[第6節]in札幌ドーム:ジュビロ磐田戦

文/武石淳宏、写真/ワナダン本舗・中村智嗣

ナイスゲーム! 前半に先制していれば・・・

9月29日、札幌ドームにジュビロ磐田を迎えての2ndステージ第6節。1stステージの覇者を苦しめながらも、最後はゴンにやられてVゴール負けを喫する。もう後がないコンサにとってはたとえ相手がジュビロでも結果が欲しかったが、またしても無惨な結末が・・・。完膚無きまでやられたのならまだあきらめもつくけど、この敗戦は何ともやるせない。延長前半あっけなくゲームが終わってしまい、しばし呆然としてしまった。運も味方してくれて勝機はあっただけに残念。選手たちはよく戦ったし、山瀬、今野を欠きながらここまでやって負けたのなら仕方ないと思う。チームの置かれた状況を考えたら勝ち点0には何の意味もないが、誰も責められない負けもあると思った。

【コンサスタメン】
・GK 洋平
・DF 尽、ビジュ、大森
・MF 酒井、森下、和波、小倉、平間
・FW 曽田、岳也
(リザーブ・GK 井上・MF ジャジ、西田・FW バーヤック、磯山)

【ジュビロスタメン】
・GK 山本
・DF 鈴木、田中、山西
・MF 西、福西、服部、金沢、藤田
・FW 高原、中山
(リザーブ・GK ヴァンズワム・DF 大岩・MF 河村、金・FW 川口)

ホントにうらやましいメンツだ。ジュビロよりマシなのはGKくらいか。さて、窮鼠猫を噛むじゃないけど、失うものが何もないコンサドーレは最初からパワー全開、果敢に王者に立ち向かう。その戦い方は実にシンプルで明確だった。ロングボールを曽田にあて、堀井や平間が前線をかき回す。積極的なプレスが効き、ルーズボールを奪いリズムをつかんだ。トップ下に入った小倉は前線にいいボールを供給し、中盤としてもセンスを感じさせてくれた。キーマンとなったのは久しぶりに先発したMF平間で、鋭い動きでジュビロDFを翻弄、左サイドを我が物顔で走り回っていた。彼のポジショニングがいいのかジュビロのマークが甘いのか、前線でちょこまか動く平間はジュビロゴールを脅かし続ける。素晴らしい動きに今までの平間は何だったのか?と思ってしまった。ここまでやってくれたら山瀬の穴なんて簡単に埋まっておつりがくるというものだ。ジュビロも初めてのドームでやりにくかったのか、序盤はコンサドーレが主導権を握るという誰も予想しなかった展開となる。

前半、曽田をターゲットにしたロングボール攻撃が単調に陥らずジュビロDFを混乱させたのは、平間の目を疑うような動きに加えサイド攻撃が機能していたからだ。小倉もうまくボールを散らし、平間が左サイドを疾走する姿にワクワクした。久しぶりにゴールの臭いが漂うコンサドーレの攻勢にドームは大いに沸く。惜しむらくはジュビロDFが平間をつかまえきれていないうちに先制していれば、と悔やまれる。平間は全く素晴らしかった。前半10分くらいだったか、ドリブルとワンツーから切れ込み、DFに囲まれながらもボールをキープし続けシュートを放ったシーンは全く圧巻!あのポスト直撃弾が決まっていればこのゲームはコンサドーレのものだった。(かもしれない。)

そんな攻勢をボランチ森下が献身的な動きで支えていた。以前からビジュ、森下のボランチに不満を感じていたけど、この日の森下は裏方に徹し地味にジュビロの攻撃の芽を摘む。前半藤田が前に行けず、あまり仕事ができなかったのは森下の頑張りがあったからじゃないだろうか。スタメンを見た時はどうして松川を使わないのかと思ったけど、ボールの捌きは下がり目の小倉に任せ、森下はひたすら汗かき役に徹するという作戦で、これが実にうまく決まっていた。ボランチとしてはパスにセンスが感じられない(失礼!)けれど、汗かき役に徹すればキャプテン板長は実に渋く輝く。

そして張監督になってみんなが驚いたビジュのリベロ起用だったが、この日も3バックの真ん中にはビジュがいた。見る方も落ち着かなかったが、彼はよくやっていた。ラインコントロ-ルは安定しないものの、尽、大森のハードマークにビジュのカバーがうまくかみ合い決して悪くなかった。リベロなんて言うから違和感があるのであってスィーパーと思えばいい。実際、カバーリングのスピードは先生よりいいんじゃないだろうか。ただ、どう考えても彼はCBではない。見てる分にはそれなりに楽しめたけど、ポジショニングや判断のまずさを持ち前の身体能力でカバーしているだけ、とも言える。

一方、前節高原の爆発で大勝、楽勝ムードで札幌に乗り込んだジュビロ。キレキレの平間に手を焼き、最下位チームの思わぬ攻勢に、首位を走る強豪も少々あわてていた。前半は最後まで平間に対応できず、結果論だが、コンサとすればやはり前半がポイントだった。鈴木秀人は身体も強く安定したいいDFなのに、ポジショニングが悪いのか、サイドを平間にいいように破られる。平間のポジショニングが程良く中途半端で、福西もマークにつききれず、ジュビロDFはマジで混乱したのではないだろうか。攻撃のキーマン藤田も前に飛び出すいつもの動きがなく、金沢も酒井がよく抑えていた。時にゴン、高原が強引にチャンスメイクするものの、いつものパス回しは見られず、ジュビロらしさは影を潜めていた。コンサドーレは攻める姿勢をキープし、DFも集中が切れず、大方の予想を裏切り前半を0-0で終える。

このところテレビでも空席が目立っていたドームも、この日は3万を越える入りとなった。コンサとすれば残留は絶望的なうえに、相手はまず勝てそうにないジュビロ。観戦のモチベーションは下がるかと思いきや、ファンの出足は好調だった。もうしばらくジュビロ戦も観られないから、ということか?ハーフタイム、予想外の健闘に後半の戦いを楽しみにするような雰囲気がスタジアムに漂う。「この調子でいけば勝てるかもしれない」という期待とともに、「ジュビロがこのまま引き下がるわけがないよなぁ」と不安も沸く。

その不安は的中し、後半本気モードに入ったジュビロは高い位置で積極的にプレスをかけ始めペースを握る。コンサドーレは自陣に押し込められ曽田が前線で孤立、さっぱり攻撃の形が作れなくなってしまった。前半よくやっていた森下も福西、服部が攻撃参加し始めるとアップアップで、平間も守備に回る時間が増えてくる。前半はらしくなかったが、後半に入るといつものジュビロに戻っていて、この辺はさすが。コンサドーレは決定的なチャンスを続けて作られるようになり、15分、堀井に代えてジャジを投入、流れを引き戻しにかかる。このタイミングでジャジ投入は非常によい!と思ったが、残念ながらジャジはいつものキレが全くない。左サイドにジャジが入り和波は森下と並びボランチ、平間と曽田がFWという布陣になるが、どうでもいいけど、どーして和波がボランチなんだろう!?今野がいない状況では仕方ないのかもしれないが、ちょっと違うんじゃないだろうか・・・。和波も気の毒に見えた。

前半は酒井が押さえていた金沢も攻撃参加するようになり、藤田もいつものリズムを取り戻す。ゴン、高原がゴールに迫り、ドームは何度も悲鳴とため息に包まれるようになる。中盤をジュビロが制し、コンサドーレはボールを前線に送れない。期待したジャジもほとんど仕事ができず、平間はトップに入ってからすっかり消えてしまった。「こりゃ、失点するのも時間の問題だなぁ」と思いきや、コンサDFも集中を切らさず体を張り、運にも助けられスコアは動かないままじりじりとゲームは流れる。やはり平間はつかまえにくい微妙なポジションでちょこまか動くのが効果的だった。返す返すも前半に1点欲しかった。

ジャジ投入もリズムは変わらず、25分、平間に代わりバーヤックを投入する。選手交代のタイミングとしてはまさにココ!という感じだったが、残念ながら決定的に駒が足りない。バーヤックは何の仕事もできないまま前線をうろうろするだけで、これだったら平間を残しておいても良かったような気がした。確かに前半からとばした平間はヘロヘロだったけど、この日は「神に選ばれし存在」だったので、ピッチにいたら何かやってくれたかもしれない。カウンターも全く形を作れず、32分には川口が投入されいよいよ防戦一方となる。川口というスーパーサブを擁するジュビロに対しここでバーヤックしかいないコンサ。流れはできつつあった。しかし、立て続けにポストに救われるなど運にも恵まれ、選手の集中は切れず、攻め込まれながらもまだ何が起きるか分からないという雰囲気が残っていた。バーヤックはイバンチェが去り気持ちの問題もあったのかもしれないが、ジュビロDF陣にほとんど相手にされていなかった。あのキープ力ではポストの仕事はちょっと難しい。選手交代のタイミングはズバリ!だったのに、出てくる選手が期待外れでゲームは完全にジュビロのペースになる。

いつゴールを割られてもおかしくないという猛攻を、コンサドーレは何とかしのぎ続けた。運も味方し、洋平もファインセーブを連発、DF陣は体を張った。連敗中のチームとは思えないスピリットが伝わってきてうれしかった。このゲームだけ見たら誰も首位対最下位の対戦と思わないだろう。後半はジュビロも必死だったが、最後の決定力を欠き、結局0-0のまま延長に入る。しかしコンサドーレは中盤を制圧され、曽田が孤立、バーヤックも機能しないという攻撃陣では全く点が入る気配が感じられない。延長に入ってすぐ曽田に代え磯山を投入するも流れは変わらず、だんだん嫌な予感がしてくる。こうなったらとにかく負けないでくれ!と思った。「相手は一度も勝ったことがない強豪。全員守備でひたすら守ってくれ!勝ち点1でいいから」と思ったその時、ゴン、高原に強引にゴールをこじ開けられてしまう。万事休す・・・。ドームは沈黙し、気がついたらサックスブルーの一角だけが歓声に沸いていた。Vゴール負けの現場に立ち合うのは何回やっても辛い。いいゲームだったが結局勝ち点は奪えず、また一歩降格に近づいてしまった。

チームも5年、10年と続いていけば、いつか降格の危機にさらされることがあるだろうと、頭では分かっていた。でもこうもあっさり降格が現実味を帯びてくると、やはり辛い。今季は確かにいろいろ不運もあったけど、不甲斐ないゲームが多すぎる。J1定着に向けその礎を築いたばかりだというのに、たった1年でそれを無にしてしまったのは本当に残念でならない。

確かにジュビロの勝負強さは一枚上だったけど、ジュビロだって昇格組だということを忘れないでおきたい。93年、Jリーグに参加できなかった悔しさを胸に秘めJFLを戦っていた。先発のアントラーズやエスパルスを恐怖させるチームになろうとは、昇格当時誰も想像しなかったと思う。そりゃコンサとはあまりに環境が違うけど、でもジュビロだって昇格して這い上がってきたチームなのだ。きちんと選手を育て、いろんな苦難を経て今の地位を築いていることを忘れたくない。

さて、4月に札幌を離れ土日も仕事が入りがちで、残念ながら今季はこのジュビロ戦が最初で最後の観戦になりそうだ。この唯一の観戦が、もしかしたら今季のべストゲームになるかもしれない。ホームでのVゴール負けをベストゲームというのも変だから「今季唯一のナイスゲーム」と言えばいいだろうか。寂しい話だけど、残り9ゲーム、これ以上のゲームは見られないんじゃないかという予感がする。この日ドームの雰囲気はとても心地良かった。久しぶりにワクワクし、声がかれた。「行け!サッポロ、勝利信じ、最後まで戦えぇ!!」ドームに響いた歌声が今も耳に残る。残りゲーム、もうあとは気持ちで戦うしかない。こういうゲームを続けていけばそのうちいいこともあるだろう。意地を見せてほしい。


必勝弁当(今日のメインはかまぼこの上にあったサクラエビだそうです) 未来のコンサドールズ(ドールズジュニア)のパフォーマンス
今日の先発メンバー 結構押している時間も合ったし守りもきちんとしていたような気がします
体を張って守備をする森下主将 回数は少ないものの攻めの姿勢が見られます
ほとんど4バックの組み込まれたかのようになりつつも懸命に守る和波 もう少しと言う所で洋平に止められ悔しがるゴン中山
延長開始直前の様子 奮闘むなしく0-1Vで敗戦に愕然とするイレブン
挨拶にやってきた選手たち