[第16節]in帯広:水戸ホーリーホック戦(写真付)

『二上英樹の観戦記』

一月近い中休みが終わって、いよいよ今日からJFL後半戦が開幕。世間では、Jリーグ2ndステージがすでに始まり、W杯二次予選が一箇所集中開催からホーム&アウェイ方式に変更になりました。日本で4試合行われるため、そのチケット取りに奔走するサッカーファンも多い今日このごろです。。
さて、今日の相手は、シーズン開幕戦と同じく水戸ホーリーホック。この大事な後半戦開幕戦は、北海道は帯広でのホームゲーム。思い起こせば、昨年ここで同じく後半戦、東京ガス相手に道内初黒星を喫すると共に、ホームアイランド無敗神話を打ち砕かれてしまった因縁の地であります(厚別の無敗神話はいまだに生き続けています)。この帯広という所は、札幌からJR特急で三時間ほど離れた道央の都市。お金と暇のない私は、そういうわけで、札幌の自宅でのテレビ観戦となりました。
札幌の先発は以下の通り。鼠径部ヘルニアの手術でリタイア中の村田に代わって、黄川田が入った以外は、いつものメンバー。フォーメーションの方も3-5-2。

FW:山橋、バルデス
MF:黄川田、マラドーナ、太田、後藤、田渕
DF:中吉、ペレイラ、渡辺
GK:ディド
最近では、格下の相手には負ける気のしなくなった、コンサドーレの試合観戦(楽勝楽勝と思ってしまうことは、勝負事では厳禁な事なんですけど、つい思ってしまう)。この日の試合も、勝てばいいというのではなく、どのような試合を展開するかという点に注目。
さて、試合の方は、開始からいきなりコンサペース。前半5分、左サイドからのコーナーキック(CK)、蹴るのはマラドーナ。きれいに弧を描いてゴール正面に飛んできたボールに合わせたのは、バルデス。競り合いながらも、頭でばっちり合わせたボールは、ゴールネットに見事につきささります。
JFL後半戦の初ゴールに、スタジアムの歓声がまだ消えない前半8分。今度は、左サイドから、ペナルティエリアのすぐ外辺りをドリブルで横に走るマラドーナ。そのまま、右サイドに走り込んできた後藤にパス。受け取った後藤は、ゴールライン付近から、そのボールを再びマラドーナに戻し、マラドーナ、ゴール正面から左隅に蹴り込みます。この時、バルデスがゴール前に詰めており、水戸ディフェンス陣はみんな、バルデスに気を取られ、二列目にいたマラドーナはフリーになっていました。右からのセンタリングをバルデスにほうり込まず、二列目のマラドーナに合わせた、後藤のうまさの光ったアシストでした。
スロースターターと呼ばれたコンサドーレも、10節すぎの前半戦終盤から、試合開始早々から攻撃を仕掛けることが多くなりました。今日も、開始から、ばんばん攻撃をしかけて大量得点をねらうのか、と思ったとたん、なんか、コンサディフェンス陣がぎくしゃくし始める。水戸は、ワントップでカウンターねらいで来るも、コンサ守備陣が、何故か、簡単に抜かれて、シュートまで持っていかれてしまう。そうこうしているうちの、前半19分、右からのセンタリングをほうり込まれる。これに、水戸の尾崎が合わせて、コンサDF陣と競り合いながらもヘッドを放つ。ゴール左側に転がったボールは、ポストにあたって、再び、ゴール正面へ。これに尾崎、倒れながらも体ごと押し込んで、ゴール。コンサ後半戦初失点。2-1。
水戸は、JFL初勝利を、第15節で川崎Fからあげている。こういうチームがジャイアントキリングをするときは、こういう泥臭いゴールがきまるような時。まさか、コンサも、という悪い予感が。それでなくても、コンサドーレは、黄川田が左サイドに入っているものの、まだ、守備がおぼつかない。それをフォローするためか、今日の前半のペレイラ、本来のゴール正面のリベロの位置から、左サイドバックの位置にまで上がっていることが多く見られました。黄川田のフォローにまわっていたという見方もできますが、そこから攻撃参加も頻繁に見せていましたから、黄川田に、ウィングバックの動き方はこういうもんだと、実戦中で教えていたような気も、ふとしてしまいました(そんなことは、本当はないのでしょうけれど)。
水戸に喫した失点は、コンサドーレの油断からのようだったようで、その後、水戸のペースになることなく、ゲームは進みます。そして、前半36分、中央から右サイドの田渕にマラドーナがパス。これを田渕がファーサイドにいたバルデスにセンタリング。バルデス、あまり良い態勢でないものの、頭でゴールに押し込みます。これで、3-1。ちょっと、安心といったところでしょうか。このまま、前半終了。

こういう、試合展開(試合開始しばらくはコンサペースも、途中油断から失点を喫する)の時は、大体、フェルナンデス監督の雷が、ハーフタイムで落ちるもの。そして、どうなるかというと、後半が始まると同時に、コンサドーレの猛ラッシュが始まります。この日の試合も、あにはからんや、その通り。後半8分、右サイドからのコーナーキック。蹴るのはマラドーナ。蹴ったボールは、ニアサイドの渡辺へ、渡辺の頭でコースを代えられたボールは、そのままゴール正面へ。そこに走り込んできたのはバルデス。足で蹴り込み、今季四度目となるハトとリックを達成します。
そして続く、後半11分。センターライン付近でボールをキープマラドーナ。その時、左サイドにぽっかり大きなスペースが。そこに走り込んできたのが太田。マラドーナの後ろの位置から、40mほどを駆け上がってきた太田に、マラドーナからのループパスが、きれいに繋がります。太田、水戸DFと競り合いながらもぬけだし、キーパーをよく見て、ゴール右隅に技ありのシュートを決めます。太田、今季うれしい初ゴール。
このあと、20分ごろに山橋と吉原が交代。30分ごろには、中吉と冨樫が交代。40分ごろには、黄川田と浅沼が交代。浅沼は右サイドに入り、右の田渕が左サイドに入ります。こういう選手起用をする所を見ると、フェルナンデス監督、まだ、黄川田起用を迷っているのかな、と思ってしまいます。
試合の方は、5点目を取ってから、また五分五分のペースに。前半と同じような展開となってきました。それでも、後半42分。右サイドからのコーナーキック。今度蹴るのは、後藤。蹴ったボールは、バルデスの頭に、きっちりと地面に叩きつけられたボールは、ゴール正面からゴールにつきささります。これで、6-1。コンサドーレの一試合最高得点記録に並びました(記録は、【今季第13節】デンソー戦の6-1)。記録更新かと思われたものの、試合の方は、このまま終了。

得点結果上では、快勝の6-1で後期開幕戦を飾りました。この日、後期開幕戦だから、内容はどうであれ、勝つことが大切なんでしょうが、どうしても、20節から始まる、上位陣との対戦に思いがいってしまう。今日のような試合をしているようでは、危ないといわざるをえない。とりわけ、試合途中から、DF陣がぎくしゃくし始め、試合のペースを水戸にとられそうになった事は、非常にまずいと思う。
この日は、大量得点で快勝したが、強いチームにあたったときに、同じように取れるわけでない(この日の水戸DF陣、ゴール前でバルデスをフリーにすること多く、こんな事が上位陣との試合で見られるとは思えない)。コンサドーレの場合、その攻撃力に目が行ってしまうが、その攻撃力も、JFL一の守備陣の頑張りがあるからである(失点も一番少ない)。サッカーの場合、攻撃は最大の防御なのではなく、最高の防御があって思い切った攻撃ができるのである。カウンターに耐えられる守備力、システマチックなディフェンスからのDFのオーバーラップによる攻撃参加。これらがあって、はじめて前線の攻撃力が最大限に発揮されるのである。今日のコンサドーレのDF陣は、残念ながら、最高の状態とは言い難い。黄川田には悪いが、村田が抜けた穴は、思ったより大きいといわざるを得ない。3-5-2の、DF陣の動きは、4-4-2に比べると難しいといわれる(4-4-2の方が、ラインが安定するとよく言われる)。黄川田にとっては、FWからのコンバートだけに、きついとは思う。現在の彼の状態は、守備がうまく行かず、持ち前の攻撃力も、それ程発揮されていない。ただし、彼にとって幸いな事は、今年のコンサドーレのチーム力は、下位チームに比べ抜きん出ている。そのため、下位チーム相手には、新たな選手起用をおこない、選手を育てるという余裕がある(現場では、そんな余裕はないと、きっと言うだろうが)。このチャンスを生かして、大化けすれば、黄川田が先発を奪うことも充分ありうる(守備が安定すれば、攻撃力は黄川田の方が村田よりあると個人的には思っている)。チャンスは、20節の川崎F戦の前までである。

観戦記で、他チームの様子を述べるのは珍しいことなんだけれども、後半戦開幕ということで、少し触れたいと思います。中休み中、一番多い補強を行った、川崎Fは、ジャトコとの試合。早速、野口や長谷部が出場し、野口1点、長谷部3点ハットトリックの大活躍で、6-0と快勝。東京ガスは、福島との試合。こちらは2-1で順当勝ち。本田技研は、上位陣を食ってしまうチームの筆頭甲府との試合。延長に持ち込まれながらも、気力でVゴール勝ちを本田は拾う。こうしてみると、やはり川崎の補強による、チーム力アップが顕著の様な気がするのは、気のせいとはいえないだろう。いきなり、野口、長谷部が出場したのは、うまい補強をおこなったという見方と、川崎Fの選手層が薄いという見方との、二つの見方があるが、コンサを脅かすチームの筆頭であることには違いない。
コンサも、石塚の起用法と、村田の復帰が、20節の対川崎F戦に大きな影響を与えるような気がする。2人とも、前日おこなわれたBチームの試合に出場。石塚はフィジカル面では、いつでもトップチームで出られるほど鍛えてあるし(V川崎もシーズン中なんだからあたりまえか)、村田の復帰も早そうである(うわさでは甲府戦辺りで出場か?、個人的には無理をせずしっかり直してから出てきてもらいたいが)。フェルナンデス監督の起用法が注目される。

この日は、バルデス今季4度目のハットトリックや、太田の今季初ゴールなどがありました。記録絡みの話題のついでに、現在、個人記録のリーチがかかっている人を紹介。バルデスは、この試合までに、JFL95得点を記録。この日、5点取れば、100得点となったわけですが、4得点で99得点。あと1点で、100得点です。また、田渕は、この日の試合で、JFL試合出場99試合を達成。あと一試合で100試合となります。二つとも、次節福島戦で達成される可能性は大。札幌厚別での試合ですので、是非見に行きましょう。

(以上記事:二上英樹)


選手入場:試合開始前、スタンド下で、待機するコンサ選手達。 (写真:谷口 恭さん)
整列:試合開始前、ピッチに整列した選手達。左側がコンサドーレの選手達(赤色)、右側がホーリーホックの選手達(白色)。 (写真:谷口 恭さん)
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