ナビスコカップ準々決勝[第2戦]inカシマ:鹿島アントラーズ戦(写真付)

『横浜の渡辺さんの観戦記』

苦渋の選手起用

コンサドーレ2年間の歴史の中で最も壊滅的な敗戦を被ったカシマでのアントラーズ戦。いつもJFL公式戦アウェイゲームでのレポートを担当している筆者にとっても、非常に辛いものとなりました。はっきり言って思い出したくもありません(泣)。でも、来年はこのレベルで戦わねばならないのですから、冷静に振り返ってみたいと思います。
ホーム&アウェイで行われるナビスコカップの準々決勝。第1戦、厚別での試合はコンサドーレが押し込む場面も見られたものの、Jチャンピオンの意地を見せた鹿島が2-1で寄り切りました。この試合の後の会見で「事件」が起きます。フェルナンデス監督が「カシマでの試合は控え選手を起用する」と取れるニュアンスの発言をし、これがマスコミによって問題とされたのです。報じられたところによりますと、「Jリーグ規約によれば、カップ戦を含むJリーグの公式戦は、各チームともベストメンバーで望まなければならない」と、いうことなのです。この規約自体の存在は充分ファンにとっても納得できることです。彼らは「プロ」なのですから、お金を払ってつめかけるファンに対して、常に最良の「商品」を提供する義務があります。しかしコンサドーレはJFL公式戦の激闘の余波で怪我人が続出。リタイヤや無理をおして出場している選手も多い状況でした。思えば春先のナビスコ予選ラウンドで快進撃を続けていたときから監督は「我々の目標はあくまでJFL制覇とJ昇格」と一貫して語っておりました。その目標を目前に控えている今、これ以上怪我人を増やしたくない、あるいは怪我を悪化させたくないと考えることを、誰が非難できるでしょう。そうした点には一切触れずにマスコミは「札幌監督が問題発言」と報じました。発言自体に配慮が足りなかったこともありますが、それにしてもこの報じ方はない。試合に悪影響が出なければいいが…と、少々心配になりました。
結局コンサドーレはスタメンをいじらざるをえませんでした。ペレイラ不在のDFは古川、渡辺卓、冨樫で組み、腰の状態が思わしくない田渕の代役で右WBに新人の岡田が入りました。ここまではいい。問題は鳥居塚を攻撃的MFに入れて2トップをウーゴとバルデスで組んだことです。僕の記憶に間違いが無ければウーゴを試合当初からFWとして起用したのはマルクスの忍者ぶりにしてやられた都田の本田戦以来。しかもあの試合はTVで見た限りあまり機能していなかったように思えたのですが…。
それでもサポ席はやる気まんまん。主催者側の「仕切り」でコンササポはアウェイ側ゴール裏の、さらにその一角に「幽閉」されたような位置どり。周囲はぐるっと鹿サポが取り囲み、まさに「四面楚歌」。それでも一個所に固まって応援できるというメリットはあります。関東一円はもちろん、ホームからも多数駆けつけたサポーターの中にはカシマスタジアム初体験の人も多かったでしょうから(恥ずかしながら筆者も)、みんなと一緒ならば雰囲気に飲まれることもなく声が出せるでしょう。初戦を落としたコンサドーレは準決勝に駒を進めるためには2点差をつけて勝たなければなりません。状況が不利であればあるほど燃えるコンサ魂を見せつけてやりましょう!

「崩壊」の惨劇

バックラインを中心に日本代表選手が不在の鹿島とはいえ、さすがJリーグチャンピオンチーム。序盤のコンサドーレの攻勢を余裕でしのぎ、右に左に揺さぶりながらこちらの穴をみつけ始めます。5分。ビスマルクとの連携でPエリア左に抜けたマジーニョをGKディドが倒してPKを与えてしまいました。第1戦でも同じような状況でビスマルクを倒してPKを与えたディド。言いたくはありませんがここのところ若干飛び出しの勘が不調のようです。8/31の仙台戦で冨樫と激突した後遺症でしょうか? いえ、その前の甲府でも相手に「タックル」を見舞い、あわや一発退場という場面がありましたので…。単なる「不調」ならいいのですが。今回のケースはビデオで確認したところによると、必ずしも抑えに行かなくともよかったのではと思えました。PKはジョルジーニョが決めて鹿島先制。これで2戦合計のビハインドは2点と広がってしまいました。とはいえサポーターは少しもひるまずさらに大きな声援を送り続けます。選手も戦う気持ちを忘れていません。ところが鹿島の素早いパス回しと精力的な攻撃陣のスペースの創出→飛び込みにコンサ選手はついていけません。
JFLでコンサ守備網が破られるシーンは大きく分けて2つあったように思えます。1つは3バックの宿命である両サイドの裏側のスペースを使われること。ロングパスを出されて俊足選手に走り込まれるなどのケースです。もうひとつはドリブルで突っかけられてDFがボールサイドへ寄ってしまい、フリーの相手選手を生んでしまう…ということです。双方ともそれが決定機に至ったか否かは敵選手の技量の問題で、トラップをミスしたりシュートが不正確だったりして助かったというケースが頻繁でした。今回のようにダイレクトもしくはそれに近いテンポでポンポン回されて崩される展開は、これまであまり経験したことがありませんでした(前期川崎F戦の1点め、Jヴィレッジでの福島戦の1点めなどは見事にダイレクトでやられましたね)。それがすなわち「JとJFLの違い」とはいえないでしょうか。
2点目は18分。これも右からジョルジーニョがダイレクトで上げて左の熊谷が落としたボールを増田がノートラップの右足ボレーで叩き込んだもの。JFLのリズムなら、ジョルジも増田も1回ボールを止めているかもしれないプレーでした。
結局前半だけで6点を失うことになるコンサですが、曲がり角となったのは22分の3点目の失点シーンかもしれません。なんとか1点を返すべく攻め込んだところにカウンターを食い、この日再三外してくれていた黒崎にフリーでゲットされました。全員が前かがみになっていたところでボールを奪われ、相手3人に対してコンサドーレの守備は1人余っている古川だけ。こうなるとオフサイドトラップをかけようにも、よほどの勇気(それこそ無茶と紙一重くらいの)がないと無理。以後、コンサドーレは落ち着きを失い、次々とゴールを許してしまうことになります。
攻撃に移ろうにもキーマンのウーゴはしっかりと封じられ、フィニッシュできるボールが来ないバルデスは孤立し、マイボールになっても逆襲を恐れてサポートは薄くなり…と、まぁ悪循環の見本市。28分、35分にそれぞれ黒崎に決められ(ハットトリック)5-0となるとディフェンスの集中力も途切れがち。39分、冨樫の不用意なバックパスをマジーニョに奪われ招いたピンチをビスマルクに正面から叩き込まれてとうとう6点め。
「崩壊」という言葉が頭を駆け巡った悪夢の前半はこれで終了。ハーフタイムでは電光掲示板と場内放送で「ナビスコカップ準決勝のチケット先行販売のお知らせ」が告知されました。鹿サンは「勝ったも同然」てワケですか。あーあ。

「べんきょーになりました」

後半。やはりコンサドーレは動いてきました。バルデス、ウーゴ、後藤の3人を一気に代え、浅沼、石塚、吉原を投入します。鳥居塚をFWに上げてJFL公式戦でも1度もなかったトリとコータの2トップ。適性テストの意味合いがあったのか、それとも苦肉の選択か? むしろ「若」をFWにと考えたのですが、石塚は左側の2列目。別に勝負を捨てたというわけではないのですが、疲労や故障を抱えた選手にここで無理をさせて、残るJFLリーグ戦に悪影響を及ぼすよりは、若手や控えを起用したり新しいフォーメーションを試したりした方が賢明かもしれません。
注目はやっぱりコータ。一部報道によればこのカシマで活躍すれば22日の優勝がかかった大分戦に先発が約束されているとかで、思い切りのいいプレーを見せてくれます。7分にはDF2人に囲まれながらシュートまで持っていきました。監督も評価してくれたのでしょう、結局優勝ゲームでは先発でバルデスの先制点のアシストも記録しました。
鹿島はもう無理をしません。前半に比べれば寄せもそれほど厳しくはなく、よってコンサドーレはある程度チャンスまで持っていけたという意地悪な見方もできます。それでも時折り訪れる決定機は依然として鹿島ばかり。内藤、ジョルジーニョらが中距離から狙い、16分にはマジーニョが左からヘッド(バーを越える)を見舞うなど、息つく間を与えてくれません。カウンターに活路を見出したいコンサドーレは21分にコータ→トリのコンビでこの試合唯一(と、同時に最後)ともいえる決定機をつかみましたが、DF室井にベッタリ付かれていたトリのシュートはバーのはるか上。コンササポは大きなため息。
この後はまた鹿島の時間帯。試合の趨勢は決めましたが、目の前のゴールに1点叩き込んでホーム側ゴール裏のサポを喜ばせてやろうという意図もあったのでしょう。対するコンサドーレは勘を取り戻した(?)ディドの好守でなんとかしのいでいる状態。ただ、前半は腰が引けた位置にいたためうまくオフサイドトラップもかけられず危機を招く一因ともなった古川が、後半はやや高い位置を取っていたことも奏効していたようです。
ところが32分にとうとう左サイドから崩された混戦で途中出場の長谷川にゴールを割られて7-0。せめて後半は無失点をとコンサ側も決意していたのでしょう、失点の瞬間はは数人の選手がガックリと崩れ落ちてしまいました。またしてもゴールラッシュになるのかといった嫌な予感も漂いましたが、スコアはこのまま。「いくらやっても無駄だろう」とでも思ったか主審のモットラム氏はロスタイムを全く取らず試合終了。
完敗でした。キックやトラップの正確さ、1対1の強さ、視野の広さ…。どれを取っても今日のところは鹿島の方がはるかに上回っていました。気力の面でも厚別での公式戦初黒星を喫した時点で、コンサドーレの気持ちは少なからず大分戦の方に向いてしまっていたのかもしれません。さらに筆者が特筆したいことは、鹿島が異常に多くのファールを犯したということです。公式記録が手元にないので正確な数字はつかめませんが、序盤からコンサドーレがいい形になりかけると容赦なくファールを見舞い進撃を止めます。ジョルジーニョと増田に至ってはイエローカードまでもらいました。これはどう見るべきでしょうか? それだけコンサ相手に「マジ」になったということもできるでしょうし、ジーコ仕込みのいわゆるひとつの「マリーシア」ともいえるでしょう。相手を負傷させたりして試合を荒れたものにしてしまうファールは困りものではあります。しかしながらこの日の鹿島が見せたような狡猾なファールは、むしろスマートでひ弱なサッカーをしている日本人選手は少し見習った方がいいかもしれません。
ともあれ、コンサにとっては得るものはあっても失うものは何もなかったナビスコカップでした。思い起こせばヴィッセル神戸もアビスパ福岡も京都サンガも、JFL時代にJのチャンピオンチームと真剣勝負をしたことなどありませんでした。この願ってもない絶好の機会をコンサドーレは実力でつかんだのです。確かに記録的な惨敗ではありました。しかし、試合してよかった。それもカシマまで来て。さらに鹿島を厚別まで招いて。本当にチームもサポーターも勉強になりました!

書き漏らし棚ざらえ

鹿島との対戦が決まった段階からコンササポが懸念していたのがJリーグでも1、2を争う熱狂的な鹿サポの存在。およびカシマスタジアムでのアウェイチケットの入手についてでした。後者については各自の電話予約攻勢やOSCを通じて希望者はほとんど手に入れられたようです。一説によるとホームからいらした方は約150人とか。横浜在住の筆者にとっても片道4時間くらいかかりますから、アウェイみたいなものなのですがね(苦笑)。それから「ツアー」のバスは途中の渋滞で大幅に遅れ、危うくキックオフに間に合わないところでした。間一髪でしたね。
相手が格下のチームだからか、また第1戦をものにしていたからか、会場のアントラーズサポーターのみなさんは概ね好意的に接していただきました。前述の通りコンササポは「隔離」されていましたし、周囲の鹿サポの方々も穏やかに試合を楽しまれている方が多かったため、何らトラブルはありませんでした。反対側ゴール裏に陣取った鹿サポ本隊(インファイト指揮)の大応援は確かに大音量で統制がとれた迫力あるものでした。ただ筆者個人はかつて某H神Tイガースの外野席を根城にしていたもので、「あ、こんなもんか」という印象。でも…選手はビビっただろうなぁ。
直接の「応援」そのものより筆者が感心したのは、地域のボランティアのみなさんによる「もぎり」や場内清掃などがさりげなく行われていたこと。さらには熱狂的な若いサポーターだけではなく、メインやバックスタンドにはご年配の方々(しかもちゃんと鹿島のレプリカを着ている!)が目立ったことでした。カシマスタジアムへの道中の車窓などからも、周辺の人々の生活の中にすっかり「サッカー」や「アントラーズ」が溶け込んでいる様子が伺えました。
試合が試合でしたから選手個々の評価は避けたいですね(笑)。ただ、右WBに入った岡田は確かに成長の跡が見えました。前回筆者が見た江戸川での東京ガス戦は、初の公式戦出場だったとはいえ終始オドオドしたようなプレーでほとんど見るべきものはありませんでしたから。それからごっさんが退いた後の後半のキャプテンは村田。試合終了後はちゃんとサポ席前に選手を整列させて我々の拍手に応えていました。ナミダものだったのはその後引き上げる選手1人1人をフェルナンデス監督が優しく迎え入れていたことです。立派ですよ。0-7で負けた監督がそうそう取れる態度ではありませんよね。
応えていたといえばJFLでは恒例の試合後の相手チームへのエール。考え方はそれぞれのチーム、サポーターで異なるかもしれませんし、「郷に入りては郷に従え」かもしれません。鹿島(や、Jの多くのサポーター)がエール交換をしないことはわかっていました。それでも我々はアントラーズコールをやりました。すると必ずしも全員というわけではなかったようですが、反対側から確かに「コーンサドーレ!」の声が返ってきました。「J」の常識では6点も7点も取られて、それでも応援を続けるというのはナンセンスなことなのかもしれません。増してその相手にエールを送るなどは。しかしどう考えてもこれらは少なくとも「悪いこと」ではなく、「コンサ・スタイル」として今後も育てていってほしい精神であると確信しております。やがては我々のこうしたスピリッツが多くの人々にインパクトを与え「札幌のサポーターってスゴい」と、Jの中でも確固たる存在感を築くことでしょう。
この日のTV中継は衛星放送のWOWOW。有料放送なので衛星機器があっても全世帯で見られるわけではないとはいえ、コンサドーレの「全国放送デビュー」の記念すべき日でした。後日放送を確認したところ、かなりコンササポの声も収録されています。そういえばサポ席目の前のピッチ脇に1つ集音マイクがありましたね。

蛇足。カシマスタジアムはアウェイチームが横断幕を貼れるスペースが極端に狭いんです。広告看板を遮ってはいけないと係員さんに注意されました(笑)。それから…スタジアムから鹿嶋市街地までの「足」にも注意しましょう。我々は文字どおり3キロ以上も「足」で移動しました(笑)。これも来期への「学習」ということにしておきましょう。

(以上記事:横浜の渡辺さん)


カシマの落陽:茨城県立カシマサッカースタジアム。コンサ・サポが「隔離」されたのは、アウェイ側ゴール裏のほんの一角。ピッチでは今季初めての屈辱的な試合が・・・。逆光なので、画面中央に夕陽が写り込んでいます。 (写真&コメント:横浜の渡辺さん)
サポ席:次々と決まるカシマのゴールに大きなため息と悲鳴。しかしすぐに「コーンサドーレ」の大合唱。サポーターの心意気は鹿島の皆さんにも印象づけられたでしょう。 (写真&コメント:横浜の渡辺さん)
鹿島側ゴール裏:さすがに真っ赤に染まり、迫力ある応援を繰り広げておりました。ハーフタイム、画面中央の電光板では既に鹿島の勝ち上がりを確信して、ナビスコカップ準決勝の入場券の発売案内が・・・。 (写真&コメント:横浜の渡辺さん)

(電光掲示板拡大)