コンサ戦術解析11(Jリーグの厚い壁)(1998年版)

フォーメーションを4-4-2に替え、Jに挑んだコンサでしたが、結論を先に言えば、見事に跳ね返されてしまいました。開幕戦は、日本平で清水エスパルス。前半は1点先制で五分にわたりあったものの、後半逆転され1-4で負け。続く鹿島戦も、1-3で負け。二試合で7失点という結果に加え、試合も終盤になって、相手チームが攻撃陣の数を増やすと、守備ラインが混乱し失点するという内容に、監督、我慢しきれなくなったのか、DFの数を増やした守備的な3-5-2に変更しました。思えば、これが、コンサドーレのフォーメーションが迷走する始まりでした。
ここで断っておくと、DF4人の4-4-2からDF3人の3-5-2にすることが、どうしてDFを増やし守備的になることなのかというと、3-5-2の場合、MFに含まれる両ウイングバックを引き気味にして、5-3-2の様なフォーメーションにすることができるから。すなわち、最初に採用した4-4-2の4バックスの後ろにリベロのようなDFを一人増やし5バックスにしたというのが、このフォーメーションの変更の真の姿。

結局、Jの攻撃力にコンサドーレの守備が4バックスでは耐えきれないと判断して5バックスにしたわけ。で、当然のことながら中盤が4人から3人になったため、MF3人に要求される運動量は増え、攻撃はきつくなった。下に、今季のフォーメーションと勝敗を並べてみた。4-4-2で負けが続いては、3-5-2に変更し、しばらく調子がいいと、4-4-2に戻す。それで、負けが続くと、また3-5-2へ。この繰り返し。これを見てみると、白星をあげた5試合は全てフォーメーションが3-5-2の時。それでは、この結果をもって、3-5-2の方がコンサドーレは強いと言えるのだろうか。個人的な結論を言わしてもらえば、どっちでも一緒だと思う。なぜかというと、3-5-2で上位のチームに勝ってはいるが、同時に下位のチームからも負けているからである。最後の三連敗は3-5-2のフォーメーションだった。結局、負けているのは、フォーメーションの所為ではなく、もっと別の所に原因がありそうである。


今季のコンサドーレのフォーメーション

  • 第1節(清水戦)●:4-4-2
  • 第2節(鹿島戦)●:4-4-2
  • 第3節(柏戦)■:3-5-2
  • 第4節(G大阪戦)○:3-5-2
  • 第5節(横浜M戦)●:3-5-2
  • 第6節(浦和戦)○:3-5-2
  • 第7節(名古屋戦)▲:3-5-2
  • 第8節(平塚戦)■:4-4-2
  • 第9節(磐田戦)●:3-5-2
  • 第10節(V川崎戦)●:4-4-2→変則的な3-5-2
  • 第11節(神戸戦)○:3-5-2
  • 第12節(市原戦)△:3-5-2→4-4-2
  • ナビ第1節(清水戦)●:4-4-2
  • ナビ第2節(G大阪戦)●:4-4-2
  • ナビ第3節(横浜F戦)○:3-5-2
  • ナビ第4節(川崎F戦)●:3-5-2→4-4-2
  • 第13節(横浜F戦)■:4-4-2
  • 第14節(C大阪戦)●:4-4-2
  • 第15節(広島戦)▲:3-5-2
  • 第16節(福岡戦)●:3-5-2
  • 第17節(京都戦)●:3-5-2

●:90分負け、▲:延長負け、■:PK負け
○:90分勝ち、△:延長勝ち
→:は、試合途中でのフォーメーションの変更


猫の目のように変わったフォーメーションと共に、フェルナンデス監督の苦悩は、選手起用にも表れており、チームの調子を上げようと、とっかえひっかえ選手を起用しています。今シーズンJリーグ1stステージ、ナビスコカップの公式戦に出場した選手は、下記のとおり(緑色)。クラブ保有選手26人のうち、23人が出場しています。保有選手が少ないので、当然と言えば当然ですが、総力戦の様相を見せています。言い返せば、出場選手が固定できない事の裏返しでもあります。
これだけの選手起用を行うもう一つの理由として、怪我人が多いということもあげられます。いつも何人かが怪我で戦線離脱しています。サッカーは格闘技なので、仕方がない面もありますが、保有選手数の少ないコンサにとってはかなり辛いものがあります。
今季の出場選手

  • GK
    • ハーフナー・ディド、加藤竜二、赤池保幸
  • DF
    • ペレイラ、木山隆之、梶野智、古川毅、渡辺卓、大野貴史、田渕龍二、村田達哉
  • MF
    • マラドーナ、バウテル、村主博正、鳥居塚伸人、太田貴光、後藤義一、時岡宏昌、黄川田賢司、山橋貴史、浅沼達也、岡田直彦
  • FW
    • バルデス、吉原宏太、有馬賢二、深川友貴

さて、コンサドーレの不振の原因はどこにあるのであろうか。その前に、今年のコンサドーレの特徴をまとめてみよう。今季、既にJリーグ17試合。ナビスコ試合を戦ってきたわけだが、それを見ていると(全部見たわけではないが)、コンサにも相性の良いチームと悪いチームがあるように思えてくる。

まず、相性にいいチームの方であるが、中盤に一人エースがいて、この選手がゲームメイクのほとんどを担っているチームである。コンサもその様なチーム一つだが(マラドーナがほとんどゲームメイクするし、守備ラインがボールを奪うと、マラドーナをボールが経由する)、コンサドーレの相性の良いチームはまさにその様なタイプのチームである。浦和の小野しかり、名古屋のストイコビッチしかり、平塚の中田しかり。中盤に、エースと言われるゲームメイカーが一人いて、ボールが必ずここに集まってくる、あるいは前線にボールが配給されるのが、この選手からといったようなチームには、結構いい戦いをしている。コンサドーレのフォーメーションでは、中盤にボランチを一人おくが(二人にしたときもあったが)、これが相手のゲームメイカーに結構ハードマークにつく。マークする相手がしかり決められる様なシンプルな戦い方をとれるとき、守備ラインは結構安定する。例外も時にはあるようで、川崎のラモスの場合は、少々なめてたようで、マークが甘かった。その所為で、室蘭ではラモスには痛い目に合わされたが。
逆に苦手な相手というのは、決まったゲームメイカーがおらず、あちらこちらから前線にラストパスが出るようなチームである。典型的なチームが、磐田。ここは、名波だけがゲームメイクしているわけではない。藤田、ドゥンガ、奥からもラストパスがでる。このように、中盤の抑え所が一箇所ではない場合、コンサドーレはまったく守備が機能しない。コンサドーレは、中盤にラストパスを出せる選手が少ないので、うらやましい限りである。

どうしてこのようなことがおきるのであろうか。それはコンサドーレの選手の足が全体に遅いから(あるいは体力がない)としか説明のしようがない。コンサドーレのセンターバックの足が遅いというのは、去年から問題にはなっていて、ハイボールには強いが足が遅い、と言われていた。JFLでは、経験と読みと技術でなんとかカバーしてきていたが、Jに来て、プレーのスピードと精度が上がって、ついてけないシーンがでてきたみたいだ。ボールの出所が一箇所だと、DFも読みやすいためか、しっかり守っている。
相手チームのFWがツートップで決まっていて、コンサドーレが3バックスのシステムを取っている場合、コンサドーレのセンターバックは、マンツーマンをすればいいので、しっかりついていけている。ところが、3バックスでは中盤が3人になり、中盤を支配されるやすい。中盤を支配されるということは、自由にラストパスが何回も出されるということを意味し、これがDFにはつらい。DFラインの裏にだされるスールパスなどは、ボディブローのようにきいて、着実にDFの体力を奪っていく。結果、試合も終盤になると、失点に繋がったりする。
4バックスだといいかというと、そうでもない。DFはゾーンディフェンスで、守らるんだが、今度は、ポジションチェンジを頻繁にやられたり、前線に選手を多く投入されると、ついていけない。1stステージ開幕戦の清水戦では、前半はなんとか五分の勝負になっていたが、後半、勝負をかけてきた清水が前線に一人多くなるように選手を投入してきた。これにコンサドーレのDFラインはついていけず、がたがた。結果、最後は体で止めるしかなく、ゴール前で、ファウルをおかしてしまう。あるいは、失点を喫してしまった。

このような、状況になるのは、一概にセンターバックの所為だけだとはいえないのが、問題を難しくしている。DFが裏をとられるのは、自由にパスを中盤から出されているわけで、これは、中盤を担当するMFのせいでもある。JFL時代、三人(3-5-2)でもなんとかなった中盤だが、さすがにJリーグでは厳しい。というわけで、4人(4-4-2)にしたが、相手チームが攻撃に重点を置いて、前がかりになると、ついていけず、押し切られてしまう。

全体に足が遅いというのは、ゲーム終盤になると体力が切れたり、全体に足が止まってしまうということも含んでいる。また、相手チームよりよけ前に走らされているということも意味する。これは、コンサドーレの選手の体力自体が90分持たないということも意味しているし、、技術が足りないため、相手に振り回されているとも言える。また、90分通して、一本調子に攻め続け過ぎるということも意味している(攻撃が単調という見方もできるが)。最初からテンションが高く、試合が終盤になるにつれて、足が止まっていく。いわゆる攻め疲れである。時には、相手に攻めさせて、攻め疲れさすといった高度な駆け引きも重要であると思うが、コンサドーレの場合、その様な余裕がない、というのが正直なところである。
実際、コンサドーレの失点のイメージというのは、コンサゴール前から離れられないほど押し込まれて、最後に力ついて失点を喫するというものではない。攻撃もけっこうしてて、何かの拍子に、DFの裏へボールが出る。これを、相手FWらと競り合うが、最後はDFが振り切られて、シュート。失点。というパターンである。結局、かけっこで負けて失点というイメージが強い。このような失点パターンは、サポーターへの受けが非常に悪いので、避けて欲しいものである。

守備を重視して数を増やしても、中盤を支配されると今度は攻撃陣がお手上げになる。結局、コンサもマラドーナにボールが集まりそこからボールが出るため、相手チームもマラドーナを潰しに来る。それでも、何とかしてくれるのがマラドーナのすごいところだが、それも二人くらいまでである。三人にかこまれるようなシーンが続出するようになると、マラドーナもお手上げで、しかも集中力がだんだんなくなり、最後には切れてしまう。
マラドーナ-バルデスのホットラインを生かすには、それ以外の攻撃パターンもあるぞということを、相手チームに警戒させることであるが、現在のコンサドーレは、攻撃パターンが単調である。とりわけ、サイド攻撃が少ない。中盤からのサイドへの展開、サイドバックのオーバーラップからのサイド攻撃、などは、あまりみられず、ほとんど得点に繋がっていない。昨年、攻撃力を誇ったDFラインからのオーバーラップも、今年は失点が多いことから、攻撃するよりまず守備といった感じで、あまり見られない。前線、中盤の選手が思い切ってサイドへ展開、センタリングあげるといった攻撃パターンも、精度が今一である。攻撃のバリエーションにサイド攻撃を組み込めるかは、コンサドーレの課題の一つであろう。相手DFをサイドに釣り出せれば、もっとバルデスなんかの頭が生きてくるように思えるのだが。

結局、今のコンサに足りないのは、運動量であると思われる。もちろん、チームには技術や経験も必要だが、全体のバランスとして運動量が不足している様に見える。試合も終盤に力つくというのは、相手に振り回されて体力が無くなって行くという面もあるため、技術なども不足しているのかもしれない。JFL時代に比べて、Jリーグは、速さを求められる。プレー自体の速さもさることながら、判断の速さなどである。従って、プレーの展開も速く大きい。これについていくには、Jリーグレベルの運動量と体力が必要である。もちろん、突出した技術(テクニック)や経験も大切だが、テクニックだけある選手を11人そろえても強いチームにはならない。
コンサドーレの場合、この二年、移籍によって補強を行ってきたため、全体にベテランが多い。このことも、チームとして運動量が少ないことの原因になっているように思う。一般に、運動量は、若い選手に求められることの多い能力である。コンサには、若い選手にも、運動量があったり足の速い良い素材はいるが、今度は経験と技術がまだまだである。そんな中で、今季移籍したバウテル(この人はベテランだが)は、コンサに足りないものを持っている選手の一人である。運動量がありながら、技術を持っている。シーズン前は第4の外人選手として位置づけられていたが、今やコンサに欠かせない選手となった。実際、バウテルが半月板損傷でリタイアしていた1stステージ終盤の5試合。全敗してしまった。

<hr />結局、ボールの出所が一杯ある、あるいは、足が速いチームというのは、コンサだけではなく、どのチームにとっても嫌な相手であり、コンサドーレが強くなるには、このようなチームを目指さなくてはならない、ということでもあるわけで。ファーストステージの結果を踏まえて、フェルナンデス監督がどんな戦いをセカンドステージで繰り広げるかは興味深いところ。より守備的になるのか、はたまた攻撃は最大の防御なりで攻撃的にいくのか、その中庸をとるのか。それにしても、いやはや戦術は難しい。
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