ナビスコカップ[GroupA第6節]in室蘭:柏レイソル戦

文・写真/大熊洋一、写真/ワナダン本舗・中村智嗣

前節でグループ最下位が決定し、しかも天気予報は雨。中断前最後のゲームだから、室蘭でのゲームだからといっても、いち観戦者としては、気持ちの盛り上げようがない。冷静になって考えれば、アウェーの磐田戦以外の4試合はいずれも惜しいゲームではあったし、リーグ戦のころに比べれば明らかに形ができてきているとは思うのだが、それでも勝てない。引き分けもしくは1点差での惜敗が、今のコンサドーレの限界なのだろう。

雨は、幸い、朝までには上がった。が、やはり観客は少ない。スタジアム入口に3時間前到着は4月13日の京都戦と同じなのだが、開門を待つ人の数はざっと見て3分の1といったところ。開門して、試合開始時刻が迫っても、バックスタンドの両脇にはかなり空席があった。

それでも室蘭のゴール裏は赤く染まる!(大熊撮)

☆メンバー
(コンサドーレ札幌)GK1佐藤、DF18曽田、14古川、6大森、MF2田渕、20和波、26吉瀬、15森下、13平間、FW11小島、17小倉(SUB:30阿部、19中尾、7酒井、27田澤、25新居)
(柏レイソル)GK1南、DF4渡辺毅、2萩村、3薩川、MF13渡辺光、17永井、8サンパイオ、28玉田、10大野、FW11加藤、29町田(SUB:16佐藤、23根引、12森川、15砂川、33宇野沢)

コンサドーレは、出場停止の吉川のポジションに大森が入り、このところ大森が務めていた左MFには和波が入っている。リザーブには初めて田澤が入り、これで、今年の登録選手のうち、負傷の森を除く全選手がベンチ入りを経験したことになる。若手の積極登用といえば聞こえはいいが、まだ5月だというのにこれほど多くの選手を使わざるを得ないというのは、それだけメンバーが固定できていない苦しさを象徴しているともいえる。リザーブに酒井、新居、田澤と攻撃的な選手を3人揃えたあたりは、ホームゲームへの意気込みのあらわれか。

一方の柏は、ナビスコカップここまで5試合で得点わずかに2と、コンサに負けず劣らず得点力不足に陥っている。柳と黄の強力2トップの不在、そして中盤の要である明神の不在は、山瀬を欠くコンサ以上に影響が大きいのだろう。同時刻に行なわれる仙台-磐田で仙台が勝った場合、柏はこの試合に勝たないと決勝トーナメントへ進めなくなるのだが、磐田が負けることはないと思っているのか、はたまたコンサ相手なら楽に勝てると思っているのか、リザーブには根引、森川とストッパー型の選手を2人も入れており、コンサとは好対照である。

キックオフ直前、風が止み、太陽が出てきた。さんさんと降り注ぐ春の陽光といった趣で、観戦には絶好のコンディションだ。

13時2分、柏のキックオフで試合開始。森下が相手のバックパスを追いかけてGK南の前まで走る。森下の勢いに気圧された南はタッチへ逃げるのがやっと。森下のファイトに、スタンドから大きな拍手が起きる。

この森下のプレーが、コンサを勇気づけた。前半5分までに、コンサドーレが左サイドからチャンスを作ること3回。ゴール前のフィニッシュがうまくいかないのはいつもと同じだが、いつもと違うのは、ちゃんとゴール前に誰かが詰めていることだ。僕は、今日の試合がコンサにとっては消化試合であることなど、すっかり忘れていた。今日は違う、今日は、コンサドーレの選手の闘志が相手のプレーを封じ込めている。今日は、選手の闘志が空回りしていない!

前半7分、ハーフウェイの内側、右サイドに位置した曽田が、対角線上にライナー性の強いボールを蹴った。小倉が、ゴール前中央から左に動き、このボールを受ける。曽田の強くて正確なロングボールに、スタンドからどよめきが起きる。10分、今度はハーフウェイ付近の右サイドでボールを持った小倉が左にサイドチェンジ、大森がタッチライン沿いに浮き球を放り込むと、小島が半身の姿勢になって渡辺毅をかわし、体を反転させてシュート(→GKキャッチ)。ちょうど僕の目の前だった小島のボールのもらい方は非常にスムーズで、なるほど、これだけキレのある動きをしているのなら、3日前の磐田で大岩と鈴木秀人をかわしてゴールを奪ったのもよくわかる。

13分、右ハーフウェイの曽田から中央の小倉へ、小倉がドリブルで相手選手を引きつけてから左へはたき、左の森下からのアーリークロスに小島が左足のハーフボレー、ビューティフルゴール!だったが、これはオフサイド。しかし、コンサドーレの攻勢はなおも続く。16分、またまた曽田を起点に、田渕から中央の平間、平間はDFを背負いながらも反転して左へすばらしいパスを出し、上がってきた和波がクロスを入れるもボールはクロスバーの上。この場面、特筆すべきはゴール前に小島、小倉、森下の3人が詰めていたことで、フリーの選手がゴール前に3人もいるなんて、今シーズンのコンサではまず見られなかったことだ。

23分、またしても曽田から対角線上に長くて強いボールが出てきて、和波が左コーナーで受ける。26分、これまた曽田の対角線上のライナー性のボールを左サイドで小島がもらい、小倉に向けてクロスを入れるが柏DFにクリアされる。柏は、コンサドーレの前になすすべなく、完全に受け身になってしまっている。

29分、自陣深くの左サイドで森下が味方のクリアボールを拾うと、中央前方の小島、平間とつなぎ、平間は右の田渕へサイドチェンジ。田渕は右サイドをドリブルで上がり、柏のディフェンスラインが完全に整う前にアーリークロスを入れる。小倉が合わせようと試みるも人数だけは揃っている柏DFがクリア。が、こぼれたボールを和波が右足(!)で振りぬき、コンサ、先制!和波があんなポジションにいたことも、右足でシュートを放ったことも、なんとも不思議な感じではあったが、コンサドーレの積極性が生んだ1点だった。僕は、ゴール前の人数が柏より少なかったこともあり、田渕のクロスは上げるのが早すぎたのではないかと思ったのだが、結果的には、ゴールへ向かう気持ちの強さが得点につながった。

続いてその1分後、ハーフウェイ付近の右サイドで吉瀬がボールを奪い、平間につなぐと平間は左前方の和波へ。和波が中央へ入れたボールはクリアされたが、こぼれ球を、走りこんできた森下がボレーシュート。シュートはクロスバーのかなり上を通過していったが、これまた、森下の積極的な攻撃参加が気持ちよかった。

気持ちよかったのは、森下だけではない。和波が、小島が、マイボールになると見るや、味方を信じてだーっと前へ走り出すのだ。ボールのないところでは田渕や平間がムダ走りを厭わず、相手選手を両サイドに散らしていく。味方がボールを持っても誰も動かず、そのうちに相手に囲まれてボールを奪われてしまう、というのが今季のコンサだったが、今日は、みなが、自分のところにボールが出てくると信じて走っている。やっと、チームが一つになってきた。それが嬉しかった。

後半に入ると、一転して、柏がボールを持つ時間が長くなってきた。14分には町田に裏を取られ、佐藤と町田が1対1になりかけたが、曽田が戻って町田がシュートを放つ寸前に体を入れた。前半に動きすぎたのか、平間が目立たなくなり、徐々に全体が下がりはじめた。が、森下が前へ、前へと出ていくことで、ずるずると押し込まれていくことを食い止めている。

ずるずると下がらなければ、相手にボールを持たれていてもチャンスはやってくる。後半19分、相手のバックパスがこぼれたところを小島が拾い、小倉-平間とつないで平間が左から鋭いミドルシュート、GK南がジャンプしてクロスバーまで手を伸ばしてどうにかはじく。その直後、メインスタンド下に「13」の表示。ああ、平間と酒井を代えるのかと思ったら、出てきたのは「19」、中尾だった。中尾がそのまま平間のポジションに入る。

25分、佐藤洋平がボールを持ちすぎて、ペナルティエリア内で柏の間接フリーキック。コンサドーレの壁がこれをはね返す。ボールを持ててもゴールを割れない柏にイライラしたのか、27分、サンパイオがレフェリーに何か言って警告を受ける。

29分、小島に代わって新居。その新居が、早速チャンスを作った。相手コーナーキックをキャッチした佐藤がスローイングで小倉へ預け、相手を引きつけた小倉がハーフウェイの手前で中尾へ、そして中尾のスルーパスに新居が相手選手2人をかわしてペナルティエリア左へ入ると、新居は中央の小倉へ。ブロックされた小倉はシュートを打てなかったが、見ごたえのあるカウンターアタックだった。さらに31分、自陣の深いところで吉瀬がボールを奪い、大森から和波へつなぐと、和波が左タッチライン際をドリブルで駆け上がりクロスボールを入れる。新居がゴール前中央へ入ってくると相手選手2人が新居へ引きつけられる。和波の入れたボールは、しかし、彼らの頭上を越えて右サイドの小倉へ。小倉のシュートは残念ながら枠を大きくはずしたが、これも両サイドを広く使った見事な攻撃。34分には右サイドを森下がドリブルで上がり、ペナルティエリアの手前で逆サイドへ振って大森、大森がふたたび右へボールを入れると、相手選手2人に囲まれた小倉が振り向きざまにシュート、惜しくもわずかにゴール右にはずれる(これは本当に惜しかった!)。

そして最後のハイライトというべき場面は後半36分。セットプレー以外ではこの試合初めて前へ出て行った曽田が相手ボールを奪い、さらに前進しかけたところでいったん相手選手に倒されるもまた立ち上がってドリブルを再開し、さらに進路を塞ごうとした相手選手もかわして右足からシュートを放った。シュートは左にはずれていったが、曽田の迫力あるドリブルと、倒れても立ち上がった姿は、昨年3月、雨の高知で播戸が倒れながらもウィルへラストパスを送った場面を思い起こさせた(そういえばあのときも相手は柏だった)。

終盤、和波に代わって入った酒井(酒井は右へ、田渕が左にまわる)が自陣の深いところでファウルスローを取られてピンチを招く場面などもあったが(しかし、あれで失点してたら酒井はもう出番ないぞ)、曽田と古川を中心とした守備陣の足は最後まで止まることなく、1-0で試合終了。得点だけみれば辛勝だが、これがコンサドーレの戦い方、コンサにとっては完勝といっていい。遠い昔のことのように感じられる今季の初勝利(3月31日、名古屋戦)は、名古屋の出来の悪さに助けられたような印象もあったが、今日の試合は、コンサドーレのものだった。

今季ホーム初勝利に沸くコンササポ(大熊撮)

いくらいい試合をしても、結果がついてこなければ、やっている選手たちも疑心暗鬼になってしまう。だからこそ、今日の勝利の意味は大きい。リーグ戦ではなんだか自信なさげにプレーしていたコンサドーレの選手たちが、いきいきと動くようになった。小倉に当てるところまでは行ってもその先は山瀬のアイデア頼み、だった攻撃が、曽田の対角線上のロングパスという強力な武器を得たことで、サイドでキープしてから味方の上がりを待つ、あるいは、サイドから組み立てなおすといったものに変わった。確固たる形がひとつ作れれば、堀井や新居の裏への飛び出し、小倉や平間のミドルシュート、小島のドリブルといったオプションも生きてくる。

この試合を単なる消化試合だと思っていた自分の不明を恥じなければならない。あまつさえ、この試合が柱谷監督のラストゲームになるんじゃないかとすら思っていたのだから、まったくもっていくらお詫びしても足らないぐらいだ。リーグ戦7試合で背負ったビハインドはあまりにも大きい。しかし、中断期間に入る前に、勝利という結果による自信を得られたことで、中断期間にもポジティブな姿勢を保てるだろう。

勝ててよかった。


黄色のシャツに身を包んだ柏サポーター(大熊撮) 好調の2トップ、小倉選手と小島選手(大熊撮)
攻守に大活躍の曽田選手(大熊撮) 得点した和波がスタンドに答える(中村撮)
試合後の挨拶(中村撮) 試合後ゴール裏に駆けつける和波(中村撮)