[第9節]in磐田:ジュビロ磐田戦(写真付) 

『福間博史さんの「ジュビロ磐田戦観戦記」』

「中山 絶好調!」

日本代表の中で”中山”は、私の最も好きな選手である。ワールドカップ最終予選の時に、中山が決めたシュートと、サポーターと一緒になっって踊った中山ダンスが忘れられない。「オ~~~中山!フッフ!中山 中山 ゴンゴール」のコールを聞くと自然と中山ダンスをしてしまう。その中山が今回の我々の敵なのだ!しかも3試合連続ハットトリックと、神がかったかのように大暴れしているのである。
昨年のJリーグチャンピオンシップ優勝チーム「ジュビロ磐田」は、現在、まちがいなくJリーグで最強のチームの一つである。中山以外にも日本代表の”名波”、”服部”、味方の選手も怒鳴りつける雷親父、ブラジル代表キャプテンの”ドゥンガ”といったスター選手ぞろいだ。しかし、前節の平塚戦で上位チームとも互角の試合ができるんだと自信がついていたので、こんなすごいチームでも「勝てるんじゃないか」と思えるようになっていた。

「磐田スタジアムの熱気」

日本一のチームは、どんなチームなのか?それを直接目で見たくて、私は仲間と磐田スタジアムまで遠征することにした。北斗星で札幌から16時間。さらに新幹線で2時間弱。磐田市は北海道から行くにはあまりにも遠い場所だった。
スタジアム行きのバスがたどり着いたのはなんとYAMAHAの工場入り口。「一体どこにスタジアムがあるんだ~」と思いつつ、ジュビロサポについて行くと、なんと崖下にスタジアムが作られていた。うまく地形を利用したバックスタンドは、厚別の3倍ぐらいの高さがある巨大なもので、ホームゴール裏は2階席。ピッチと観客席との間は汗が飛び散ってこっちにかかって来るんじゃないかという位の近さ。さすがサッカー専用スタジアムだ。これなら観客のヤジや歓声が直接選手に聞こえるに違いない。室蘭や厚別で見る豆粒みたいな選手とは違う、等身大の選手が目の前で練習している。思わずディドコールをしてしまった。ディドはこちらに手を振って答えてくれた。そういえばディドはこのスタジアムで磐田のゴールを守っていたこともあったんだ。今日は気合いを入れて応援するぞと心に誓った。
しかし、その思いも打ち砕かれてしまった。札幌から重い荷物を背負って何枚も段幕をもっていったのだが、張れる場所がない。静岡県西部はいつもこの時期風が強いそうなのだが、今日もスタジアムには強い風が吹いていた。段幕をガムテで張ろうとしても吹き飛ばされてしまう。さらに旗も振れない。アウェイのゴール裏前にはネットが張ってあって旗を立てかけておくことができないのだ。ホーム側はあんなにフラッグが下げてあるのに。えらい差別だ!ここはジュビロが敵を迎え撃つための要塞だったのだ。そういや、中山隊長に鬼軍曹ドゥンガの基地だもんなここは。作戦を変え今日は声援一筋の応援をすることにした。
そんな、アウェーの雰囲気に圧倒された、我々にも救いの手はあった。ジュビロスタジアムは”村主選手”の生まれ育った場所のすぐ近くであるため、地元応援団が応援に駆けつけてくれていたのだ。「札幌から来たのかい?」と声をかけてくれたYAMAHAキャップのおじさんもいた。「今日は札幌を応援するよ、だけど10月に札幌まで応援に行くときはジュビロを応援するからね」と言ってくれて、ちょっとうれしかった。

「コンササポの声援も止まる試合内容」

試合内容については細かく述べないが、前半にウーゴが足を痛めてその後の運動量が落ちたときに勝敗は決まったのだと思う。平塚戦の疲れが残っているのか。うだるような暑さにやられたのか、コンサ選手の運動量には悲しいものがあった。前半こそ1-0でおさえたものの、後半はやられ放題。一瞬たりとも止まることなく走り回る”風神”中山(まるで止まったら死んでしまうマグロみたいだ)と、気がついたら絶好の位置に走り込んでいる”雷神”ドゥンガによってデフェンスラインはボロボロにされてしまった。
そういえばこの日は岡田監督のコンサ初観戦の日でもあった。コータが五輪代表目指してアピールする絶好の機会だったのだが。この日の宏太は動きが今一つと残念だった。
結局ずるずる負けのパターンで気がつけば中山の世界新記録が達成されていた。 試合終了後も延々と続く中山コール&ダンスをこの日ほど目障りだと感じたことはなかった。
中山フランスでもハット決めろよ!

「サッカー王国 静岡のサポーター」

それでも気落ちしている選手を励まそうと出待ちに向かった。スタジアムの正面玄関へと向かう道の両脇にはファンクラブの会員名を刻んだプレートが延々と並んでいた。その多くは家族の名前だろうか。同じ性が続いている。家族ぐるみでサッカーを愛する静岡の人がどれだけ多いのかがわかった。出待ちをしていてもジュビロサポは、自分のチームだけを待っているのではない。後藤や、村主、ディドといった地元とゆかりのある選手に声援を送る青いユニホームの人がいっぱいいた。ジュビロは、選手も一流だが、サポーターもサッカーにかける情熱は一流だった。我々もこうなりたいものだ。

1998年 4月29日
(以上記事:福間博史さん)


磐田スタジアム1 (写真&コメント:福間さん) 磐田スタジアムは、サッカー専用スタジアムだ。バックスタンドは地形を利用してうまく作られており、かなり急だ。
磐田スタジアム2 (写真&コメント:福間さん) メインスタンド側、ガラス窓のVIP席には岡田監督が…… 手前には、試合前練習するコンサドーレの選手達が。
磐田スタジアム3 (写真&コメント:福間さん)  ホーム側のゴール裏は2階席で、旗も振れる。試合終了後はエンドレスで中山コールが鳴り響いた。手前は、試合前練習するコンサドーレの選手達。
磐田スタジアム4 (写真&コメント:福間さん)  スタジアムの通路には、ファンクラブ会員一人一人の名前が刻まれたネームプレートが飾られていた。
磐田スタジアム5 (写真&コメント:福間さん)  ジュビログッズは品数も豊富。この日は中山世界記録達成記念テレカが限定で販売され、あっと言う間に完売した。