[第1節]inカシマ:鹿島アントラーズ戦

文・写真/大熊洋一

直前の1週間を北海道で過ごした。試合当日、羽田空港に着いたときは「やっぱり東京は蒸し暑いなぁ」と思ったが、電車を乗り継いで鹿島へ近づくにつれ、様子が変わってきた。冷房のきいた電車内が寒い。北海道用にとリュックの中に入れてあったウィンドブレーカーを着込んだ。試合前にいったんは半袖になったものの、試合途中でぽつぽつと雨が落ちてきたときにふたたび着たウィンドブレーカーは、結局、試合が終わるまでそのままだった。コンサにとって、気候の面でのハンディはほとんどないといってよかった。

ウィルと野々村がケガで出られないコンサドーレは、GK佐藤、DF森、名塚、大森とここまではいつものメンバーだが、MFは中央の守備的位置にビジュと新加入の森下、田渕と和波を両翼に配し、2列目にアウミールと山瀬、そして播戸の1トップ(試合前のメンバー発表では山瀬がFW登録になっていたが)。苦しさは否めない。対するアントラーズは、秋田と中田が出場停止ではあるが、それでも金古や本山や平瀬をサブに置いておけるのだから、コンサにとって手強い相手であることには変わりない。

19時過ぎ、アントラーズのキックオフで試合開始。いきなり、柳沢がコンササポに向かってしなやかなドリブルで驀進してくる(しなやかな驀進というのも妙だが、柔らかいボールタッチで、しかしものすごい勢いで突っ込んできたのだ)。2人、3人とコンサドーレの選手をかわすと、右に流れながらペナルティエリアに進入してシュート。コンサDFが足を出してブロックし、アントラーズのCK。コンサドーレはこれを難なくクリアすると、山瀬から播戸へと縦へ長いボールが入り、播戸がペナルティエリアの手前まで攻めこむ。たまらずファビアーノがファウルをおかし、コンサFKは和波がゴール前へ放りこむ。ビジュがヘッドで合わせるも枠をとらえることはできず。まだ開始早々なのに、試合終盤かのような激しい応酬である。

6分、またまたしなやかなドリブルで中央を抜けてきた柳沢に対し、後ろから追いかけたビジュが柳沢の前へスライディングをしかけてファウル、イエローカード。ゴール正面でアントラーズのFK。コンサから見て、右にビスマルク、左にセカンドステージから加入したアウグストが立つ。「アウグストってFK蹴れるのかね?」「左足で巻かれたらヤバそうだね」なんて会話をしていたら、その通りにアウグストが左足で曲げてきた。佐藤洋平、左へ飛ぶもまったく触れず、ボールはゴールネットへ。ま、気にすることはない。崩されたわけではないのだから。

実際、コンサドーレは、内容ではまったく負けていなかった。失点直後のキックオフ、山瀬と播戸のワンツーで一気に相手ゴール前へと攻め入った。11分には右サイド自陣深くで相手ボールをカットしたアウミールから相手の裏へと長いボールが出て、播戸が追いかける(→播戸追いつかずGKキャッチ)。12分は両チームを通じて初めてといっていい見事な形をコンサドーレが作る。自陣右サイドで相手ボールをカットした森下から左の山瀬、山瀬がさらに外の和波に預けてふたたび山瀬、山瀬からゴール前中央で待つ播戸へボールが入ると、播戸の外側へアウミールが走りこんでアントラーズDFを引きつけ、アウミールの背後にできたスペースへ森下が入ってくる。播戸はゴールを背にしたまま森下へとボールを預け、森下はさらに外の田渕へ出し、田渕がシュート。田渕のシュートはヒットせずGK正面となってしまったが、グラウンドを左右いっぱい広く使った攻撃は見ごたえがあった。

この後も、コンサドーレは左右へのサイドチェンジを多用した。とりわけ、森下は、意外性のあるおもしろいパスを出し続け、そして自らボールをもらいに走った。ただ、残念なことには、ほとんどつながらないんですね、これが。意図はよくわかるんだけどね。

もう一つ、コンサで目立ったのは、マイボールになった途端に播戸が前方へものすごい勢いでダッシュを続けたこと。実際に播戸にボールが渡ったのはそのうちの何度かに過ぎないのだが、それでも播戸は裏をねらって走りつづけた。21分、自陣深くでボールを持ったビジュが一気に前線へ送ると、播戸がアントラーズDF2人の間をすり抜けて左からシュートを放った。惜しくもわずかに右へ逸れたが、これはまさに播戸の無駄走りあってこそのプレー。25分には右サイドで森から一気に前線へのボール、右サイドで受けた播戸は中央のスペースが消されているのを見るやボールをキープ、中央へ上がってきた森下に預けると、森下は左前方へ流し、そこへ走りこんできた和波がGKの頭越しをねらってシュート(→クロスバーを越える)。

かようにチャンスを作り続ける一方で、柳沢だけはどうしてもつかまえきれなかった。野々村不在の影響なのか、ビジュ/森下のところとアウミール/山瀬の間が広くなりすぎてしまい、中盤をアントラーズに自由に使われていた(もしかして相手にボールをまわさせて疲れさせる作戦か?と思ったほど)。29分には名塚と大森の間へ小笠原から決定的なスルーパスが通り、柳沢の動きに眩惑された大森の対応が半歩遅れる間に柳沢が抜け出した。が、コンサには佐藤洋平がいる!GK佐藤、いち早く飛び出し、柳沢がシュートを打つ寸前にボールをはじき出した。

後半はコンサドーレのキックオフでスタート。前半キックオフの柳沢のドリブルを意識したわけでもなかろうが、今度はコンサドーレがいきなりシュートまで持っていった。まずはキックオフから右へ出して田渕がドリブル、すぐ後ろに入ってきた森下へとボールを下げると、森下はゴール前へクロス、ファーサイドで播戸が競ってゴール前中央へこぼれたボールを山瀬が左足ボレーでシュート。残念ながらシュートはクロスバーの上だったが、後半4分、この勢いそのままのビッグプレーが飛び出した。左サイドのハーフウェー付近で後方からのパスを受けた和波がスピードに乗ったままフェイントをまじえながら絶妙のコース取りでゴールへと迫り、羽田をかわすと左足を振りきって見事にゴール!本山もびっくりのドリブルからのスーパーゴールでコンサドーレが同点に追いついた。

10分にハーフウェー付近で森下がビスマルクを倒してイエローカード、開始直後に今度は大森が鈴木を倒してイエローカードと、いただけない場面はあったものの、コンサドーレの勢いはなおも続いた。11分、自陣中央でボールを奪った山瀬が左の和波へ、和波がドリブルで上がってクロスを入れると中央で播戸が競り合い、こぼれたボールを右の田渕が拾い、ビジュが田渕を追い越すと田渕からビジュ、ビジュがゴールラインぎりぎりからマイナスのセンタリングを上げ、中央でフリーの山瀬がシュート(が、ヒットせず)。15分、後方からのロングボールを播戸が競ってこぼれたボールに田渕が追いつくと、アントラーズDFは田渕と播戸の間に3人が集まっていて右サイドががら空き。ここへすかさず森下が走りこみ、田渕からボールをもらうと低いクロスを入れる(が、アントラーズDFがブロックしてCK)。

和波の同点ゴールがきいたのか、アントラーズは右サイドの名良橋がまったくといっていいほど攻撃に参加しなくなってしまい、一方で左サイドのアウグストはこんなことしていいのかよと思うほど自分の守備位置を捨てて上がってくるのでその後ろには広大なスペースができ、コンサドーレは両サイドを有効に使うことができた。中盤も完全にコンサドーレが制圧し、柳沢は試合からすっかり消えてしまっていた。もっとも、後から考えれば、この時間帯に追加点を奪えなかったことが痛かったのだが…。

あれ、コンサドーレのDFラインが下がってきているんじゃないかな?と思ったのは25分過ぎのこと。26分に和波に代えて深川を入れても(深川がアウミールの位置に入り、アウミールが左サイドへまわる)、やはりずるずるとDFラインが下がっているような気がしていた。なんとなくまずいなぁというムードになってきた30分過ぎ、アントラーズの左からのCKをファーサイドでアウグストが強烈なヘッド、GK正面で難を逃れるも、ビスマルクの正確なプレースキックはやはり脅威で、早くこの場面から抜け出さないとまずいぞと思っていたら次のCK(今度は右から)のこぼれ球を羽田に押し込まれてしまった。

35分、自陣深くで相手ボールをインターセプトした大森がそのままドリブルで上がり始めたらほんの少し行っただけであっさりと奪い返されてしまい、ほとんど無人のスペースを柳沢→小笠原とつながれてビューティフルゴール…が、これはオフサイド。いやはや、危なかったが、まだ運はある。

37分、田渕OUT、伊藤優津樹IN。田渕のポジションには森下がまわり、森下の位置(より少し前目)に山瀬、そして伊藤がトップ下に入る。42分、大森が左から中央へとドリブルで上がっていったところへ熊谷がスライディングでファウル(熊谷はイエローカード)。コンサにとっては絶好の位置でのFKだが、ウィルはいない。ま、でも、昨年、一昨年だって直接FKは期待できなかったんだからそれを考えればなんとかなるさと思ったものの、正確なロングボールを入れられる野々村もいない。こうなれば久々にビジュの弾丸シュートしかないだろう-コンサドーレは、セットされたボールをちょこんと動かすと、ビジュが低い弾道のボールを蹴った。壁の間はすり抜けたものの、ボールには力がなく、GK正面。

岡田監督が深川に前へ上がるようにと大声で指示を出す。44分、ここまで奮闘してきた森下がアウグストを引っ張ってしまい、2枚目のイエローカードで退場。左右に揺さぶって播戸がゴールへ迫るもオフサイド。担架で運ばれたビスマルクが勝手に試合に戻ってしまって(?)2枚目のイエローカードで退場(ちなみにビスマルクの1枚目は自分とは何の関係もないプレー、しかもコンサドーレのファウルで主審に文句を言ってもらったもので、愚かとしかいいようがない)。そしてタイムアップ。コンサ、開幕戦を飾れず。ま、ウィルと野々村抜きで、しかもアウェーのアントラーズ相手ではそう簡単には行くまい。

負けたとはいえ、2失点はいずれもセットプレーによるものでけっして守備が崩されたわけではないし(またセットプレーからの失点というのが問題、ともいえるが…)、新加入の森下は(退場になってしまったが…)これまでのコンサにはいなかったタイプの選手で、今後に期待を抱かせてくれた(プレースタイルは異なるが、受けたインパクトとしては、98年のセカンドステージ途中で棚田が加わったときに近い)。まだまだ先は長い。大切なことは連敗を重ねないこと(98年はファーストステージ終盤での5連敗が痛かったのだ)。うろたえることなく、自信を持って戦っていけば、J1残留という最大目標は十分に達成できるはずだ。


試合前、ホーム側スタンドに広がったアントラーズのフラッグ アウェーのコンササポも12番のフラッグで選手を迎える
いよいよセカンドステージ開幕戦のキックオフ! ホーム側ゴール裏は真っ赤!
見事な同点ゴールをあげた和波 最後まで声援を続けたコンササポ