[第17節]in厚別:福島FC戦

『二上英樹の観戦記』

 帯広での後期開幕戦を快勝し、今日は札幌厚別での後期開幕戦となりました。が、天候は残念ながら雨(雨のナイターは寒いんですよね)。前期札幌開幕戦になった徳島戦を思い出します(このときも雨)。天気予報は石狩地方に大雨・雷注意報がでている。それでも、スタジアムに行く前に、雨足が少し弱くなってきた。このまま、やんでくれることを望みながら、スタジアムへ向かう。
 さて、今日の相手は、福島FC。前回Jヴィレッジの試合では5-2と快勝はしているものの、川崎F以外で二点以上取られた唯一のチームであることは事実。気を抜いてはいけないチームであることには違いない。でも、やっぱり、ライバル川崎Fが好調な滑り出しを見せているだけに、スカッと勝っておきたいところ。

 札幌の先発は以下の通り。鼠径部ヘルニアの手術でリタイアしていた村田に代わって左サイドに入っている黄川田が先発。前節選手交代の際、首脳陣に暴言を吐いて自宅謹慎中の中吉に代わり冨樫がCBに。そしてなんといっても注目は、FWにはいった石塚。一週間前にチームに合流して初めての試合、厚別に初お目見えです(Bチームの試合では既にありますが)。どんな動きをするのか気になるところ。フォーメーションの方は3-5-2で、従来どうり。戦術面での変更は無いようです。

FW:石塚、バルデス
MF:黄川田、マラドーナ、太田、後藤、田渕
DF:冨樫、ペレイラ、渡辺
GK:ディド
 控えには、山橋、吉原、鳥居塚、森、そして、なんと村田の名前が。先月、手術をし、リハビリ中だった村田が早くもトップチームに合流。うれしいニュースです。はたして試合出場はあるのか。そしてFW、二人も控えに入っているのは、石塚がどの程度チーム内で機能するのか不明なので、二人控えにいれているとのこと。石塚は前半だけの出場で、後半には交代させるつもりのようです。2人いるのは、その時の試合状況でどちらを使うか変わるためだとか。
 今日の試合の注目は、石塚や村田だけではありません。他にも、バルデスのJFL通算100得点が達成されるのか。バルデスは、ゴールを決めたときのスペシャルパフォーマンスを考えているんだとか。また、今日の試合は田渕のJFL通算100試合出場の記念すべきゲームです。こんなにたくさん、見どころがある試合なのに、テレビ中継が無い(ケーブルテレビ局のタイタスSCATは、中継をしますが)。ホント、もったいないですね。
 スタジアムへは、試合開始前20分ぐらいに到着。既に先発メンバーの紹介場内放送が始まっていた。この頃には、雨もやんで、いい感じ。それでもこの天気は、客足には響くなあ、と思う(結局、入場者数は7000人あまり、仕方がないか)。試合開始に先立って、この試合でJFL100試合出場を果たした田渕の表彰式がおこなわれました。試合は19:00を少し遅れて、キックオフ。バルデスの100点メモリアルゴールはいつ決るという、思惑とは別に、試合の方は福島FCペースで進む。最終ラインから前線までをコンパクトにし、人数で囲い込むサッカーをする今日の福島は出足がいい。前半、風上に立ったこともあり、ほうり込んでは、クリアに手間取るコンサ守備陣を取り囲み、ボールを奪って、攻撃を繰り返す。守備はといえば、単調な攻撃を繰り返すコンサ攻撃陣を、こちらも人数で囲い込み、ボールを奪って仕事をさせない。いつ点が入っても、おかしくない雰囲気。
 おかげで、だんだんスタンドが静かになっていく(寒かったのは、試合内容だけでない。時々降ってくる雨と強い風で、体感温度も寒かった。自分は、マウンテンパーカーにポンチョと重装備でいったので、どうってことなかったが、薄着で来ている人もいて、少しかわいそうでした。)。時々、コンサコールは起きるものの、スタジアム全体を覆うほどにはならない。前半途中まで、コンサドーレのコーナーキックは0本。一方、福島はそれまでに、5、6本打ってました。点を入れられなかったのは、運もあったような感じ。それでも、前半途中から、コンサもリズムを取り返し始める。田渕のオーバラップが見え始め(黄川田、もっと攻撃しなきゃダメだぞ)、惜しいチャンスもたびたびあるものの、決定的なチャンスに至らず。こうなると、コンサドーレがねらうのは、ペナルティエリア付近のFK。案の定、FKをもらうシーンが増え始める。蹴るのはマラドーナ。直接ゴールを期待されるも、ゴールに至らず。そうこうしていうちに、前半もロスタイム。右ペナルティリアすぐ外のFK。マラドーナが蹴ったボールは、逆サイドの黄川田の頭にドンピシャ。キーパーファインセーブで、逃れるものの、跳ね返ったボールに詰めたのが冨樫。これを押し込み、待望の先取点で、1-0。冨樫は、今季初ゴールに大喜び、ガッツポーズに加え、雄叫びをあげてる。試合はそのまま、終了。何となく、福島ペースだっただけに、価値ある1点でした。福島にとっては、終了間際の痛い痛い失点でした。

 さて、後半。風上になって、コンサドーレの怒涛の攻撃が始まるかと期待したものの、前半と変わらない。後半6分、リズムを代えるため、石塚に代わって山橋を投入。でも、効果なし。リズムは、前半と同じような感じ。それでも、風上になったおかげで、DF陣は楽になったよう。クリアが一発でできるようになる。両ウイングバックのオーバーラップの回数が前半より増え始める(でも、少ないなあ)。一方、福島も1点のビハインドを取り返しに来る。風下になったのを考慮して、足を生かしたカウンターねらいで、俊足FWの瀬川を投入。これに、左サイドの黄川田はまったく、ついていけてなかった。風のおかげもあって、後半は五分五分のペース。そうこうしているうちに、試合も終盤。今日のバルデスの100ゴールはお預けか、とみなが思い始めた頃、ペナルティエリ内右サイドに、ドリブルで突っ込んだマラドーナが倒される。PK獲得。スタジアム内には、当然バルデスコールが起きる。せっかくのメモリアルゴールは、得意のヘッドで、バンッと決めて欲しかったが、アウェイの試合で決ってしまって、その瞬間が見れないのも、口惜しい。というわけで、みんなと一緒にバルデスコール。バルデス、このPKをきっちり決めて、100ゴール達成。最後には、ちゃんとスタジアムを盛り上げて、ゲームを終わらせる所は、バルデスらしいですね。試合の方は、このまま、2-0で終了。

   今日のコンサドーレは、前節水戸戦以上におかしかった。何かぎくしゃくしている。原因はなにか?、と考えてはみるものの、よくわからない。今日のコンサドーレがどんなんだったか、列記してみよう。まず、DF陣、とりあえず、右から田渕、渡辺、ペレイラ、冨樫、黄川田の五人がV字形に並んでいる、これはいい。その前の列にいるボランチの太田もちゃんとポジショニングをしている。これもいい。でも何故か、福島に押され気味だ。何故だ?福島はほうり込んだボールに出足よく選手が集まる。それに、ちゃんと前線、2列目と、形ができていて、パスもよく繋がる。コンサドーレの選手の方はというと、まず、クリアが小さい(これは、この日かなり強い風が吹いていて、前半風下に立ったことも原因のひとつでしょう)。マイボールにしても、出すとこがない。そして、何故か知らないが、最終ラインが、ジリジリと後ろにすぐさがる。見た目、結構攻められていて、かろうじてはねかえしているといった感じ。それでも、この試合、福島を無失点に抑えたのは、悪いながらに要所は押さえていたのか、それとも、あれくらいのプレイで押さえられるという読みがあったのか。よくわからん守備でした。

 一方、攻撃陣はというと、守備陣以上に何か変。いつもと違う。山橋や吉原のかわりに、石塚が入っているからというのが原因ではなさそうである。いつもの形ができていない。最前線には、バルデスと石塚がいる。これはいい。この2人に加えて、マラドーナまでいる。何とスリートップみたいになっている。マラちゃん、君のいる所は、そこじゃないだろうといいたくなってしまう。マラドーナがトップにいるということは、中盤の要とゲームメイクは、後藤が一身に背負うことになる。ところが、この日の後藤のできがよくない。パスがうまく出ないし、ドリブルしては、とられてしまう。しかも、悪いことに、この日の、コンサ、両ウイングバックのオーバーラップがいつもより少ない(前線に三人もいれば、ウイングバックがサイド攻撃するスペースはなくなってしまっている所為もあるのだが)。最終ラインでボールを奪っても、それを前線にもっていくルートが、DFがボールを奪う→太田→後藤→前線、というのしか無ければ、福島に簡単につぶされてしまうのも仕方がないか。おかげで、いつも以上に、ボールが中央に集まり、余計後藤に負担がかかってしまう。それでは、と太田やペレイラが中央突破を計るものの、ただでさえ、中央に人を集めている福島ディフェンス。あっと言う間に人に囲まれ、とられてしまう。それではと、マラドーナやバルデス、石塚までが下がり始め、コンサ攻撃陣の前線、二列目の形はめちゃくちゃ。

 注目の石塚はというと、チームがこういう状態だったので、あまり見せ場はなかった。それでも、随所随所で見せるパスやドリブルには、これまでのコンサドーレの選手には、見られなかった”切れ”があった。パス一つだすにしても、相手をかわすために、細かいフェイントを必ずいれる(おそらく、JFLではそこまでしなくとも通用するのだろうが、Jでもまれた石塚には、こういう所が体に染みついているのだろう)。残念ながら、周りの選手との息がまだあってないようで、あまり、すごいプレーになっていなかったが(コンサドーレの選手まで、石塚のフェイントに騙されていたときもあった)。バルデスや、マラドーナと、ポジションがよくかぶってました。ところで、試合前に配られたマッチデープログラムを見て気づいたんだが、石塚って身長184cmもあるんですね。バルデスとのツートップは、まさにツインタワー。鹿島の長谷川、黒崎コンビの様な攻撃が、今後見れるかも。センタリングあげる時、目標になるターゲットマンが、これまでのバルデス1人から2人になるため、サイド攻撃がより効果的になるわけで、そういう観点から見ると、今日の試合、両サイドウイングバックのオーバーラップや、センタリングがいつもより少なかったのは、附に落ちなかった。福島も脅威だったようで、セットプレーのとき、石塚に2人マーカーをつけていました。石塚の真価は、まだしばらく様子を見ないと、といったところか。システムとして機能すれば、吉原や山橋が出場したときと、また違った形の攻撃パターンを展開できるだけに、チームとしてのレベルアップが可能になる。

 ここ2試合、コンサドーレのできがよくない。でも、ちゃんと勝っている。相手チームはというと、出足がよく、ボールもキープするし、惜しいところまでたびたびもってくる。コンサにとっては危ない場面を、たびたび作り出す。でも決定力がないせいか、点に結びつかない。なんで、コンサドーレのできがよくないのだろうと考えているときに、はたッと、気がついたことがあった。相手チームの、このような状況って、去年のコンサと同じじゃん。良いとこまで、いくけど、点を決められなかった昨年のコンサと同じ。決定力が無いとか、あと一息なんだけど、とよく言われたっけ。とすると、今のコンサ、決定力が昨年に比べるとついている、ということになる。試合の流れが相手にあっても、点を入れるのはコンサドーレの方。結果的には、ちゃんと勝っているんだし、こういう形のサッカーも、また一つのサッカースタイルなのかな、と自分を納得させてみたりする。とすると、これはこれで、完成したコンサドーレの形なのだろうか(相手ペースに見えながら最後には勝っているという形)。ここんとこ、少し、辛口に言いすぎかな。でも、やっぱり、すかっと、横綱相撲を取って勝ってもらいたいのは、ファンのわがままなんだろうか。

(以上記事:二上英樹)

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