[第11節]in厚別:名古屋グランパス戦(写真付)

『二上英樹の観戦記』

2ndステージ、ここまで4勝6敗で負けが先行。しかも三連敗とあっては、厚別のホームゲームである今日の試合は落とせない。内地では、台風10号の余波を受け、てんやわんやの様だが(長崎で開催の福岡-平塚は順延、他の会場も激しい雨の模様)、ここ札幌は、そんなことどこ吹く風の青い空。
コンサドーレの後藤選手は、この試合でリーグ戦出場300試合を達成する。後藤選手はジェフ市原の前身、古河電工で日本リーグに出場していた時から、通算して299試合のリーグ戦に出場している。

札幌の先発は以下の通り。今日は前節採用した4-5-1のフォーメーションではなく、従来の4-4-2のフォーメーション。DFは、左から黄川田、梶野、大野、田渕の四人。中盤は、バウテル、棚田、マラドーナ、深川の四人。ボランチにバウテル、左に棚田、右に深川、トップ下にマラドーナのダイヤモンド(菱形)フォーメーション。オフェンス陣は、吉原、バルデスのツートップ。控えは、加藤、古川、後藤、村主、有馬の五人。注目は、柏から移籍してきた棚田。前節の浦和戦から早速出場しているが、初めてのホームのサポーターの前での試合。どんなプレーを見せてくれるか。そして、今日はサブにまわった後藤。果たして、300試合を達成できるのか。

  • FW:バルデス、吉原
  • MF:棚田、バウテル、マラドーナ、深川
  • DF:黄川田、梶野、大野、田渕
  • GK:ディド

対するグランパスは、コンサと同じく4-4-2。後ろから、GK:伊藤、DF:大岩、古賀、中谷、石川、MF:遠藤、望月、平野、岡山、ウリダ、FW:福田、ストイコビッチ。DFの要、トーレスは怪我のようで、札幌には来ていない。やはり注目は、ストイコビッチ。そして、吉原のライバルになる、U-21候補のFW福田。中盤の望月、平野の代表候補組のプレーも目が離せない。
試合開始、しばらくはジャブの撃ち合いのような展開。試合が動き始めるのが10分ごろを過ぎてから、まず10分にマラドーナが、相手選手をひじでこづいたということで、イエローを食らう。マラドーナ、これで三枚目。次節、平塚戦でられず。続いて、12分。札幌のチャンス。名古屋DFラインの裏へ放り込まれたボールにバルデスが走り込む。反応してでてきたGK伊藤と交錯して、バルデス倒される。主審が、ペナルティエリアの中付近を手で指し示す。PKだ!!、と盛り上がるスタンド。ところが、これはゴールキックを意味していた。一転、ブーイングうずまくスタジアム。伊藤にオブストラクション気味に倒される直前に、バルデスが頭で前に出したボールが強すぎて、体から離れ過ぎたため、キープしている状態ではないと判断されたようだ。でも、PK取ってくれてもよかった様な、シーン。
さて、次にチャンスが訪れたのは名古屋。右サイドからコンサゴール前に放り込まれたボール。バウテルが、ヘッドでダイレクトにディドに戻そうとしたボールが、不十分で、ディドまで届かず。しかもアンラッキーなことに、走り込んで来ていた名古屋FW福田の頭にどんぴしゃり。ゴールにたたき込まれてしまった。うわ~、バウテル~~、どうしたんやねん、と、サポーター。ゴールにボールが吸い込まれた瞬間、なんでやねん、という顔でお互い目を合わせるコンサDF陣。ばつの悪そうなバウテル。上位チーム(名古屋はこの時、5位)を倒すときに、絶対与えてはならない、先取点をプレゼントのような形で、与えてしまったコンサ。がっくりするスタジアム。
さらに不幸なことが重なる。同点を狙って、攻めるコンサドーレ。前半20分。名古屋ゴール前に走り込んだ吉原と、DF古賀がはげしく交錯。しばらく立ち上がれない吉原。何とかたちあがり、プレー再開。が、しばらくして、ベンチに向かって、手で×サインを出す吉原。脇腹がかなり痛そうだ。結局、吉原交代。有馬投入。ベンチに下がった吉原は、そのまま、コーチに連れられ、メインスタンド下の控え室に下がっていった。
試合は、その後、名古屋ペース。記録上、前半のシュートは両チーム3本づつだったが、コーナーキックの数は、圧倒的に名古屋が多い。光の見えない札幌に、ゴール裏サポーターは頑張って応援するも、スタジアム全体のノリが悪い。どよんとした、雰囲気に覆われるスタジアム。試合はこのまま、前半終了。

後半開始。名古屋は、中盤の岡山に代えて、動きの速いアルーを投入。コンサドーレのメンバー交代はなし。前半の、間延びしたようなゲーム展開と打って変わって、後半は、開始早々、試合が動く。後半5分。中盤でのボールの取り合いで、ボールを奪ったコンサドーレは、深川から、センターサークル付近の大野へ。大野、これをドリブルで名古屋陣内に持ち込む。そして、右サイドをオーバーラップしてきていた田渕へパス。田渕これをダイレクトでセンターリング。ボールは逆サイドに詰めていた棚田へ。棚田、これをボレーで再び中へ蹴り込む。そこへ有馬が走り込み、倒れ込みながらボレーシュート。棚田、有馬の柏ホットラインが炸裂。ゴールが決まって、1-1の同点。有馬、うれしい、コンサ移籍後のリーグ戦での初ゴール。これで、盛り上がるスタジアム。ホントは、苦しいときこそ、盛り上げなくてはならないのだが、前回のホームゲーム横浜Mは完封負け、今日もここまで無失点だったから、静かだったのも、わからないでもない。
とにもかくにも、この得点で、スタジアムの雰囲気一変。ここから、ゲーム展開が一気に激しくなる。名古屋は、二列目、三列目の選手のオーバーラップが目立つようになる。ピンチになるコンサゴール前。札幌にもチャンスは、訪れる。ゴール前で、有馬、バルデスと名古屋DF二人が混戦になる。バルデスがボールをキープして、DFを切り返しでかわして、シュート。惜しいボールが名古屋ゴールの左をかすめていった。引き続いて、左サイドを駆け上った黄川田から、ゴール前に絶妙のセンタリング。バルデス、ボレーキック。これも、左にそれていった。どうしたバルデス?
追加点を先に奪ったのはコンサ。後半20分。名古屋ゴール前に殺到するコンサ攻撃陣。めずらしく、二重三重の波状攻撃をしかける。左からの深川のセンタリング。GK伊藤がパンチング。こぼれたところを棚田がシュート。再び、GKがはじきかえす。今度は有馬がシュート。再びGKが反応。こぼれたところをGKとマラドーナと交錯。一瞬GKがキープしたかに見えたが、このボールを有馬が押し込んだ。典型的な、ゴール前混戦から押し込んだゴール。逆転に、大騒ぎになるスタジアム。一方、名古屋の選手達は、キーパーチャージを主張して、副審を取り囲む。確かに、スタンドから見た目、かなり混戦して、選手は交錯していた。でも、何でキーパーチャージなのに、副審を取り囲むんだ?。オフサイドは、石川がゴールライン上までバックアップに戻っていたから、この時は考えられない。
それでも、収まらないのは、名古屋イレブン。主審と副審を取り囲んで、2~3分抗議していた。中でも、切れていたのがストイコビッチ。再開後のキックオフでは、キックオフのボールをその副審の方へ、思いっ切り蹴り出した。これで、名古屋のDFから、交代させろの合図が名古屋のベンチへ。名古屋ベンチ、ストイコビッチに代えて、小倉を用意。サイドラインに、小倉と10番の札を持った予備審が立っていた。とそのとき、右サイドから持ち込む名古屋DF石川。コンサドーレのDFがずるずるとラインを下げたため、ペナルティエリア付近まで持ち込まれてしまった。前線にいたストイコビッチにパス。ストイコビッチ、これを体を前に向けず、ダイレクトにノールックシュート。マークに付いていた大野と、ディドは、見事にだまされ、反応できず。2-2の同点に追いつかれてしまった。ストイコビッチのゴールに、名古屋ベンチ、後は主審の合図を待つだけの、サイドラインにいた小倉を連れ戻してしまった。
これで、ストイコビッチのいらいらが直るとベンチはふんだのだろうが、30分ごろ、ラインをでたボールを思いっ切り蹴り上げて、イエローを食らってしまう。再び、DFから出される交代させろの合図。後半30分、ストイコビッチout。小倉がピッチに入った。ベンチに戻るストイコビッチは、ベンチにあったペットボトルを片っ端から地面に叩きつけ、完全にぷっつん状態。
荒れた展開になった試合で、最後に女神がほほえんでくれたのは、札幌。後半35分。名古屋ゴール正面で、FK獲得。蹴るのはマラドーナ。ゴール前に放り込まれたボールが、ゴール正面にこぼれたところを、大野が横パス。そこに深川が走り込み。押し込んだ。3-2、再び突き放した。しぶといコンサドーレの奮闘に、大騒ぎのスタジアム。
一層、激しい攻撃に曝されるコンサ。試合終盤に失点が多いことを知っているスタジアムのコンサドーレのサポーターは、気が気でない。後半40分には、運動量の落ちたマラドーナに代えて、古川を投入。バウテルとダブるボランチにして、守備を固めるのかと思いきや、ボランチは古川一人、バウテルを棚田のいた左に、棚田をマラドーナの位置に上げて、フォーメーションは、変えず。これが功を奏したのか、一方的に攻められる展開には、ならなかった。コンサボールになると、FWに加え、MFもラインを上げて、時々チャンスをつかむ。
ロスタイムは、名古屋の長い抗議があったためか4分。長い!!。とにかく、早く終わってくれと言うのが正直なところ。名古屋の攻撃は怖かったが、コンサドーレの見せ場も多かった。棚田のポストをたたいたシュートは惜しかった。また、名古屋ゴール前で、大野がもらった間接FKをバウテルが直接ゴールを狙ったのを見て、おいおい大丈夫か?、選手も、早く試合を終了させたくて、我を失っているんだろうか?と、心配になってきた。しかも、そろそろ終わるという時に、コンサ陣内で、CKを名古屋に与えてしまう。蹴るのは、平野。コンサドーレの失点癖を考えると、これはやばい。祈るような気持ちで応援する。平野のCKは、ディドがパンチング。これを大きくDFがクリアして、試合終了。久しぶりの勝利で、連敗を3で止めた。そして、ついに2ndステージ上位チームから星を挙げた。
疑惑の判定の多かった、今日の試合。コンサにラッキーに作用したようだ。柏でのVゴール取り消し、鹿島戦でゴールなど、コンサもこれまで、疑惑の判定に泣かされてきた。長い歴史の中では、疑惑の判定がチームに良いように働くこともあるし、悪く働くこともある。これがサッカーということだろう。
初めて見た棚田。今日は、1アシストを記録。コンサドーレの得点にかなり関わっていて、効果的な補強になったようだ。足があって、ボールをキープできるので、攻撃にバリエーションが増えた。マラドーナが交代でいなくなった後でも、ゲームを作れる選手がいるというのは、コンサドーレの攻撃のオプションが増えたわけで、かなりチームにとってはいい。おそらく、次節は出場停止のマラドーナに変わって、棚田がゲームメイクするだろう。有馬も、移籍後リーグ戦初ゴールを決め、リズムに乗れるに違いない。大野の攻撃参加も面白かった。U-21代表候補合宿では、攻撃の練習しかしなかったらしいので、トルシエ監督の指導の効果か?と思ったが、大野自身もともと攻撃参加が好きな性格らしい。この調子で、次節平塚戦も何とかものにし、ホームの磐田戦を迎えたい。

試合後の発表では、吉原は脇腹打撲。なんとかなりそうだ。また、後藤の300試合出場は次節以降に持ち越しになった。

(以上記事:二上英樹)


キックオフ:この日、厚別競技場に訪れた観客は10052人。横浜M戦に比べると、いまいちの人の入りだったが、そんな観客に囲まれて、コンサドーレのボールでキックオフ。キックオフするのは、バルデス選手(9番)と吉原選手。名古屋の選手は、手前がストイコビッチ選手(10番)で、奥が福田選手。  
吉原交代 :前半25分。吉原選手が怪我で交代。顔がつらそう。吉原選手は、前半20分頃、名古屋ゴール前で、DF古賀選手と交錯。その時、右脇腹を打撲。プレー続行は不可能と見て、交代。有馬選手(11番)は、戦術的な交代ではなく、スクランブル発進となったが、この後しっかりと結果を出した。
エースの対決:中盤で競り合う、札幌の10番マラドーナ選手と名古屋の10番ストイコビッチ選手。ベンチの屋根がちょっと邪魔。
ツインゲームメイカー :コンサドーレの二人のゲームメイカー。身長は共に165cm。二人とも背は小さいが、サッカーは身長でやるものでないことを教えてくれている。ボールをキープしているのがマラドーナ選手。奥が棚田選手。名古屋の選手はV川崎から移籍したDF石川選手。
有馬うれしい初ゴール :後半7分、有馬選手のゴールが決まる。コンサに移籍後、リーグ戦での初ゴール(ナビスコカップで1得点を記録)。ゴールを決めた有馬選手は、ゴール裏コンササポーターに向かって、ガッツポーズ。その後、マラドーナ選手と抱き合う有馬選手(左手)。右は、バルデス選手と手を合わせるアシストした棚田選手。
名古屋の抗議 :コンサドーレが決めた2点目(後半20分)に、抗議する名古屋の選手達。かなり長い間、ゲームが中断した。これで、名古屋のストイコビッチ選手が切れてしまった。
名古屋の若きエース達 :試合も終盤、名古屋のツートップは、福田(左;18番)と小倉(右;19番)の二人に変わった。右下8番はバウテル選手
コンサゴール前の攻防:試合も終盤、コンサゴール前での攻防。名古屋が得たフリーキック。放り込まれたボールを競るのは、梶野選手と名古屋のアルー選手(右手)。コンサドーレの選手は、ほぼ全員が戻って必死のディフェンス。
ラストプレー:後半ロスタイム、もう既に掲示された4分が過ぎようかというところ。コンサドーレは名古屋にコーナーキックを与えてしまう。蹴るのは左足のスペシャリスト平野。平野のコーナーキックをパンチングでクリアするディド選手。ヘッドで競っているのは名古屋の古賀選手。このあと、クリアしたところで、試合終了。3-2で勝利を収めた。
ゲーム後の挨拶:柏戦以来のホームでの勝利に、スタンドのサポーターに手を振って答える選手達。
ヒーローインタビュー :今日のヒーローインタビューは、2得点を決めた有馬選手。1点目を決めたときは、泣きそうな顔になって、歓びを爆発させたが、お立ち台の上でも笑顔、笑顔。