J2寸評 第25節:夏の天王山に勝つ

 対浦和戦第3戦目。浦和を初めてホーム厚別に迎えた(今季初戦のホームは室蘭で、98年Jリーグ時代は季節的な問題で仙台でホームを戦っている)。前売りは発売開始二週間で完売。指定席は二時間で完売したと聞く。試合日1ヶ月も前の完売は初めてのこと。この日、幸運なプラチナチケットを手に入れたサポーターで埋まったスタジアム。観客動員数は1万9825人、最多数記録を更新した。
 夏の大一番と位置づけた両チームのサポーター。お互いのサポーターの意地もぶつかった両ゴール裏でもあった。浦和サポーターは、アウェイサポとしては、おそらく厚別で最多の約2000人が、はるばる津軽海峡を越えてアウェイゴール裏に集結。試合前に発煙筒もたかれ、きな臭い浦和側に対し、札幌側はいつものバックスタンドのビッグフラッグに加え、ホームゴール裏5千人全員が参加したナンバー12の人文字で対抗。これでスタンドの盛り上がりは一気に“我らがコンサドーレ”へ。そんな中、キックオフの笛が吹かれた。
 ピッチの上でも、選手のモチベーションは非常に高く。はらはらドキドキの試合展開。コンサに相性の良いクビッツァ選手と岡野選手のツートップが攻撃を仕掛ければ、コンサドーレのエースエメルソン選手には、この日センターバックに入った路木選手がマンマークに入り、仕事をさせない。ちなみに浦和は小野選手が怪我で欠場。札幌は、エメルソン、播戸の快足FWに左MF伊藤、アウミールを加え左サイドを中心に攻撃を仕掛ける。守っては中盤の底、ビジュ、野々村が効果的なプレスをかけ、ポスト役のクビッツァ選手には森選手が身長差をものともせず、マークについた。
 試合が動いたのは前半39分、ゴール前に放り込まれたボールにクビッツァ選手が反応、ワントラップ後、頭で押し込んだ。。コンサ守備陣、オフサイドをかけ損なったような感じ。浦和、3戦目にしてついに先制点を奪う。浦和にしてみれば、初めてプラン通りの展開で主導権を握れる試合となった。このまま、前半終了、後半へ。
 さて後半、コンサドーレの選手達に岡田監督からの指示がでたようで、サイドチェンジを多用するようになる。コンサドーレの攻撃が左からが多いことを意識して、浦和の守備陣も同じサイドに固まる傾向があってのことだったが、この日の試合では、右サイドの田渕選手は結構フリーでいることが多かった。この指示がでた後半は、トップでは路木選手の厳しいマークで仕事が出来なかったエメルソンが2列目まで下がった上で、サイドに開き起点になったりとおもしろい動きを見せる。後半28分、左サイドのエメルソン選手から大きく右サイドのフリーの田渕選手に大きなパスがピンポイントで繋がる。ここからの5秒間の田渕はすごかった。寄せてくる二人の浦和の選手の間をドリブルで抜け、更にDFをフェイントでかわし、ゴールへ向かって突進。四人目のタックルが入る前に放ったシュートは、ゴール正面から見事に浦和ゴール右隅に突き刺さった。四人の選手をかわしての15メートルあまりのドリブルシュート。これは見事と言うしかないゴール。田渕選手のスーパーゴールで同点。さらに、後半41分、今度は左サイド浦和陣内で浦和選手の横パスをインターセプトしたDF大森選手がそのままドリブルでオーバーラップ。ペトロヴィッチ選手のマークを振り切り、ゴール前に直進。隙間のない左サイドからGKの肩口をかすめるシュートを直接たたき込んだ。大森選手、Jリーグ公式戦初ゴール。記念すべきゴールは、浦和を突き放す逆転弾。
 この2点を守りきり、2-1で大きな勝利を収めた。対浦和はこれで2勝1分、今季の勝ち越しを決めると共に大きなアドバンテージをえた。また16連勝を記録し、鹿島の持つJリーグ記録に並んだ。
 この日、ゴールを決めたのは、田渕、大森の両サイドバック。実際は、コンサドーレは非対称の3-5-2のシステムを取っているので、これに従うと両人は両サイドバックではないのだが、4バックスに変更になったときは両サイドバックになるし、今日の活躍はまさに近代的サイドバックの動き。シーズンもすすみ、対戦も回を重ねると相手チームの研究も進み、エースやキープレイヤーには当然マークがつくし、なかなか活躍が続くわけではない。そんなとき、替わりの選手が如何に活躍できるかが大事になる。第1クールはまだお互い手探りのような感じの時で、勢いで勝ち進むことが可能だが、第2クール第3クールと対戦相手の研究が進むに連れて、第2、第3の選手がでてきて活躍できるかどうかが大事。一発勝負のトーナメントがチームの勢いで勝敗が決まるのに比べ、何回も対戦するリーグ戦がチームの総合力が大事と言われる所以である。
 ここ一番の試合で活躍するからエースなのだが、そんなエースが抑えられても、違う選手が活躍する。ホントに今年のコンサドーレは良いチームに仕上がっている。