつつ、各チームが補強などで、建て直しをはかる三巡目は、夏場という暑さとも戦いながら、チームとしての戦い方を練り上げる時期。とすれば四巡目は?。四巡目は、今季の総決算。チームがこれまで積み上げたものを吐き出すクールであり、内容よりも結果であり、次に繋がるとか考えるよりも、今その一瞬一瞬が大事。シーズン途中なら、次の対戦があるからと、そんな考え方も出来るが、4巡目はこれで終わりで続きはない。もちろん、来季に繋がる戦い方が必要とかいう考えもある。しかしたった数週間の中休みでチームの調子ががらっと変わるのがサッカー。数ヶ月もオフが入る上に、選手も入れ替わるわけで、そんなことを考えながら試合をしてもあまり有効でないと個人的には思う。来季に繋がる戦い方というのは、シーズン終盤にだけやるものではなく、何年も通じてクラブ全体(ユースからトップチームまで通して)でやるべきものである。
 また、シーズン終盤は監督の采配がものをいう時でもある。シーズンも終盤になってくると、累積警告の積み上げ、怪我による脱落など、必ずしもベストメンバーがくめなくなってくる。と言うよりはベストメンバーで戦える試合の方が少ないかもしれない。控えの選手を含め、多くの選手が出たり引っ込んだりする巡目である。その時にいかにチーム力を落とさず戦えるか、選手起用のあやが明暗を分ける。そして優勝や昇格を狙うチームには、最後の瞬間に向かってトーナメントのような戦いが続くのが四巡目。全勝できればいいけれど、そうはうまくはいかない。シーズン終了時に勝ち点わずか1の差をつけるため、詰め将棋のような計算が必要になってくる。どこで勝負に行くのか、どこまで我慢するのか。試合終了間際に負けていれば、リスクを犯したプレーが見られる。チーム全体のものもあれば、個々の選手のものもある。正当なものもあれば、ずるいものもある。当たればいいが、はずれるときもある。でも、何かが起きるのが終盤で、この時間帯は目が離せない。終盤に弱いチームは、危機管理能力というか、そういった通常の時間帯のプレーでは見られないプレーに対応する能力、経験が不足しているといえる。
 90分の終盤に当たるのが、シーズンではこれから始まる4巡目。ここでしかみられないような奇手妙手が見られることもある。そして、それをどこで仕掛けるのか。当然動かないのもかけひきの一つである。シーズンが終わったときには真っ白な灰になって何も残っていなくても良く、全てをこの時期に、使い切るつもりで戦う。監督インタビューなどでは、どこの監督も、『一戦一戦、目の前の試合に全力を尽くし勝つだけです』と口をそろえて話すが、実際の頭の中では、権謀ごうごう、緻密な計算が渦巻いている。どこの監督も実は狸親父、そんな巡目が第四クールである。だからこそシーズン終盤のベンチワークは特におもしろいし、みごたえがある。
 さて、今節他会場の結果は、二位浦和は前節連敗を止めた甲府に1-0ながらしぶとく勝ち、三位大分もここまで4連勝と好調の鳥栖を危なげなく下した。
 札幌は、いよいよ次節、アウェイ駒場で浦和と。ここで勝利を収めれば、大きく昇格に前進する。いかなるドラマが待ち受けるのか。ついに第四クールが始まった。