[第3節]in横浜国際:横浜Fマリノス戦

文・写真/大熊洋一

[横浜F・マリノス]
GK1川口、DF5小村、3松田、7ナザ、MF4波戸、6上野、8遠藤、32ドゥトラ、10中村、FW9ブリット、11城(sub:16榎本、13永山、20田中、15平間、29坂田)

[コンサドーレ札幌]
GK1佐藤、DF3森、5名塚、6大森、MF2田渕、15森下、8ビジュ、20和波、18山瀬、FW11播戸、9ウィル(sub:29井上、4森川、26今野、19伊藤、23曽田)

前節で大量5失点を喫したコンサ。名塚は復帰したが、野々村はいぜんとして不在のまま。中盤のユーティリティプレーヤーとしてフィールドのあちこちに顔を出したアウミールは解雇された。代わりに守備的MFとして入ったのは、セカンドステージ開幕戦での退場による出場停止から復帰の森下。それ以外は、おなじみといっていい顔ぶれが並んだ。

19時、蒸し暑い中で横浜のキックオフ。いきなり中央から右前方へ向けて長いボールが送られ、波戸が走りこむ。が、ボールはゴールラインを割った。5分過ぎにもふたたび同じようなボールが送られ、またしても波戸が長い距離を走る。コンサドーレの左サイド-和波、大森の攻撃を封じようという意図なのか。もっとも、コンサドーレは、アウェーかつ暑いとあってか、かなり引き気味で、播戸とウィルも相手がハーフウェイを越えて自陣に入ってこない限りは相手を追いかけようとはしない。ビジュがへんなところにいるなと思ってよく見ていると、ビジュは中村にマンマークであっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。

ディフェンシブなコンサに対して、横浜は初出場のブリットが不思議な足技&フェイントを繰り出してコンサDF陣を翻弄、そこへ城や中村が絡んできてたびたびコンサドーレのゴールに迫ってくる。ただ、コンサにとって幸いだったのは、中村のFKが見るからに不調で、ゴール前でファウルがあっても失点のおそれがあまりなかったこと。はじめのうちこそ、ペナルティエリア近くでファウルがあるたびにドキドキしていたものだが、中村のキックがあさっての方向へ行ってしまうのを何度か見ると、怖さはなくなってきた。

逆に25分、ゴール前でコンサドーレがチャンスを得る。後方から入ってきたボールに対し、山瀬が横浜の選手の前で瞬時に体を反転させて前を向いた状態でボールを持つと(この山瀬のプレーは巧かった!)、山瀬は前方のスペースへとボールをはたく。そこへ走りこもうとした播戸の横から小村が思いきり体を入れてきてファウル。ペナルティエリアのすぐ外側、ゴール正面やや右からのFK、となれば、もちろんウィル。カベを前にして、しばしの静止の後におもむろに蹴ったボールはきれいな弧を描いてGK川口から逃げるようにサイドネットの内側へと刺さった。川口、一歩も動けず。コンサ先制。

34分、横浜が右からのコーナーキック。中村のボールをファーサイドで小村が合わせ、落としたところをブリットが押しこむ。同点。どこかで見たような光景だなと思ったら、これ、札幌ドームでの初戦とまったく同じじゃないか(札幌ドームにブリットはいなかったけど)。右と左の違いはあれど、セカンドステージの開幕戦で鹿島の羽田に奪われた決勝点もコーナーキックからだった。まったく…。

42分には、ここまで前後左右によく動いて攻守のつなぎ役を演じていた森下が負傷?退場(どこで負傷したのかは分からなかったが、この少し前から、ボールが動いても森下はほとんど動けずにいた)、今野と交替。1分後、その今野が遠藤を押し倒してしまい横浜FK、中村が蹴ったボールが小村のヘッドにドンピシャで合うも佐藤洋平がかろうじてはじき出す。コンサドーレはチャンスらしいチャンスもないまま、1-1で前半終了。

後半に入ると、ビジュの中村へのマンマークが解かれた。2分、ビジュのドリブルからコンサドーレがFKを得るも、ウィルの蹴ったボールはわずかにクロスバーの上。しかし、コンサドーレのチャンスはこれでおしまいで、いぜんとしてペースをつかめない。7分に和波が左サイドを突破し敵陣深く入ってきたが、ゴールラインが迫ったところで横浜DFに体を寄せられてゴールラインを割ってしまう。中央で待つウィルが怒って何かを叫ぶ(まさに「激怒」という言葉がぴったり)。イライラしたウィルは中盤どころかときに最終ラインにまで下がってボールをもらおうとする。マークすべき相手が勝手にいなくなってくれるのだから、横浜の守備は楽だろう。もっとも、横浜の攻めも単調で、パスまわしはさすが代表クラスのメンバーが揃っているだけのことはあると思わせるものの、怖さを感じさせるほどのものではない。

とはいえ、さすがにこれだけボールを支配されてしまうと苦しい。20分、左サイドに開いた城からゴール前へ速くて低いクロスボールが入り、ブリットが左足で決めて2-1、横浜逆転。コンサドーレは23分に和波から曽田、32分に播戸から伊藤と選手交代で反撃を試みようとするも、ほとんどボールを取ることすらできず、まったく手も足も出ないような状態になってしまった。残り5分となってからは、暑さによる疲労からか、コンサドーレの各選手の足が完全に止まってしまい、あとはもう横浜の3点目を待つだけ、あるいは試合終了を待つだけといった状況になりつつあった。

残り1分、だった。まさか試合終了を待っていたわけでもなかろうが、両チームの選手がほとんど動かなくなってしまったなかで、左サイドでボールを持った大森がハーフウェイの手前からするすると上がってきた。時が止まってしまったかのように誰も動かないなかで、大森がゴール前へクロスボールを入れる。その先には曽田がいた(曽田が走ってきた、のではなく、いた、ように見えた)。ほとんど横浜の選手と競ることもないまま曽田がヘッドで折り返したボールに、これは間違いなく走りこんできた伊藤優津樹が体ごとゴール左隅へと押しこんだ。まさかまさかの同点ゴール!ユヅキ、札幌での初ゴール!!これまではいつもやられていた終了間際の同点ゴールを、今日はコンサドーレが決めた!!!

それまでの停滞が嘘のように動きがよくなるコンサ。

だが、そんなに甘くはなかった。延長後半開始早々、イヤだなぁと思っていた横浜のコーナーキック。佐藤が飛び出すもボールにさわれず、ゴール前は無人になってしまう。そこへめがけて入ってきた横浜のシュートを、ビジュがアクロバティックなオーバーヘッドキックでビックリのクリア。が、そのボールを拾ったナザが左サイドの角度のないところから豪快なミドルシュートを打ちこんで試合終了。ショックのあまり立ちあがることのできない佐藤洋平…と思ったら、どこかをケガしていたらしく、両チームの挨拶が終わった後に担架で運ばれていった。

これでセカンドステージ開幕3連敗。だが、終了間際に追いつくというのは、今季初めてのことだ(追いつかれることは何度もあったけど)。しかも、曽田と伊藤という脇役の活躍による同点劇。たまたま負けているだけであって、チームはいい方向に向かっている。何も心配することはない。当面の目標であるJ1残留に向けて、普通に戦っていけばいいと思う。

Vゴール負けではあったが、最後の最後で粘りを見せてくれたことにむしろ希望の光を感じ、さばさばした気持ちで横浜国際総合競技場を後にしたことであった。


アウェー側ゴール裏に掲げられたコンササポのフラッグ 選手入場。先頭の女性が浴衣姿なのは、この日は「浴衣DAY」だったから。
ホーム側ゴール裏。フラッグの数は多い。 前半、ビジュは中村俊輔に影のようにつきまとう。
少ない人数でも声の大きさでは横浜を圧倒したコンササポ 伊藤のゴールで89分に同点に追いつく!
延長戦に向けて準備を整えるコンサドーレの選手たち 延長後半2分、ナザのVゴールで敗れる…
敗れはしたが選手たちはよく戦った